「毒親になりたくない」なら… 子育て熱心な親が見失いがちな事実

人生相談本コレクター・石原壮一郎のパパママお悩み相談室〔11〕「毒親になりたくない」

コラムニスト&人生相談本コレクター:石原 壮一郎

子どもへの毒と救いの薬は紙一重

<石原ジイジの結論>
我が子の未来に呪いをかけたり、子どもの成長の芽をことごとく摘んだりなど、巷間取りざたされている「押しも押されもせぬ毒親」は、誰もがなれるわけではない。

特別な資質を持ち合わせているか、特別な事情が重なってしまったかのどちらかである。「毒親になりたくない」と思ってこの記事を読んでいるあなたは、まず心配はいらんじゃろう。

いっぽうで忘れてはいけないのが、すべての親は“毒”の要素を持っているということ。我が子に「こんな大人になってほしい」と思っているし、言葉や行動を通して影響を与えてしまう。かく言う自分も、このごろ言葉が達者になってきた孫に、ダジャレをせっせと教えている。将来、孫が「ジイジのせいでダジャレ好きになった」と恨みを抱いたとしたら、立派な毒ジイジだ。

そのぐらいはまあいいとしても、知らず知らずのうちに子どもを追い詰める「プチ毒親」になる可能性は、誰もが持ち合わせておる。くれぐれも油断は禁物じゃ。

ただ、子どもにダメージを与える毒と、子どもを救う薬とは紙一重である。毒を恐れすぎると、必要な薬を出し渋ることになりそうだ。毒にも薬にもならない親は、それはそれで問題である。

誤解を恐れずに言えば、少しぐらいの毒は仕方ないと開き直ったほうがよさそうじゃ。その上で、たぶんこの2点を忘れなければ、本物の毒親にもプチ毒親にもなることはないだろう。逆に、そう思えない場合は、体内に毒親ウイルスが潜んでいるかもしれん。

その1「子どもが親の言うことに逆らうのは、裏切りではなく成長した証である」

その2「親が子どものためにしてあげられることなんて、ごくごく限られている」

どちらも当たり前のことではあるが、いわゆる「教育熱心」なタイプほど、つい忘れがちである。親との関係に悩む相談をたくさん読んだが、子どもを苦しめている親は、この二つを忘れているケースが多い。

それはさておきとして、「毒親」という言葉は多くの人を救っている。言葉が広がったおかげで、被害の当事者が「自分が苦しいのは親が原因だったんだ」「親を憎んでもいいんだ」と気づいた。

それまでは「ひどい親もいる」という当たり前の事実に対して、世間は「そんなはずない」と目をそらしてきたし、親を責めることはタブーとされてきた。

言葉が広まったことによる弊害もある。何でもかんでも「毒親」のレッテルを貼って、自分を正当化しているように見えるケースもなくはない。いわば自家中毒である。この「毒親」に限らず、耳新しい言葉の毒気に当てられないように、くれぐれも気を付けよう。

【石原ジイジ日記】
先日、F菜のバアバ側のヒイバアバが天に召された。無言で帰宅したヒイバアバを見て、「寝てるの?」と不思議そうな顔をしている。「もう起きないんだよ」と言ったが、どこまで理解できたかはわからない。ヒイバアバの幸せな記憶の中に、F菜が登場できてよかった。F菜の記憶にも、ヒイバアバがたくさん刻まれていますように。
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いしはら そういちろう

石原 壮一郎

コラムニスト

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか

コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』でデビュー。以来、数多くの著作や各種メディアでの発信を通して、大人としてのコミュニケーションのあり方や、その重要性と素晴らしさと実践的な知恵を日本に根付かせている。女児(2019年生まれ)の現役ジイジ。 おもな著書に『大人力検定』『コミュマスター養成ドリル』『大人の超ネットマナー講座』『昭和だョ!全員集合』『大人の言葉の選び方』など。故郷の名物を応援する「伊勢うどん大使」「松阪市ブランド大使」も務める。ホンネをやわらげる言い換えフレーズ652本を集めた『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』も大好評。 林家木久扇がバカの素晴らしさを伝える『バカのすすめ』(ダイヤモンド社)では構成を担当。2023年1月には、さまざまな角度のモヤモヤがスッとラクになる108もの提言を記した著書『無理をしない快感 「ラクにしてOK」のキーワード108』(KADOKAWA)が発売。 2023年5月発売の最新刊『失礼な一言』(新潮新書)では、日常会話からメール、LINE、SNSまで、さまざまな局面で知っておきたい言葉のレッドラインを石原壮一郎氏がレクチャー。 写真:いしはらなつか