「わが子はよその子と違う」子どもを比べ不安な親に 専門家が薦める絵本3選
大人に効く絵本〔15〕『ちっちゃなねずみくん』『まっくろ』『ぼくは川のように話す』がおすすめ
2023.11.20
絵本コーディネーター:東條 知美
言葉が生きる力を支えてくれる
続いてご紹介するのは、2021年に発売された『ぼくは川のように話す』(文:ジョーダン・スコット、絵:シドニー・スミス、訳:原田勝)。ここ3年以内に出た絵本の中で、確実に私のベスト5に入る作品で、何度も読み返しています。
主人公は、吃音という「どもる」「なめらかに言葉が出ない」などの発話障がいを持つ少年。吃音を持つカナダの詩人、ジョーダン・スコットが、自身の子どものころの体験を詩的に綴った物語です。
絵を描いたのは、今、世界でもっとも注目されているカナダの絵本作家、シドニー・スミス。光と影をたくみに用いて少年の心を表現した、大変美しい絵本です。
周りと違っていることは、特に集団において、当の本人がいちばん苦しくて悩ましいことではないでしょうか。ある日の放課後、今日も学校でうまく話せずに落ち込んでいる少年を、父親が川辺へと連れ出します。そして、少年とふたり並んで座り、語りかけるのです。
「ほら、川の水を見てみろ。あれが、お前の話し方だ」。
父親の言葉をきっかけに、初めて川というものを見つめる少年。その目線が、ユニークなコマ割りで描かれています。きっと父親は「お前も川も自然の一部だ、何もおかしいことはない」と伝えたかったのだと思います。
川の美しさ、常に一定ではなく変化していくさまが、自分の話し方そのものであると少年はイメージできたのでしょう。父親の言葉に救われ、自分自身のイメージを大いなる川に重ねることで、一歩を踏み出すことができました。
言葉が子どもの生きる力を支える、救うということを描いた作品です。どんなふうに子どもを支えてあげたら強く生きられるか、心を立て直すことができるか。
そのヒントが、この絵本の中にあります。わが子には自信をもって生きてもらいたいと願う親御さんに、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
最後に。もし「わが子がよその子と違うのでは」と、あまりにも気になるようでしたら、ひとりで抱え込まずに、お住まいの地域の子育て支援課や幼稚園・保育園の先生、学校の先生に相談するのもひとつだと、お伝えしておきたいと思います。
取材・文/星野早百合
星野 早百合
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
編集プロダクション勤務を経て、フリーランス・ライターとして活動。雑誌やWEBメディア、オウンドメディアなどで、ライフスタイル取材や著名人のインタビュー原稿を中心に執筆。 保育園児の娘、夫、シニアの黒パグと暮らす。
東條 知美
絵本コーディネーター、講師、コラムニスト。1973年新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。在学中は桑原三郎氏(児童文学研究者)、角野栄子氏(児童文学作家)らに師事。卒業後、メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校などの勤務を経て、絵本コーディネーターに。 絵本を題材に各地で講演、イベントを行うほか、執筆活動、保育士や図書館司書を対象とした研修などを手掛ける。コンセプトは「子どもに絵本を。大人にこそ絵本を。」 公式サイト https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon Instagram @tomomitojo Twitter @TOMOMIT
絵本コーディネーター、講師、コラムニスト。1973年新潟県上越市生まれ。白百合女子大学児童文化学科卒業。在学中は桑原三郎氏(児童文学研究者)、角野栄子氏(児童文学作家)らに師事。卒業後、メディアファクトリー(現KADOKAWA)、国立国会図書館、幼児教育専門学校などの勤務を経て、絵本コーディネーターに。 絵本を題材に各地で講演、イベントを行うほか、執筆活動、保育士や図書館司書を対象とした研修などを手掛ける。コンセプトは「子どもに絵本を。大人にこそ絵本を。」 公式サイト https://www.tojotomomi.com/ ブログ「僕らの絵本」 https://ameblo.jp/bokurano-ehon Instagram @tomomitojo Twitter @TOMOMIT