STU48・峯吉愛梨沙 音痴を克服した親子の関わり方とは?

#2 アクターズスクール広島のボイストレーナー田中都和子先生に聞く!

アクターズスクール時代は、歌の上手な仲間に「どうやったらうまくなるの?」と聞いて回ったという峯吉さん。素直に真似をして、コツコツと自分のものにしていった。  写真提供/STU

STU48のメンバーに正式加入するまで、「アクターズスクール広島」の生徒として、ダンスや歌のレッスンを8年間続けた峯吉愛梨沙(みねよしありさ)さん。ダンスは初めから得意でしたが、歌は苦手でした。

自分では気持ちよく歌っているのに、なぜかうまく歌えない……。峯吉さんは、次第に「自分は音痴なんだ」と気づいていきます。しかし、「諦める」という考えはありませんでした。

一方で、「音痴克服には時間がかかるもの」と話すのは、ボイストレーナーの田中都和子先生。

8年の間には、スクール内でのオーディションに何度も落ちる経験をしています。一番近くにいた親御さんは、普段どのような関わり方をしていたのでしょうか。


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「諦めない!」という気持ちは、親にも必要だった

歌の上達には、家での復習と自主練が重要だと、田中先生は言います。

「レッスンで習ったこと、注意されたことを、家に帰ってから自分で練習してもらい、それをノートに書いてきてもらうんです。ノートに書くことで、ダメなところや、どう練習をすればいいかを、本人が認識できるようになります。書いて意識させ、反省して復習する。これを地道に繰り返すことが、上達への近道です」(田中先生)

峯吉さんは、熱心に練習してくる子だったそう。遊びたい真っ盛りの峯吉さんが、家でちゃんと練習できたのは、「やはり親の声かけが大きかった」とのこと。

「習ったことを忘れないように『ちゃんとノートに書きなさい!』と、母親に言われていました。練習しないと『何のためにやっているの?』と、怒られました。

あとは、レッスンから帰ると、『今日習ったことは何?』と聞かれることが多かったですね。『自分で説明できるようにならないと、やっている意味ないでしょ』と、母親にはよく言われました」(峯吉さん)

それを聞いて、田中先生が補足します。

「次のレッスンまでに『これをやってきてね』と課題を出すのですが、峯吉さんは、きちんと練習してくる子でした。

自分の意思で家での復習や練習を続けられる子もいますが、子どもはまだ、保護者のサポートが必要なんです。

峯吉さんの親御さんは、いい具合に口を出してくれていました。講師のように『ああしろ、こうしろ』と指導するのではなく、『今日習ったことをちゃんと復習しなさい』『これはどうなっているの?』と、マメに声かけをして、導いてくれる親御さんでした。

やはり、言われたことをちゃんとやってくる子は上達します。一方で、練習が嫌いな子は、パッとやめちゃったりするんです。そうならないよう、親御さんが一生懸命サポートすることは、意外と大事な要素です」(田中先生)

峯吉さんが音痴克服のために書いていたノート。かわいいイラストが添えられ、楽しく取り組んでいるのが伝わってくる。習ったことだけでなく将来の願いも書いてあり、峯吉さんの「やる気」が感じられる。  写真提供/峯吉愛梨沙
レッスンで習ったことを忘れないように、工夫してノートに書いているのがわかる。努力の結晶です。  写真提供/峯吉愛梨沙

小さなステップアップとほめることが大事

そもそも、音痴の克服には3~5年はかかると話していた田中先生。しかも、相手はまだ耐える力も備わっていない子どもです。小さな子に練習を続けさせるコツはあるのでしょうか?

「いきなりハイレベルを目指さないことです。1~10まで学ぶことがあるとしたら、一気に全部やろうとしないこと。1つずつ1つずつ、階段を上っていくかのようにステップアップしていくことが大事です。

たとえば、1曲通しで練習するのではなく、『今日はAメロのところだけ、とにかく上手にしよう』とか『今日はこのパートだけをやろう』と分割して、指導者が『どこができていないか』を指摘します。そこを1つずつ直していくんです」(田中先生)

峯吉さんも言っていたように、苦手意識をもっている子は、自分ではどこが間違っているのかがわからないことが多い。だから「具体的に」言う必要があります。

「具体的に、『この部分がこうなっているから、あなたはこう直しましょう』と教えたうえで、具体的な期限も決めます。『来週までに、ここを直してきましょう』と。翌週直っていなかったとしても、ちゃんと練習した形跡が見られたら、ほめます。目標に届いていなかったとしてもほめてあげる。そして『今回はここまでできたから、次はここまで』と、その子の上達のリズムに合わせて目標を示します。あとは地道な練習の繰り返しですが、ある日、突然上手になる子もいるんですよ、いきなり覚醒したかのように」(田中先生)

かくいう田中先生も、子どもの頃、親の寄り添いが記憶に残っていると言います。

「私もピアノが大嫌いで、ピアノの練習は本当にやりたくなかった。そんなとき、私が30分練習すると言ったら、親は何も言わずにずーっと横に座っているんです。ピアノなんて全然弾けない親ですが、私が練習しているのをずっと見ていました。私は、親に見られているから練習するしかない(笑)。でも、今思えば、あのとき練習したから今の私があり、こうして音楽の仕事ができるようになっているので、子どもの頃の親の存在は偉大だなと思います。ですから、幼い子どもの場合は、練習のときの親の関与は必要だと思います」(田中先生)

練習ができるかどうか。「それも才能だ」と話す田中先生。

「緊張をとる方法」をイラスト入りで書いているページ。  写真提供/峯吉愛梨沙
「そばかす」という曲の歌い方、表情などを練習していたときのページ。  写真提供/峯吉愛梨沙

