SNS動画に釘付け!【日立市かみね動物園】クモザルの驚くべきしっぽワザとは?

〈新連載〉ドリトル柴田の「動物園に行ってみた!」vol.1

科学ジャーナリスト:柴田 佳秀

さて、ゾウの次はどうしましょう。マップを参照して動物園側が示した順序通りに見ていくのがセオリーだと思います。でも、それだと一番旬な時間に行くのは無理。私の場合は、迷ったらネコ科動物を優先します。

ネコ科のほとんどが、夜行性や薄暗い時間に活動するため、昼間はほぼ確実に寝ています。そこで午前中の早い時間に見に行くのがコツなんです。ということで、ネコ科がいる「がおーこく」へ急ぎました。

三大陸の大型ネコ科の展示「がおーこく」

2022年にリニューアルされた大型ネコ科の展示。
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「がおーこく」は、かみね動物園ではぜったいに見ておきたい場所のひとつ。2022年にリニューアルされた大型ネコ科の展示施設で、トラやライオン、ジャガーと各大陸を代表する大型ネコ科動物がいます。ガラス越しに数センチの距離で動物が見られるので大迫力です。
ユーラシア大陸代表はトラ(ベンガル系)。急いで来たかいがあって動き回っている姿がみられました。
アフリカ大陸代表はライオン。ライオンとの距離はわずか数センチです。
がおーこくは俯瞰でも見ることができます。小学生に比べてライオンの大きいこと!
アメリカ大陸代表はジャガー。頭の真上を通るジャガーは新鮮な光景。よく木に登る習性を利用した展示施設です。
珍しい黒いジャガーもいました。でも、種類は普通のと一緒なんだそうです。

かみね動物園といえばチンパンジー

ネコ科を堪能したら、次は今回の本命のサルを見に行きましょう。サルは、昼間に行動する生きものなので、どの時間に行っても大丈夫。ここにはいろいろな種類がいますが、やっぱりまず見たいのはチンパンジーでしょうね。
2012年のエンリッチメント大賞を受賞しているチンパンジーの森。狭い立地を逆に利用して高さを活かした設計となっています。
13時30分はちょうどチンパンジーのもぐもぐタイム。チンパンジーが退屈しないように、簡単には食べられない工夫した仕掛けのあるエサを与えていました。イマドキの動物園では、こんな動物たちの暮らしの質を高めるさまざまな工夫がされていて、それを見るのも動物園の楽しみ方のひとつです。
不要になった消防ホースの中には果物などの食べものが入っています。

いよいよジェフロイクモザル

次は、SNSの動画で私の目を釘付けにしたジェフロイクモザルを見に行きましょう。このサルのプロフィールは以下の通り。ちなみにジェフロイとは、発見者のフランス人学者のお名前です。
講談社の動く図鑑MOVE「動物 新訂二版」P180より。付属のDVDでは、ジェフロイクモザルのスゴ技動画が見られます!
ジェフロイクモザルがいるのはサルの楽園というコーナー。いったいどこにいるかと思いきや、頭の遙か上に張られた電線みたいなところにぶら下がっているのを発見!
地上10mに張られた空中回廊にいるところを発見。
空中回廊を行ったり来たりするところも見られました。落ちないか心配になりますが、手足と尾を使って実に器用に移動し、4本の長い手足と長い尾を動かして移動する姿はクモみたいなので、クモザルという名前がつけられたんだそうです。たしかにそんな感じがします。

ジェフロイクモザル空中回廊

尾をまるで命綱のように使って歩いていますね。

衝撃!しっぽのエサ取りを見せてもらう

ところで、あの器用にシッポを使うところをみることはできないのでしょうか。ちょうど飼育員さんがいらしたので聞いてみると、「あとでおやつタイムがあるから見られますよ~」とのこと。

1時間後のおやつタイムに再び訪ねると、ついにそのときがやって来ました。それがこれです。是非、動画でご覧ください。

しっぽで物をつかむクモザル

あまりの器用さに目が点になってしまいます。まるでシッポの先に目が着いているみたいです。

興味深いことに、子どもは尾がうまく使えないのか手で取るんですね。いちばん上手なのがお父さん(黒いしっぽ)で、手は使わずしっぽ専門です。お母さん(茶色いしっぽ)はしっぽをケガした事があるそうで、後遺症のためかあまりうまく使えないんだそうです。

このジェフロイクモザルのおやつタイムは、まだ、定期的な公開イベントにはなっていないみたいで、行けば必ずみられるわけではなさそうです。でも、ゆくゆくはもぐもくタイムになるかもしれませんね。

尾のヒミツ

ジェフロイクモザルがこんな芸当ができるのは、しっぽの裏にヒミツがあります。毛がまったくはえておらず、指紋のような皺があり、すべらないようになっているのです(写真参照)。でも、まるで目が着いているように動かせるのはなぜでしょう。よっぽど神経が敏感になっているんでしょうね。
ジェフロイクモザルの尾の裏側。
かみね動物園のモットーは「楽しく入って、学んで出られる」

園内には動物を説明する掲示物がたくさんありました。ほとんどが手作りようで、飼育員さんが伝えたい事がよくわかるものばかり。

動物園を楽しむコツの一つとして掲示物をよく読むというのがあります。「へえ~」「なるほど!」と思うことばかりなので、是非、読んでほしいと思います。そうすることで、そこにいる動物たちの事がよりいっそう面白く理解できることまちがいなしだからです。

ほかにも紹介したい動物がいっぱいしましたが切りがないので、またいつか第二弾をと思います。とにかくこの動物園は、動物のことをいっぱい知ってもらいたい飼育員さん達の熱い思いがあちこちにありました。とても楽しくてためになる動物園なので、おすすめです。

最後にいくつか掲示物の写真を貼って、このレポートを終わりにしたいと思います。(取材:2024年10月2日)
クマに食べられることによって植物はタネがまかれるんだそうです。
タンチョウの展示。白いポリタンは実際のタンチョウの体重と同じで意外と重たい。
動物園から太平洋が望めます。海が見える動物園ってそうないかもしれません。

写真・文/柴田 佳秀

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しばた よしひで

柴田 佳秀

Shibata Yoshihide
サイエンスライター

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。

元ディレクターでNHK生きもの地球紀行などを制作。科学体験教室を幼稚園で実施中。著作にカラスの常識、講談社の図鑑MOVEシリーズの執筆など。BIRDER編集委員。都市鳥研究会幹事。科学技術ジャーナリスト会議会員。暦生活で連載中。MOVE「鳥」「危険生物 新訂版」「生きもののふしぎ 新訂版」等の執筆者。