僕は、恐竜と共に絶滅した古生物・アンモナイトがかつて海の中でどのように生き、どのような環境の変化の中で、殻の形がどのように進化したのかなどを研究しています。これまで北海道や岩手県などで化石採集の野外調査を行ってきましたが、どうやら研究に必要な化石がヨーロッパのイギリスで見つかるらしいということがわかりました。
そもそもイギリスは、地層と化石の研究が始まり、恐竜化石が世界で初めて発見された場所でもあります。古生物学の「聖地」と呼ぶにふさわしい、由緒正しい土地を一度は自分の目で見て調査してみたい、という気持ちが次第に強くなってきました。
そこで2025年秋、研究所の同僚で僕と同じくアンモナイトを研究している村宮悠介さんと一緒に、約10日間の調査旅行に出かけることにしました。村宮さんも調べたい場所があるとのことで、全部で6ヵ所の化石産地を車で巡ることにしました。
今回の記事では、その調査旅行の様子を皆さんに紹介したいと思います。
そもそもイギリスは、地層と化石の研究が始まり、恐竜化石が世界で初めて発見された場所でもあります。古生物学の「聖地」と呼ぶにふさわしい、由緒正しい土地を一度は自分の目で見て調査してみたい、という気持ちが次第に強くなってきました。
そこで2025年秋、研究所の同僚で僕と同じくアンモナイトを研究している村宮悠介さんと一緒に、約10日間の調査旅行に出かけることにしました。村宮さんも調べたい場所があるとのことで、全部で6ヵ所の化石産地を車で巡ることにしました。
今回の記事では、その調査旅行の様子を皆さんに紹介したいと思います。
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約1億年前の中生代白亜紀の地層があるイーストボーンへ
首都ロンドンに近いヒースロー空港に降り立った僕たちが最初に向かったのは、空港から南方に100kmほどの地点にあるイースト・サセックス州のイーストボーンという町です。この街の海岸沿いには、約1億年前の中生代白亜紀の地層が広がっていて、そこでアンモナイト化石が見つかるとのことです。
イーストボーンの場所
空港から車で2時間ほど走ると目的地に着きました。ここの地層はチョークと呼ばれる、完全に固まっていない白い石灰岩からできています。
イーストボーンの海岸に広がるチョーク質石灰岩の地層(中生代白亜紀)
チョークとは、そう、黒板に文字を書くあのチョークのことです。現在学校で使われているチョークは人工的に作られたものですが、元を辿るとイギリスのこの石灰岩で文字を書いていたことに由来しています。
また、有名な恐竜、ティラノサウルスやトリケラトプスなどが生きた中生代の一時代を白亜紀と言いますが、時代名の「白亜」は、実はチョークそのものを指す言葉で、イギリスで見られるこのチョーク層に由来して付けられたものです。
また、有名な恐竜、ティラノサウルスやトリケラトプスなどが生きた中生代の一時代を白亜紀と言いますが、時代名の「白亜」は、実はチョークそのものを指す言葉で、イギリスで見られるこのチョーク層に由来して付けられたものです。
チョーク質石灰岩の地層は何でできている?
地層といえば普通は茶色や黒などの縞々をイメージすると思いますが、ここのチョーク質石灰岩の地層は太陽の光を浴びて真っ白に輝いていました。この地層は砂や泥ではなく、円石藻(ココリス)と呼ばれる、0.001mmにも満たないとても小さい植物プランクトンの化石がそれはもう大量に積もってできたものです。
言ってみれば、地層全体が化石の塊なのです。円石藻は「炭酸カルシウム」の石が並んでできています。炭酸カルシウムは、私たちが普段食べる鶏卵の白い殻と同じ成分なので、これが集まってできた地層の色は白くなるのです。
言ってみれば、地層全体が化石の塊なのです。円石藻は「炭酸カルシウム」の石が並んでできています。炭酸カルシウムは、私たちが普段食べる鶏卵の白い殻と同じ成分なので、これが集まってできた地層の色は白くなるのです。
石灰岩に含まれていた円石藻化石の電子顕微鏡写真(宇都宮正志さん撮影)
この写真は、大学院時代の先輩の研究者で、円石藻化石の専門家である産業総合研究所 地質調査総合センターの宇都宮正志さんが撮影したものです。
イギリスから持ち帰った岩石を宇都宮さんに送り、そこに含まれる円石藻を電子顕微鏡で撮影して送ってもらいました。円石藻の名前のとおり、細長い石が円形に並んでいる様子がわかると思います。規則正しい形がとても綺麗だと思いませんか?
イギリスから持ち帰った岩石を宇都宮さんに送り、そこに含まれる円石藻を電子顕微鏡で撮影して送ってもらいました。円石藻の名前のとおり、細長い石が円形に並んでいる様子がわかると思います。規則正しい形がとても綺麗だと思いませんか?














