メフィラス先生と「無重力」の世界へ! 話題の本を試し読み! 

ウルトラマン×基礎宇宙論=最良の科学入門書! 『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』(高水裕一著)の1チャプターを連載形式でまるっと紹介!

テレビマガジン編集部

「え、どのくらいだろう? とにかく、遠くにあるイメージですが……。」

「そんなことも知らねーの? ISSは、400kmの上空にあるんだぜ。」

「そのとおり。さすが物知りのマルゥルくん。」

「えっへん。」と、満足げに鼻をこする、マルゥル。

ISSがあるところは、およそ400km上空です。

飛行機が飛んでいるのが、10kmぐらいのところなので、そこからはだいぶ離れています。さきほどのベゾスさんの宇宙旅行も、ISSまではいっていません。上空100kmくらいのところまでです。

距離だけだとイメージがわきにくいので、たとえば地球のサイズをバレーボールに例えてみましょう。

飛行機が飛んでいるのが、このボール表面からわずか0.16mmのところ、 これは太い髪の毛ほどの長さです。そしてISSはなんとボール表面から6mmの場所。1円玉の半径が1cmなので、それよりも小さいほとんど表面といっていい場所です。

「ISSって、宇宙から見ると、すげー地球に近いんだな。」とマルゥル。

「たしかに……。でも、そんなに近くても、ちゃんと無重力なんだね。」とあなた。ちょっと意外な感じがしました。
▲ISSは地球の近くを飛んでいる

無重力空間とは何か

ISSで活動する宇宙飛行士を映像でみると、無重力空間で動いていることがわかります。たしかにISSはここまで地球に近い上空であっても、船内は無重力の宇宙空間そのものといえます。

しかし、細かいことをいうと、実は重力自体は地上の90%程度とほとんど変わりません。

「それなのに、なぜ無重力になっているか、わかるかね?」とメフィラス星人。

「どうしてだろう?」あなたは首をひねります。

一体なぜ無重力になっているかというと、実はISSがものすごいスピードで移動しているからなんです。

もういちど、ジェットコースターのたとえ話に戻ります。

勢いよく走るジェットコースターがレールをぐるりと一回転することがありますね、そのレールの頂上に来たときのことを思い浮かべてください。コースターはさかさまになって、落下して大事故になりそうな気がしますが、実際にやってみると、落下しないで回ります。

これが、ISSが無重力という理由と同じ現象です。回転運動すると、遠心力という力が外向きに働きます。この力は、回転の速度が速ければ速いほど、強くなります。そのため、コースターから落ちることがないのです。
▲遠心力が重力を打ち消す
ISSは、約90分で、なんと地球を1周してしまうほど、猛烈な速さで移動しています。1日で地球を16周もしてしまいます。つまり宇宙飛行士は、1日に16回も朝(=日の出)を迎えているんです。

不思議ですね。この強い遠心力によって、地球の外側に向かった強い力が働きます。これが、さっきの地球に向かう重力と打ち消し合って、結果的に無重力が実現しているのです。

実感はできないと思いますが、地球も日々回転しているので、私たちも遠心力で、地面と逆に上方向に実は引っ張られています。これが一番大きいのが、赤道という地球の場所で、エクアドルという南米の国と日本では、あなたの体重がわずかに変化します。でも地球の回転による遠心力は小さい効果なので、差はごくごく小さいものです。

「さて、ここからは、体験学習をしてみないかね?」

「体験学習?」

「そう。私は自分の宇宙船の中に無重力ルームを持っているんだよ。」メフィラス星人が自慢げに前に来ます。「では、これから私の宇宙船に君たちを案内して、課外授業としゃれこもうじゃないか。」

マルゥルを見ると、なにやらこわばった様子です。

「マルゥル君、安心したまえ。私は誘拐犯ではない。君たちの講義を請け負った正式な講師なのだよ。」

どうやら、メフィラス星人はテレパシーを使ったようです。

「そうだよな……。」

メフィラス星人に連れられて、ふたりとも無重力ルームへと移動します。

(つづく)
次回はいよいよ、メフィラス特製の無重力空間へ。

お楽しみに!


『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』試し読み連載 を読む
※2022年6月10日公開予定

▼著者 高水裕一先生の記事はこちら
▲『ウルトラマンと学ぶ 宇宙と生命体』 定価1430円(税込み)
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テレビマガジン編集部

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 SNS:テレビマガジンX(旧Twitter) @tele_maga  SNS:テレビマガジンLINE@ @tvmg  記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『ボンボンアカデミー』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。

日本初の児童向けテレビ情報誌。1971年11月創刊で、仮面ライダーとともに誕生しました。 SNS:テレビマガジンX(旧Twitter) @tele_maga  SNS:テレビマガジンLINE@ @tvmg  記事情報と付録の詳細は、YouTubeの『ボンボンアカデミー』で配信中。講談社発行の幼年・児童・少年・少女向け雑誌の中では、『なかよし』『たのしい幼稚園』『週刊少年マガジン』『別冊フレンド』に次いで歴史が長い雑誌です。