多様な時代の「不登校」 子どもだけでなく親もマインドチェンジが必要

フリーランスティーチャー田中光夫先生に聞く、子どもが不登校になったときどうしたらいい? #3 多様な生き方のなか、不登校の親たちができること

フリーランスティーチャー:田中 光夫

「自分らしさ」を選ぶ子どもたちへ、大人たちは対応できているのでしょうか?  写真:アフロ

昨今、テクノロジーの進歩により、好きな場所で仕事ができるリモートワークやSNSを活用したビジネスなど、新たな働き方が生まれています。

そうした社会において、これまで社会のレールとされる進学や就職といった道ではなく、自分なりの生き方を模索する子どもたちも少なくありません。

しかし、親は子どもの将来を心配するあまり、自分の経験や価値観で口を出してしまいがちです。そんな親に対して、フリーランスティーチャー・田中光夫先生は、「多様な生き方が選べる時代だからこそ、大人も時代の変化に合わせた価値観や考え方に変えていきたい」と語ります。

社会が大きく変わっていく今、自分らしい生き方を選んだ子どもに対して、親はどのように考えればいいのでしょう。

不登校連載最終回となる3回目では、今の子どもたちの生き方について田中先生と考えてみました。

(全3回の3回目。1回目を読む2回目を読む

フリーランスティーチャー
田中光夫(たなか・みつお)


14年間の公立小学校勤務を経て、2016年4月より休業に入る先生の代わりに学校担任をする「フリーランスティーチャー」に。現在までに10の小学校で代替え教師を務める。また、全国で教員の働き方改革を進める「アクティブ・ワーキングセミナー」を開催。

子どもたちのほうが時代に応じて生きている

──今、デジタルテクノロジーが進み、世の中が大きく変わっています。子どもたちの仕事や働き方に対する価値観に、田中先生は変化を感じますか?

田中光夫先生(以下、田中先生):はい、大きな変化を感じています。

厚生労働省の発表によると、2019年3月の卒業者で、就職後3年以内の離職率は大卒で31.5%と高い数値になっています(引用元:厚生労働省・新規学卒就職者の離職状況)。

いまや速いテンポで仕事を変えることが当たり前となり、長年、日本では一般的だった終身雇用という働き方ではなくなっているのが現状です。

また、世間ではYouTubeチャンネルで広告収入を得たり、eスポーツ大会で多額の賞金を稼ぐ人たちなどが目立つようになりました。

子どもたちは、自分のやりたいことで稼いでいる大人たちを見て、学歴ではなく「手に職をつけたい」、「やりたいことをやったほうがいい」と気づき始めています。つまり、社会全体を通して将来の描き方が多様になったと言えますね。

──おっしゃるとおり、今は転職をしながら自分に合う仕事や働き方を見つける時代ですし、人気職業ランキングには常にYouTuberが上位にランクインしていますね。

田中先生:そうですね。今は多様な時代なので、いい大学を出て、いい就職先に入るというレール以外にも社会で活躍している人たちはたくさんいます。

ところが、親は「学歴がないと生きていけないよ、将来困るよ」と子どもに言ってしまう。親世代で一般的だった自身の経験から、親が子どもに対して「こうなってほしい」と言ってしまうのです。

もちろんその気持ちもよく分かります。しかし、社会がどんどん変わる今、大人よりも子どもたちのほうが、その時代に応じて生きているのではないか、と感じることがありますね。

例えば今、学校でパソコンやタブレットなどのICT機器を使った授業に取り組んでいますが、子どもたちはあっという間に使いこなせてしまうんですよ。大人が何十時間もかけてパワーポイントで資料をつくるのに対し、子どもたちはサクサクと進めてしまう。大人のほうが「お手上げだ」と感じてしまうわけです。

もちろんデジタルリテラシーが育っていない中では、予想もしていないトラブルも起きてしまうので大人が注意しなければなりません。しかし今、教育現場では10年前には想像していなかったことが起きているのです。

結局、子どもの将来に対しては大人側のマインドや価値観を変えていくことが大事だと私は思いますね。

不登校の悩みを共有できる場を見つけてほしい

──3回の不登校の連載を通して、主に学校側の視点で田中先生に語っていただきましたが、不登校で今、悩みを抱えている保護者や子どもに対して何かアドバイスはありますか。

田中先生:自分が心から安心でき、かつ同じ不登校の悩みを共有し合える場を見つけてほしいと思っています。

例えばフリースクールや地域コミュニティ、習い事教室、オンラインのコミュニティなど。どうしても不登校中は、孤独を感じて気持ちが不安定になりやすいので、ただ話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になるはずです。

不登校を経験した子どもたちは、成長して振り返ったときに、

「不登校は大事な時期だった。『学校に行かない』という拒否反応をしなければ、自分が壊れていたかもしれない」

と、話す人が多いといいます。つまり、自分を守る防衛本能、生存本能として「学校に行かない」と選んでいる子どもたちが多いのです。

学校教育というのは、一定のカリキュラムが決められている以上、全員が同じ教育を受け、その同一性の中でみんなと同じことが求められます。

だからこそ、不登校で悩んでいる方は、年齢や性別、世代を超えて関わることができる場を見つけてもらいたいと思っています。

人には、個々によっていろんな特性や個性があります。学校では、子どもの凹んでいるところを一生懸命、訓練して埋めようとするんです。

でも、どんな子でも、凹んでいるところがあれば飛び出しているところもある。簡単なことではありませんが、それを個性と捉えて、伸ばしてあげられたほうが、子どもたちはこれから先、自分を信じて生きやすくなるのではないかと私は思っています。

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フリーランスティーチャー・田中光夫先生と3回にわたって、不登校における現代の認識、学校側の対応、不登校時の過ごし方、そして多様な時代の生き方を考えてきました。

私たち大人は、自分たちが歩んできた経験をもとに、「こうしたらいいのでは」とつい語ってしまいがちです。もちろん過去の経験が活かされる場面もあるでしょう。

しかし、変化が激しい今、親自身がこの時代に合った考え方に目を向けることができれば、子どもの未来がより広がっていくのではないか。そう、改めて気づかされました。

子どもも、親も、誰もが生きやすい時代になっていくことを期待したいと思います。

取材・文/山田優子

フリーランスティーチャー・田中光夫先生の連載は全3回。
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たなか みつお

田中 光夫

フリーランスティーチャー

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フリーライター。神奈川出身。1980年生まれ。新卒で百貨店内の旅行会社に就職。その後、拠点を大阪に移し、さまざまな業界を経て、2018...