擬態の名人ナナフシはどこにいる? 不思議だらけの昆虫 ナナフシの七不思議とは?
【ちょっとマニアな季節の生きもの】昆虫研究家・伊藤弥寿彦先生が見つけた生きもののふしぎ
2023.06.08
昆虫研究家:伊藤 弥寿彦
あれ? ナナフシはどこにいる?
コノハチョウ、キノハダガ、尺取り虫(クワエダシャクの幼虫など)、キリギリスの仲間などなど……みなさんは、どんな昆虫を思い浮かべますか?
数あるカムフラージュ名人の中でも有名なのはナナフシ(ナナフシモドキ)でしょう。
2021年の6月15日、埼玉県小川町のウメ畑でモモチョッキリという虫を探していたら、見事に枝に化けたナナフシがいました。今までたくさんナナフシを見つけてきましたが、その中でもトップ3に入る雲隠れぶりで思わず写真を撮りました。
さて、どこにいるかわかりますか?
正解は……?
ところで、ナナフシってどんな生きもの?
1)ナナフシモドキとナナフシって同じなの?」
図鑑によってはナナフシモドキと表記されていますが、実はナナフシとナナフシモドキは同じ種類です。なんでモドキなの? 私も子供のころから疑問に思っていました。どうやら、そもそもナナフシ(七節)というのは、「たくさん節がある枝」という意味で、木の枝そのものを表す言葉だったようです。そうすると木の枝のようで木の枝でない=モドキ、ということらしい。
ややこしいので、わたしはナナフシという名前が良いと思います(笑)。
2)メスだけで増える
普段見つかるナナフシの99%以上はメスです。メスはオスと交尾しなくても卵を産んで、ちゃんと幼虫がふ化します。こういう昆虫は他にもいろいろなグループで見られますが、不思議ですよね。
3)それなのにナナフシにはオスがいる
これまた不思議です。ナナフシのオスは、これまで日本で10数匹しか見つかっていません。メスよりも触角が長く、小型で細い体です。見つけたら大発見なので探してみてください。
4)卵も植物そっくり
ナナフシがいたら飼ってみてください。サクラやエノキ、バラなど、いろいろな葉を食べますから与えてみてください。産卵するかも知れません。卵は地面にポトリと落としますから、糞と間違いそうです。拡大してよく見ると植物の種そっくりです。
5)幼虫は脚がちぎれても再生する
卵からかえった幼虫は5〜6回脱皮をして成虫になりますが、幼虫の時は脚がちぎれても脱皮ごとに再生してしまいます。おそるべきナナフシ。ただ成虫はもう脱皮しないので、成虫の脚は再生できません。
6)緑色と茶色とナナフシ
ナナフシには、緑色と茶色のナナフシがいるのも不思議ですね。どのような要因で色が変わるのでしょうか? 是非誰か解明してください。
7)外国にはど派手なナナフシがいる
外国には、真っ赤や真っ青の派手な色をしたナナフシがいます。枝や葉っぱにまぎれ込むための姿と色をしているはずなのに、なぜ目立つ色に進化したのか?不思議です。
ナナフシの仲間は日本に18種類。どんなものがいるのか調べてみると良いでしょう。
写真提供/伊藤弥寿彦
伊藤 弥寿彦
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。
1963年東京都生まれ。学習院、ミネソタ州立大学(動物学)を経て、東海大学大学院で海洋生物を研究。20年以上にわたり自然番組ディレクター・昆虫研究家として世界中をめぐる。NHK「生きもの地球紀行」「ダーウィンが来た!」シリーズのほか、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森」「南極大紀行」MOVE「昆虫 新訂版」など作品多数。初代総理大臣・伊藤博文は曽祖父。