「歌が苦手な子には、発表会のクラスの歌い分けで一言しかもらえなくても、しっかり練習してもらいます。それがだんだん増えていく。でも努力しない子は『自分は一言しかもらえなかった』と、悲観して辞めちゃうんです。そこで辞めずに、『次はもう少しもらえる音を増やしてもらおう』と前向きに練習してくる子は伸びます。

歌が苦手な子は、上手い子と比べて、ソロパートが10分の1くらいしかもらえません。それでも、きちんと努力する子は花開きます。音楽の世界では『練習を続けられること自体が才能だ』と言いますから。あとは、『プラス思考でいられる才能』も必要ですね」(田中先生)

悔しさをバネに、気にせず練習、練習

昨今の世の中では、苦手に目を向けるより「いいところを、どんどん伸ばしたほうがいい」という風潮も見受けられます。しかし、峯吉さんの考えは違いました。

「私は、自分ができるところを伸ばしていくより、苦手なところを克服したほうが、最終的にできることの幅が広がっていい、と思います。実際に私も、歌が苦手なのをずっと直さずにいたら、ダンスしかできなかったし、それではSTU48に入れたかどうかもわからない。めちゃくちゃ時間はかかりましたけど、克服してよかったなと思います」(峯吉さん)

とはいえ、スクールでのオーディションになかなか受からない日々が続いて、落ち込んだことはなかったのでしょうか?

「最初はなかなかマイクを持たせてもらえず、私はダンスだけ……という時期がありました。でも私は、もともとあまり落ち込むタイプではなく『悔しい~』とは思っても、すぐに『次頑張ろう!』と切り替えられるタイプだったので、先生に怒られても『次、見返してやる!』と闘志をメラメラ燃やしていました(笑)」(峯吉さん)

音痴が恥ずかしい……と思うこともなかった?

「はい、なかったですね。まわりから『音外れてるよ』と言われても『あ、そうですか』と言って、気にせず練習してました。家でも声が響くお風呂で歌って『うまいかも!』と思ったり、山に向かって気持ちよく歌ったり。音がはずれると、お母さんに『そこ違うよ!』と指摘されていましたが、『ちょっとよくなったね』とほめてくれることもありました」(峯吉さん)

峯吉さんの練習の仕方について、田中先生はこう言います。

「歌の練習は、ひとりでやっていても、音が合っているのか外れているのか、わからないもの。どう治すかは専門家じゃないと教えるのは難しいんです。親ができることとしたら、味方になってあげ、応援してあげること。峯吉さんの親御さんの対応はよかったと思います。

自分でできる一番早い上達方法は、物真似なんですよね。上手な人の歌をよく聞いて、物真似して同じように声を出してみる。これが上達するための第一歩です。その点、スクールには、いろんなタイプの歌のうまい子がいる。峯吉さんは、落ち込む前に、うまい子たちの歌を聞いて、どんどん真似していったんだと思います」(田中先生)

アクターズ広島時代に歌っている子どもの頃の峯吉さん。表情豊かに一生懸命歌っている。  写真提供/峯吉愛梨沙
かっこいい衣装を着て歌っている子どもの頃の峯吉さん。「歌ったり踊ったりするのが楽しい」という表情です。  写真提供/峯吉愛梨沙

第3回では、「苦手克服」に挑むにあたり、峯吉さんがメンタルをどう保っていったのかをお聞きします。

取材・文 須貝誠、鈴木久子

峯吉愛梨沙さんの連載は全3回
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音痴を克服し、今では堂々と謳っている峯吉愛梨沙さん。  写真提供/STU

峯吉愛梨沙(みねよしありさ)
STU48メンバー
2004年9月2日広島県生まれ。STU48加入前は、2009年「アクターズスクール広島」の21期生として加入。田中先生のレッスンを受け音痴の克服に励む。

2017年3月19日、STU48第1期生オーディションの最終審査の仮合格者となる。2017年3月20日「アクターズスクール広島」のスクール生としての活動を終了。2017年3月31日、STU48の正式メンバーに決定。2022年2月11日、STU48の8thシングル曲「花は誰のもの?」で、初の少人数選抜に選出される。

2022年には、モデルの仕事をすることと、好きな洋服のブランドとコラボしてグッズを作るという夢を実現。ファッション会社「エヴァヴィンテージ」とコラボし、高校生社長として洋服をデザインし販売する。現在も、STU48のメンバーとして活躍中。

ピアノを駆使して峯吉さんに正しい音が出せるように教えてきた田中都和子先生。  写真提供/アクターズスクール広島

田中都和子(たなかとわこ)
「アクターズスクール広島」所属。ボイストレーナー。
エリザベト音楽大学大学院修了。在学中より演奏会にソリストとして出演。ソロ、ジョイントリサイタルも数回開催。オペラでは「コシ・ファン・トゥッテ」(ドラベッラ役)でデビュー。他多数出演。日本国内のみならず、海外においてもコンサートを開催。
演奏活動をするほか、舞台監督として舞台製作にも携わる。クラシック以外では、バックコーラスなどでテレビ、ラジオ番組に出演。各地でボイストレーナーとしても活躍。多くの生徒を様々さまざまな分野に輩出している。現在アイドルグループSTU48メンバーの峯吉愛梨沙もそのひとり。峯吉愛梨沙の在籍中、彼女の音痴克服に努め成果を上げる。
現在も、ASH、AGHグループ他のボイストレーナー。現代音楽演奏集団HER、スーパー・ファクトリーに所属し活躍、STU48のボイストレーニングにも携わっている。