お年玉と一緒に贈りたい“お正月の絵本”3選[絵本専門店の書店員が選出]

子どもの本のプロが選ぶギフト絵本 #9~お年玉と一緒に~ (2/4) 1ページ目に戻る

ブックハウスカフェ店長:茅野 由紀

おもちにだって気持ちはある!?

お正月、普段は忙しいママさんパパさんも、少しはゆっくり過ごせるでしょうか。私がお子さんに絵本をプレゼントするとき、その背後には「親子で過ごす時間を大切にしてほしい」という想いがあります。

向き合ったり並んだり、小さいお子さんなら膝の上にのせたりして、一緒に過ごす時間を作り出すのに絵本はぴったりのツールですよね。

今回は、笑って心が温かくなるようなユーモアあふれる絵本、日本の伝統を感じられる絵本など、お正月に親子で楽しんでいただける3冊を選びました。

最初にご紹介するのは、『おもちのきもち』(講談社)。みんな大好きな「だるまさん」シリーズでおなじみの、かがくいひろしさんのデビュー作です。

かがくいさんが逝去されて15年以上が経ちますが、今でも私たち書店員の中にしっかりと存在していて、その絵本が子どもたちの心に届いていることを日々実感します。

『おもちのきもち』(作:かがくいひろし/講談社)
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主人公は、たごさくさんちの「かがみもち」。今は床の間に大切に飾られていますが、「いつ なんどき たべられる ことやら。ああ おそろしや。」と、なんだか浮かない表情をしています。そこである日、決意するのです。

「わたくし この たび にげだす ことに いたしました~。」
「ペッタン ペッタン ペッタン ペッタン。」

ビロンビロンビローンと体を伸ばしながら、勢いよく逃げていく「かがみもち」。まだつきたてなのでしょう。自由自在に姿を変える「かがみもち」は見るからにやわらかくて、とってもおいしそう! おもちが大好きなお子さんは、きっと大喜びですね。

かがくいさんは絵本作家になる前、特別支援学校の教員として28年間、勤務されていました。一緒に過ごす中で、どういうお話だったら子どもの“おもしろスイッチ”を押せるのか、よく観察されていたのだと思います。

決して誰かを傷つけたり困らせたりする笑いではなく、子どもたちに心から笑顔になってほしい。そんな優しくあたたかな想いが詰まっています。

今はもちつきをする機会も少ないですし、保存が効くパックの切り餅しか知らないお子さんも多いかもしれません。実際にもちつきはできなくても、この絵本を通じて「つきたてのおもち」の魅力を体験してみてはいかがでしょうか。

「だるまさん」シリーズの絵本は、多くのお子さんが赤ちゃんのころに出会ったことでしょう。こちらの『おもちのきもち』は、成長したお子さんが、かがくいさんの世界を楽しむのにぴったりです。大人も笑えるユーモアが満載ですので、ぜひ親子で読んでいただきたいです。

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