「子どもがごはんを食べない」問題! 同時通訳者・異色の東大小児科医の教える「脳が変わる」ごはん術とは?
小児科医・伊藤明子先生に聞く子どもの「食べない」問題インタビュー 後編
2023.08.25
ライター:山本 奈緒子
そこで小児科医で、話題の著書『医師が教える子どもの食事50の基本 脳と体に「最高の食べ方」「最悪の食べ方」』の著者でもある伊藤明子先生に取材。
前編では「本当に心配すべき“食べない”と、心配しなくていい“食べない”がある」ということを教えてくださいました。後編では「本当に食べない子どものための、すぐ実践できる“脳と体に良い食べ方”」をお聞きしていきます!
とにかく朝タンパク質をしっかり摂る! これがポイント
伊藤先生:ポイントは、朝のタンパク質を増やすことです。とはいっても、忙しい毎日の中で、朝から魚を焼いてお味噌汁を用意して、なんて朝食は難しいですよね。
まずは卵ひとつは食べる、というのを目標にするのはどうでしょうか。ゆでたまご、オムレツ、たまごやき、スクランブルなど、調理法はなんでもかまいません、もしいままで卵ひとつも食べられていなかった場合は、卵1個で栄養面のステップアップにつながります。
でも実際は、朝の卵さえ食べられない子が多いもの。そこで私がオススメしているのが「プラスひとさじ」法です。下記にレシピの一例を紹介いたします。
●炊いたご飯 + たっぷりのすりゴマ、きな粉(両方、またはどちらか)
●炊いたご飯 + 100g程度のしらす
●ヨーグルト(できればギリシアヨーグルト) + シリアル
※ヨーグルトに大さじ1杯程度のすりゴマ、またはきな粉、プロテインパウダーなどを加えると尚良い。
もちろんこれで全て解決されるわけではありませんが、少なくとも病的な栄養欠乏は防ぐことができます。
ちなみに、調査データでは栄養がしっかり足りている子どものほうが少ないんです。子どもどころか、大人も足りていない人がほとんど。
「うちは大丈夫」と過信せず、いろいろと工夫してタンパク質の量を増やすようにしてください。
スナックは「見ない、買わない、持ち込まない」が三原則
伊藤先生:日本はお豆腐や納豆など、大豆を多く食べる食文化ですよね。それだけに夜ご飯でも、タンパク質は大豆だけということがよくあります。
が、これでは低タンパク質になってしまいます。できる限り、動物性タンパク質と植物性タンパク質の両方を毎食しっかり摂る。私たちは親たちにこのようにお願いしています。
──どうしても食べない場合は、プロテインパウダーなどを用いても良いのですね。
伊藤先生:最近はパンやヌードルにも、タンパク質などの栄養素が添加されたものが登場しています。もし可能なら、そういったものを選ぶのも良いでしょう。日本は「糖質ゼロ」などカロリーゼロフードが多く出回っていますが、気にすべきはそちらじゃない。意識的にタンパク質を増やすことのほうが大切です。
──ちなみに、おやつはどうすればいいでしょう? タンパク質のおやつとなるとなかなか難しいと思うのですが……。
伊藤先生:アーモンドフィッシュとかちくわとか、子どもがそういったものをおやつとして認識するようになるといいですよね。
「うちの子はスナック菓子しか食べない」というお悩みの親御さんもいますが、親や家族がスナック菓子を買って家に常備してあったりすると、子どもにはアクセスがよくなってしまいます。学童などでのおやつがスナック菓子、というところも多いので難しいですが、少なくとも家には置かない、買わない、というのはひとつのご提案です。
スーパーやコンビニにはスナック菓子がずらりとならんでいます。みると子どもはほしがるので、できるだけ「見ない、買わない、持ち込まない」の三原則をお勧めしています。子どもには食べさせないけど親は食べる、というのはNGです。
食べるものの内容だけでなく、生活リズム全体も意識しましょう
伊藤先生:健康というのは、食という1つのアプローチだけで作れるものではありません。食べる時間や睡眠時間、運動、ストレス管理や環境管理など、トータルアプローチが必要。ですから朝食べないというお子さんの場合、前日の夜までさかのぼって考えてみることも大事です。
もしかしたら夕飯の時間が21時とか遅くなっていませんか? それで寝る時間も遅くなり、睡眠時間が足りていないことが、朝の食欲が起きない原因になっていることも少なくないんです。
5歳ぐらいまでなら10~13時間は睡眠を取ってほしい。それで朝は早起きして、きちんと食べる時間を設けるようにしましょう。
──栄養バランスだけ気にしていればいいわけではない。生活リズムなど、きちんと食べられる環境を整えていくことも、“食べない”の改善には必要なのですね。
伊藤先生:そのうえで忘れてほしくないのは、そもそも食べるということは楽しいものである、ということ。家族みんなで楽しく食べるということを大事にしていれば、極端な“食べない”は解消していくと思います。
だから「何で食べないの!?」と怒るのではなく、「ほら、ピーマンさんが笑っているよ」とか「卵さんが食べて~って言ってるよ」などと、子どもたちが楽しくなるような言葉がけをしてあげてください。
『医師が教える子どもの食事50の基本 脳と体に「最高の食べ方」「最悪の食べ方」』
伊藤明子先生
赤坂ファミリークリニック院長。東京大学医学部附属病院小児科医。東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。
医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけた後、40歳で医学部を受験し、医師に。とくに子どもの食を医学的な観点から研究しており、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。
わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもを持つ親からの信頼は厚く、メディア出演も多い。著書に『医師がすすめる抗酸化ごま生活』などがある。
山本 奈緒子
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。
1972年生まれ。愛媛県出身。放送局勤務を経てフリーライターに。 『ViVi』や『VOCE』といった女性誌の他、週刊誌や新聞、WEBマガジンで、 インタビュー、女性の生き方、また様々な流行事象分析など、 主に“読み物”と言われる分野の記事を手掛ける。