「不登校」の子が自ら動き出す親の見守り方 教育現場を“観察”し続けた識者が見つけた「選択肢」

「おおたとしまさ(教育ジャーナリスト)✕辻田寛明(ワオフル代表)」特別対談 後編 (2/3) 1ページ目に戻る

辻田寛明さん(以下敬称略):公立の学校はお金がなくても通える場所で、これは人類が発明した素晴らしい制度だと思っています。

学校が合わなかった子どもには、複数の学びの場を利用する「パラレル登校」がいいと思っていますが、実際に「パラレル登校」をやろうとするとお金がかかる現実があります。補助金も地域によって差がありますし。

おおたさんは今回の本(『フリースクールという選択』講談社+α文庫)を取材する中でその辺はどう感じましたか。

おおたとしまささん(以下敬称略):難しい問題ですよね。僕は将来的には、フリースクールも学習塾も習い事も、全部無償にすべきだと考えています。

今の社会は、お金がないと教育や体験ができない構造になっているし、僕らもお金がかかって当然と思っている。このままではお金がないと教育や体験ができない社会をどんどん加速することになりますよね。「教育格差」「体験格差」がそれです。

そうじゃない社会の作り方があるんじゃないかなと思っていて。実は10月(2026年)には地域教育をいろんな形でやっている団体などを取材した本を出す予定です。

昔は地域の中で、お金をかけずに子どもたちが育っていました。それを現代の社会に置き換える新しい仕組みを作れないかと考えています。学校では学べないことを、地域の中で子どもたちが自然に学ぶことができる社会を再生することは不可能ではないはずです。

辻田:近代社会が「学校が学ぶ場所、あとそれ以外」と境界線を引いてしまったからそうなったんですよね。もっと境界をゆるめることで、新しい形の学びが生まれるかもしれませんね。

おおた:1990年代の終わりごろから、学習指導要領に「生きる力」という言葉が入ってきました。それ以降、社会では「学校で全ての子どもに生きる力を与えなければならない」と思い込んでしまった。

今となってはそれが間違いの始まりだったのではないかと感じています。そもそも学校にそんな機能はなかったし、学校で生きる力を全部インストールさせるなんて到底無理な話ですよ。

生きる力は個人に属するものではないのに、学校で与えられると間違った思い込みをしてしまった。それを改めて地域に戻していく。すると、地域の大人たちが群れ始める。いろいろ企(くわだ)て始める。大人たちが群れとして発揮する生きる力を子どもたちは間近で見ることができるようになる。そうすれば、生きる力なんて勝手に育つんじゃないかな。

そうしたら学校がやらなきゃいけないことはもっと限定される。それが多様な学びや、パラレル登校になって「学校は利用できれば利用すればいい」という流れにつながっていくと思いますよ。

辻田:はい、わかります。

おおた:そもそも学校ができたのってこの数百年、近代以降の話じゃないですか。日本だって明治維新以降です。学校は国民国家を整えるために軍隊とセットでできたんです。

そうしてできたいわゆる近代の産物としての学校は、もう役目を終えているのかもしれない。学校を再定義しなければいけないですよね。

一条校の学校に通わないでフリースクールに通って、自立して、社会に出ていって、ちゃんと暮らせてる人たちがこれからどんどん出てきますよ。

辻田:僕らの運営する夢中教室や夢中カレッジは、あえて「株式会社」として運営するという挑戦をしています。

その背景はこの資本主義の中で、どういい形で社会を作っていけるかを課題にしているからなんです。お金と人が集まるところが会社の良さだったりはするので。

例えば地域に根ざした会社が50年先への投資として売り上げの一部を地域の学びに還元したり、今よりもっと学びに寄っていくことで、子どもたちが学校と合わなかったとしても、地域で無償で学びを受けられたり、そのボランティアをする人たちにもしっかり収益が入るような仕組みができるんじゃないかと思ってるんです。

おおた:おっしゃるとおりですね。人と人とが贈与でつながる地域経済の足場をしっかり固めたうえで、グローバルな市場を舞台にした競争にも加わっていく。企業が、経済活動の2つの階層を区別して、それぞれにおけるふるまいを使い分ける。

これは企業の生き残り戦略としても重要な観点だろうと思っています。

学校以外の選択肢に迷う親たちへ

辻田:おおたさんはフリースクールの本(『フリースクールという選択』)を出されましたし、実際にフリースクールを選ぶ人は増えつつあると僕も感じています。

とはいえ、多くの人と違う道を選ぶ勇気がなかったり、不安だったり、現実的に難しいと考える保護者もまだ多いと思います。今、迷われている方に向けて、どんなメッセージがありますか。

おおた:多くの方は、人生は正しい選択をしなければいけないものと思い込みがちですが、自分がイキイキする方向に歩んでいったら、そこに道ができるだけのことだと思います。

不登校になった子どもは、深く傷ついています。なぜなら「学校には行くものだ」という社会通念を知っているから。そうじゃない自分はダメな人間だと自己像がゆがめられてしまうんですよね。

この社会は学校に行かないとまともに生きていけないって思い込まされている。それは学校が軍隊と一緒にできたからなんです。ある種、脅すことによって思い込ませてきた。

自分が無意識に前提にしてしまっているものが本当に真実なのか、疑ってほしいですね。学校以外の選択をするのは難しいと考えるのは、具体的に何が難しいのか、それは思い込みじゃないですかって。

子どもが自ら踏み出すには?

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