単身で南アフリカへ
大学2年生のころアフリカを訪れたとき、広大な自然の中で暮らしている野生動物に圧倒されました。
そして、それ以上に心を動かされたことがありました。
サファリガイドが、観光客の案内をする以外に、アフリカの大自然が直面する密猟や野生動物の減少などの問題に取り組んでいることでした。
この時の思いが、のちに、サファリガイドになる大きなきっかけになりました。
サファリガイドになるために
ゆかさんは大学を休学し、単身、南アフリカに渡りました。
先に取らねばならない資格は、次のものでした。
① サファリカーの運転免許
② ライフル銃の取り扱い
③ 救命救急
④ トラッキング
ライフル銃の免許は、ツアー参加者の命を守るために重要なものです。
銃の重さは約8キロ。
実弾を撃つ訓練では、ライフルを支える左肩に青あざができました。
じつは、一番厳しく指導されるのは、
【発砲する事態が起こらないようにすること】です。
それでも万が一のときに、素早く、正確に撃てるよう、免許は3年に1回更新しなければなりません。
ゆかさんは2022年の5月に2度目の更新をしたところです。
また、トラッキングというのは、動物がのこしたサイン(足跡、フン、におい、食べたあと)から、どんな動物が、何頭で、いつごろ、どこへ向かったか、を読み取ることです。
ゆかさんは、入学から半年で①から④の資格をすべて取得。
訓練学校を卒業する時に政府公認のサファリガイドの資格を手に入れて、念願のサファリガイドになりました。
活動場所は大自然の宝庫
このエリアにゾウ、キリン、ヒョウ、ライオン、バッファローなど、140種類以上の野生動物が生息しています。
さらに、爬虫類、両生類、魚類や昆虫、500種類以上の鳥類、そして1500種もの植物が確認されている、まさに大自然の宝庫です。
密猟を防げ!
その原因の一つは、密猟です。
たとえば、ゾウのキバやサイの角は、置物用や万能薬として、アジアの闇市場において高価格で売買されています。
密猟者は、キバや角を手に入れるために、ゾウやサイをその場で残酷な方法で殺してしまうのです。
サイを密猟から守るために行われているのが、角を切る保護活動です。
(*サイの角は、人間の爪や髪の毛に似た成分でできていて、切っても痛みはありません。)
ゆかさんは、ガイドをするかたわら、レンジャー(密猟者取り締まり隊)とともに、サイの角切り活動にも取り組んでいます。
が、コロナ禍で観光客が来なくなり、費用が捻出できなくなりました。
どうすればいいのでしょう……?
クラウドファンディングでサイを守る!
目標額は110万円でしたが、1か月ほどで、約250万円が集まりました。
おかげで、その時は、6頭のサイの角切りを成功させることができました。
6頭のサイの命を密猟者から守ることができたのです。
角は、また伸びます。
密猟者がいなくならない限り、角切りをくりかえし続けていかなければなりません。
なお、切った角は、盗まれないように、すべて厳重に保管されています。
保存場所は極秘にされています。
今、できることは何かを問い続けて
しかけられたワナを外す。
ワナにかかった動物を救う。
野生動物の生態・動向を調べる。
ライオンやリカオンの遺伝子の多様性を守る……などです。
沢田俊子(さわだ・としこ)
京都府生まれ。ノンフィクションから童話まで小学校初級から中級向けの作品を中心に幅広く執筆している。『盲導犬不合格物語』(学研教育出版)で、第52回産経児童出版文化賞を受賞。(同書は、加筆・修正のうえ講談社青い鳥文庫に収録)。ほかのおもな作品に『目の見えない子ねこ、どろっぷ』『犬たちよ、今、助けに行くからね』(講談社)、『盲導犬引退物語』『犬の車いす物語』(いずれも講談社青い鳥文庫)、『命の重さはみな同じ』『助かった命と、助からなかった命』(いずれも学研教育出版)などがある。日本児童文芸家協会会員。日本ペンクラブ会員。
太田ゆか(おおた・ゆか)
1995年、アメリカロサンゼルス生まれ。神奈川県で育つ。立教大学観光学部在学中に南アフリカ共和国に留学し、南アフリカ政府公認サファリガイドの資格を取得。大学卒業後、南アフリカ共和国に移住。日本人女性唯一のサファリガイドとして活動しながら、野生動物の保護にも積極的に取り組んでいる。
太田ゆかさんは、南アフリカ共和国で日本人女性でただ一人の政府公認サファリガイドとして活躍しています。
サファリガイドの仕事は、サファリツアーなどを通して、みんなに野生動物の実態を伝えて、動物と人をつなぐこと。
さらにゆかさんは、絶滅が心配されている動物たちの保護活動にも取り組んでいます。
教えて、ゆかさん。サファリガイドってどんな仕事?
アフリカのサバンナで、野生動物に、今、何が起こっているの?
<すべての漢字にふりがなつき。小学校中級から>
沢田 俊子
京都府生まれ。ノンフィクションから童話まで小学校初級から中級向けの作品を中心に幅広く執筆している。『盲導犬不合格物語』(Gakken)で、第52回産経児童出版文化賞を受賞。(同書は、加筆・修正のうえ講談社青い鳥文庫に収録)。 『サバンナで野生動物を守る』(講談社)で、第9回児童ペン賞ノンフィクション賞受賞。ほかのおもな作品に『目の見えない子ねこ、どろっぷ』『犬たちよ、今、助けに行くからね』(講談社)、『盲導犬引退物語』『犬の車いす物語』(いずれも講談社青い鳥文庫)、『命の重さはみな同じ』『助かった命と、助からなかった命』(いずれも学研教育出版)などがある。日本児童文芸家協会会員。日本ペンクラブ会員。
京都府生まれ。ノンフィクションから童話まで小学校初級から中級向けの作品を中心に幅広く執筆している。『盲導犬不合格物語』(Gakken)で、第52回産経児童出版文化賞を受賞。(同書は、加筆・修正のうえ講談社青い鳥文庫に収録)。 『サバンナで野生動物を守る』(講談社)で、第9回児童ペン賞ノンフィクション賞受賞。ほかのおもな作品に『目の見えない子ねこ、どろっぷ』『犬たちよ、今、助けに行くからね』(講談社)、『盲導犬引退物語』『犬の車いす物語』(いずれも講談社青い鳥文庫)、『命の重さはみな同じ』『助かった命と、助からなかった命』(いずれも学研教育出版)などがある。日本児童文芸家協会会員。日本ペンクラブ会員。