子どもの不登校で親ができる4つのこと 2000人以上に指導した「先生の先生」が解説

小学校現役教諭・庄子寛之先生と考える子どもの不登校 #2 不登校の子どもと学校に対して、親の向き合い方と親自身もすべきこと

小学校教諭:庄子 寛之

子どもが学校に行けないとき親ができることは?

──もし、自分の子どもが学校へ行けなくなってしまったら、親として何ができるでしょうか?

庄子先生:お父さん、お母さんの気持ちにもよりますが、強引に学校へ行かせようとしても子どもが行くとも限りませんから、一概にこうしたほうがいいという答えは見つかりません。

「わが子のためにやれることはやりたい」と思うお気持ちはよくわかりますが、だからと言って学校にたくさん不満をぶつけないことです。

多くの場合、保護者の方は、「子どもが行けない原因が学校にある」と思いがちなので、強い口調になってしまったり、先生や学校を攻撃したりしてしまうのだと思います。でも、そうすることで学校との関係はますます悪くなっていきます。

また、「学校に行ってほしい」と思っているのに、子どもは「行かない」となると、今度は「全部私のせいだ」と、自分自身を責めてしまう親御さんも多くいらっしゃいます。

そんな親の姿を見た子どもは、今度は「学校に行けない自分が悪いんだ」と、自分を責めてしまいます。先生も保護者から責められることでどんどん疲弊していきます。

そんなループにはまってしまうことは、誰にとっても決していい状態ではないのですが、でも実際に起きていることなのです。

子どもが不登校になってしまった。そのとき親ができる4つのこと

●学校に行けない原因探しはしない
●もし原因が見つかってもそれだけを信じない
●子どもが行けない保護者の不満を学校にそのままぶつけない
●子どもが学校に行けなくても親である自分を責めずのんびり構えている

親と教師は不登校の解決策を共に考える仲間

──わかっていても、子どものこととなると親はなかなか冷静にはなれません。そんなとき、親は学校や先生とどのように関わっていけばいいのでしょうか?

庄子先生:子どもが学校に行かなければ心配。その気持ちはよくわかります。それでもお父さん、お母さんは「まぁいいか」くらいにのんびり構えていてほしいと思います。もちろんそれが難しいということはよく分かりますが。

子どもはこういう時期を経て伸びていくのだし、いろいろな経験は将来に活かせます。お父さんやお母さんにとっても、子どもが学校に行かない今、いろいろなことを学ぶチャンスでもあるんです。そう思うことで、プラスのサイクルが始まっていくのではないでしょうか。

親と教師が言い合っても決して良いことはありません。まずは冷静になって、先生は解決策を共に考える仲間だという意識をもっていただければと思います。

──保護者は、先生以外に相談できる人や場所を作ったほうがよいのでしょうか?

庄子先生:はい。作った方が良いと思います。最近は、どこの学校にもスクールカウンセラーが常駐していますし、どこの市区町村にも相談窓口はありますから、保護者が相談する間口は以前に比べて確実に広がっています。

お父さんやお母さんが周りから孤立しないように、どこの相談窓口でもいいからまずは頼ってみてはいかがでしょうか。もし合わないと感じたらまた別のところを探して頼ればいいんです。選択肢はたくさんありますから。

少し話がそれますが、日本の文化では、自分が受けているカウンセラーに不満があっても、なかなか断れないという声を聞くことがあります。それは、日本人が良い意味で最初に会った人と仲良くできるという気質を持っているからなのですが、でも子どものためには、ベストではなくても少しでもベターな相談先を探すほうがいいと思います。ただ、それができなかったとしても、決してそういう自分を責めないであげてくださいね。

───◆─────◆───

子どものこととなると我を忘れて心配しがちです。目の前で子どもが苦しんでいたならなおさらのこと。庄子先生は、それでも「のんびり構えているくらいがちょうどいい」と言います。今はつらいかもしれないけれど、また未来は違うものになる。まずは親側の意識改革が必要です。

日本人の私たちにはカウンセリングを受ける習慣があまりないですが、プロに話を聞いてもらい、気持ちを整理することで、一歩引いた場所から自分や子どものことを見られるようになるのかもしれません。

3回目では、庄子先生に「子どもの幸せな将来のために親ができること」と、「変革期に来ている学校」について引き続きお話しいただきます。

取材・文/米谷美恵

庄子先生の不登校連載は全3回
1回目を読む。
3回目を読む。
(※3回目は2023年1月24日公開。公開日までリンク無効)

庄子寛之
(しょうじ・ひろゆき)

東京都公立小学校指導教諭。大学院にて臨床心理学科を修了。道徳教育や人を動かす心理を専門とする。学級担任をするかたわら、「先生の先生」として全国各地で講演を行っている。担任した児童は500人以上、講師として直接指導した教育関係者は2000人以上にのぼる。
元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2019年、U-19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)他

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『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』著:庄子寛之(青春出版社)
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しょうじ ひろゆき

庄子 寛之

元公立小学校指導教諭・ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員

元公立小学校指導教諭 ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員 大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。 元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。 著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。

元公立小学校指導教諭 ベネッセ教育総合研究所教育イノベーションセンター主任研究員 大学院にて臨床心理学科を修了し、道徳教育や人を動かす心理を専門とする。これまでに担任した児童は500人以上。「先生の先生」として教育関係者だけでなく、企業や保護者向けに、2年間で44都道府県での研修・講演を行う。 元女子ラクロス日本代表監督の顔も持ち、2013年、U‐21日本代表監督としてアジア大会優勝。2019年、U‐19日本代表監督として日本ラクロス史上トップタイの世界大会5位入賞を果たす。 著書に『子どもが伸びる「待ち上手」な親の習慣』(青春出版社)、『教師のための𠮟らない技術』『withコロナ時代の授業のあり方』(ともに明治図書出版)、『子どもがつながる! オンライン学級あそび』(学陽書房)など多数。