「母乳とミルク」噂の真相を東大医学部卒のママ医師が一刀両断
教えて、もりたま先生! 「母乳とミルク」のウソ・ホント #2
2021.08.07
母乳育児のほうが風邪を引きにくい」はホント
もりたま先生「風邪のような急性疾患にかかる割合は、たしかに母乳を飲んでいる子どものほうが低いと言われています。子どもに多い慢性疾患のひとつ・ぜんそくは、議論が分かれるところです。ぜんそくは小さいうちにはっきり診断するのは難しい病気ですが、2歳ぐらいまでで『ゼーゼー』と苦しそうな呼吸をするのは、母乳で育った子どものほうが少ないようです。
ただ、それがぜんそくなのかというと難しいところで、母乳を飲んでいると風邪を引く割合が低いから少ないのではないか、という考えもあります。母乳を飲まなくなり、3・4・5歳と成長したときの差はないんじゃないかと。まだ、はっきりとした答えは出ていません。逆に言うと、ものすごく大きな差は、おそらくないと思います。アトピーについても同様ですね。
病気については、個人差の範囲も大きいと思います。私の長男はほぼ母乳育児でしたが、何度も中耳炎にかかって、しょっちゅう薬を飲んでいました。一方で次男はミルクがメインの混合だったのですが、ほとんど熱を出しませんでした。コロナ禍で気をつけていたのもあるかもしれませんが、一概に母乳だったら元気で、ミルクだったら病気になりやすいということではありません。
ひとりの子どもで考えたとき、もしミルク育児だったら、もっと風邪をひいていたのかもしれないなど、その程度のこと。トラブルがなければ、もちろんメリットの多い母乳をおすすめしますが、心身をすり減らしてまで母乳育児にこだわる理由はないと思います」
――食物アレルギーに関しては、どうでしょう?
もりたま先生「これも議論が分かれるところです。これまで比較的信頼性の高い研究で、完全母乳育児の子どものほうが、牛乳アレルギーが少なかったというものがありました。でも、最近、生後1ヵ月から牛乳由来のミルクを少しずつ与えると、牛乳アレルギーになりにくいという研究も出てきました。赤ちゃんに与えるタイミングなど、詳しいことはまだはっきりわかっておらず、これから研究が進んでいくというのが現状ですね」