『第1回 読者と選ぶ あたらしい絵本大賞』特別審査員・横山だいすけさんインタビュー「絵本は人生に必要なもの」
11代目うたのおにいさんが気づいた、絵本と歌の共通点
2025.01.15
横山 さまざまな仕事をしていますが、卒業からずっと続けているのは、子どもと家族向けのファミリーコンサートです。ミュージカルやオーケストラなどいろいろな形で続けていますが、最近は特に、0歳から参加できる「オーケストラといっしょ! ~0歳からのコンサート~」が増えました。
──絵本も「0歳から」楽しむものがありますが、赤ちゃんにオーケストラの音楽を聴いてもらうというコンセプトでしょうか。
横山 どちらかというと、0歳のお子さんといっしょに親御さんたちも楽しみましょうというコンセプトです。0歳の赤ちゃんは泣くのが仕事。それが心配で外出をためらっている親御さんたちに、「赤ちゃんが泣いても、席を立たなくてだいじょうぶだから、いっしょに音楽を楽しみましょう」というものです。
コンサートで演奏する楽曲は、大人の方が「この曲知っている」となるような、だれでも一度は耳にしたことがある曲ばかり。僕も歌手として、司会者として参加させていただいています。童謡からみんなが大好きな歌まで、幅広いジャンルの曲を、オーケストラと生の歌声を届けるコンサートで、「本物に触れてほしい」という思いが込められています。
──全国各地で開催されているのですね。
横山 そうなんです。本当にここ数年で、開催数が増えていますね。過去のコンサートを知ったオーケストラの方が、「こんなにいいことをやっているんだ。じゃあうちでもやりたい」というふうに、全国に拡がっていったという感じです。
それだけではなく、僕自身がいろんなことに挑戦することで、だいすけお兄さんや横山だいすけを知っている人が、「だいすけお兄さんがこんなこともがんばっているんだ」、「じゃあ私もがんばってみようかな」と思うキッカケになればいいかなと思って。
僕は子どもが大好きなので、子どもに関わる仕事をやっていきたいと思っています。だから、いろんなジャンルに挑戦していますね。絵本が大好きなので、絵本の読み聞かせをしたり、活動中に自分が読んだ絵本の感想を伝えたり。僕が感じた素直な気持ちを、子育て中の親御さんはもちろん、いろんな人に伝えていくことで、1冊くらい興味を持ってくれたらいいなと思い、発信しています。
絵本と歌の共通点は想像力がふくらんで世界に浸れること
──そうですね。絵本の言葉は、口に出すとどんな音の響きになるのかを、すごく考えてつくられているなと思います。童謡や歌が、物語性のある絵本になっているものもありますね。歌がある場合、横山さんはどんなふうに読んでいますか?
横山 僕の場合は、知っている歌の絵本でも、まずどんな絵が描かれているかに注目します。絵本になったら、絵も言葉も、その絵本の世界のもの。それがひとつの作品であり、メッセージだと思うので、やっぱり絵を見て、どんなふうに読むのかを決めると思います。
──歌ではなく、絵本として味わうということですね。
横山 そうですね。
──歌をベースにした絵本を読もうとすると、つい「どんなふうに読んだらいいのか」と迷ったりしてしまうこともありますが、歌と絵本、それぞれ違う役割があって、それぞれ楽しむという時間が生まれることがあるんですね。
横山 絵本のストーリーは決まっていますが、実は読み手の読み方ひとつでおはなしをどんな色にも変えられるし、受け手の反応も違いますよね。
親になって初めて気づいたのですが、同じ絵本でも、僕が読むときと、僕以外の誰かが読むときでは、テンポ感も声色もまったく違うんです。読み手によって、おはなしの世界観に違いが出るのがおもしろいなと感じましたね。
──確かに、お父さんとお母さんの読み方が違うというのは、あるあるです。
横山 読み方に正解はないので、違っていていいと思います。もちろん、聞きやすい声色とかテンポ感があるかもしれませんが、子どもにとっては、お母さんの声やお父さんの声で読んでもらうというのが、なによりも一番安心できる。その安心感が、絵本との思い出になったり、楽しさにつながっていくのではないかと思います。まさに上手い下手ではなく、お父さんやお母さん、身近な家族の誰かに読んでもらうことが、すごく大事なんだなと思いますね。
──横山家では、お父さんが読む本が決まっていますか?