子どもが「発達障害」?と感じたら  『リエゾン』監修の児童精神科医が「3つの特徴」を解説

児童精神科医・三木崇弘先生が語る「発達障害の子どもと保護者への支援」 #1 「発達障害」の特徴を見る3つのポイントと相談先

児童精神科医:三木 崇弘

診断名はサポートに必要なもの

医療機関や、児童発達支援センターでは、診察の結果次第では、発達障害という診断がつく子もいるでしょう。

なかには「診断名がつくことで、子どもが過ごしづらくなるのではないか?」と考える保護者の方もいるかもしれません。しかし、診断名があったほうが助かる場合もあります。それが以下の2つです。

ひとつは、行政の手続きに診断名が必要なときです。障害者手帳や、特別児童扶養手当の手続きなどに診断名は必ず必要です。また、療育を受けるには診断名が必要、という自治体や事業所もあります。

もうひとつは、子どもの状態に対する理解がほしいときです。例えば、自閉スペクトラム症と診断されたなら「まずは視覚支援をしていこう」「前もって予定を伝えていこう」「雑音が入らないようにしよう」など、よくやる支援の候補をあげられるし、また診断名があることによって周りにその子の状態を理解してもらいやすくなります。

あるいは限局性学習症で文章を読む能力に困難があるとわかれば、「この子に無理やり音読を繰り返させても本人にしんどい思いをさせるだけだ」と理解できます。

診断名はあくまで必要なサポートを受けるためのものであって、決してレッテルを貼るためのものではありません。

抱えている困りごとは早めに解決を

発達障害を診断された子どもは、ほとんどの場合に「困りごと」を抱えています。そして、その「困りごと」は、早めに手を打ったほうがいいことが多いです。

例えば、子どもが人込みに行くのを異常に嫌がる場合、「聴覚過敏」によって、ザワザワした音に大きなストレスを感じているのかもしれません。この「聴覚過敏」が原因とわかれば、人の多いところを避けて移動したり、イヤーマフをつけたり、ストレスを減らす工夫をして、無理に我慢をさせないようにできます。そうすると、子どもも過ごしやすくなりますよね。

授業時間内に板書をノートに書き取れないのは、「書字障害」があるからかもしれません。「書字障害」とは、文字を書くことに困難が生じる障害です。「書字障害」に対しては、タブレットやカメラで対応できることもあります。目の悪い人がメガネをかけるのと同じですよね。苦手があるなら道具で補えばいいのです。

大切なわが子に診断名をつけることで「障害者」にしたくない、と相談をためらうお母さんやお父さんもいらっしゃいます。でも、困っていることにアプローチするのは大切なことです。

早めにアプローチできれば、そのぶん子どもが不必要に苦労したり、傷ついたりする体験を減らせますし、生活を過ごしやすくする工夫ができます。

そうやって、日々、子どもの笑顔を増やしていけるといいですね。

――――◆――◆――――

三木先生に聞く、発達相談。次回2回目は、「療育」とは何か、子どもにどのような変化をもたらすのか、について解説していただきます。

取材・文/山口ちゆき(メディペン)

三木崇弘先生の発達障害の子どもと保護者の支援連載は全3回。
2回目を読む。
3回目を読む。
(※2回目は2023年1月5日、3回目は1月6日公開。公開日までリンク無効)

『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』著:三木崇弘(講談社)
19 件
みき たかひろ

三木 崇弘

Miki Takahiro
児童精神科医

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)

児童精神科医。国立成育医療研究センターこころの診療部でフェロー・研究員として6年間勤務の後、2019年フリーランスに。以降、クリニック専門外来、公立小学校スクールカウンセラー、児童相談所、保健所、児童養護施設、児童自立支援施設などで非常勤の医療・教育等カウンセラーとして活動。 2023年4月より地元・姫路へ戻り、児童精神科医として多忙な日々を送る。 『モーニング』連載中の漫画『リエゾン―こどものこころ診療所―』監修。知的障害支援「あいプロジェクト」代表、発達研修ユニット「みつばち」としても活動中。 最新著書『リエゾン―こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社)

メディペン

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医療ライターズ事務所

医療ライターズ事務所。 看護師、管理栄養士、薬剤師など、有医資格者のライターが在籍。 エビデンスに基づいた医療記事を得意とするほか、医療×他業種の記事を手掛ける。 産婦人科関連、小児科、皮膚科、医療系セミナーレポートや看護師専門サイトの記事の実績多数。 medipen

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