しまおまほ 子育てのキーは“脱力” 子どもと会話がはずむ“聞き手”の極意とは

エッセイスト・しまおまほインタビュー #2「“脱力”の大切さ」 (3/3) 1ページ目に戻る

エッセイスト:しまお まほ

最短より“寄り道”を

ゲームやYouTubeの存在だけでなく、今の子どもたちは情報の入り方もスピードも、しまおさんが子どものころとは違います。

「子どもたちの知識の入り口はネットであることも多いから、どこから何を知るのか分からないですよね。

この前、小4の息子の口から『バレンシアガ』という単語が出たときは驚きました。本人はトイレ掃除ボランティアのときにもらった便器柄のTシャツを気に入って着てるくせに。

インタビューでも知らない単語や世界を子どもたちからたくさん教えてもらいました。『ボカロP』について苦戦しながら学ぶ私の様子が今回の本にも載っています」(しまおさん)

今の社会は「効率よく最短で成果を出す“タイパ”」が良しとされがちです。最短距離で“正解”や“好きなもの”にたどり着ける時代。だからこそ、しまおさんは“寄り道”の価値を改めて感じています。

「SNSを開けば、アルゴリズムによって『好きそうなコンテンツ』が次々と表示されて、特定の価値観だけが強化されるから、行き着く先は結局みんな同じなんじゃないかってよく言われますよね。興味が枝葉に広がりにくいから、“寄り道”しづらい気がするんです。

自分の経験で言えば、CDを借りに行ったときに、隣の棚の、ちょっと気になったCDも一緒に借りてみるとか。好きなアーティスト目当てで買った雑誌の、“余計な記事”まで覚えていたりとか。そういう“ムダな寄り道”、実は結構楽しかったけどなぁと思うんです。

小中学生のとき、ファンだった米米CLUBが載っていた雑誌を買っていたおかげで他のバンドにもやたら詳しくなったりしました」(しまおさん)

自分の子ども時代とのギャップを語りつつも、しまおさんは一概に「昔のほうがよかった」とは考えていません。

「私がそう育ったからといって、それが正解かは分からない。今の子は今の子で、こうした世界観のなかでおもしろいことを見つけていくのかなとも思います。枝葉の広がり方が違うだけで、その中に新しい楽しみがあるのかもしれないですね」(しまおさん)

脱力して子育てをしたい

書籍では、音楽ユニット「Chocolat & Akito」の息子・王子くんが8歳にして「それこそ」と前置きしてみたり、UAさんの息子・ゆーまくんがママのライブに対して「なんか、歌ってるだけ」と、さらっと言い放ったり……。

どの子どもも、言葉の選び方や親との距離感がそれぞれで、読んでいて思わず笑ってしまうやりとりに満ちています。

「インタビュー中は『私、自分の子どもとより、うまく話せてるじゃん』と感じることもあって、息子ともこの感じでしゃべれたらいいなって思うんです。この脱力した感じを、自分の子育てにももう少し持ち込めたらと考えています」(しまおさん)

そう話すしまおさんにとって、子どもたちへのインタビューは、もはやひとつのライフワーク。「やっぱり子どもと話すのはおもしろいから」と、これからも肩の力を抜きながら、子どもたちとのおしゃべりを続けていきたいと考えているそうです。

子どもから話を聞くコツは、親の「圧」を消して、子どもを1人のおもしろい人間としてフラットに向き合うこと。しまおさんが見つけたそのスタンスは、私たちの子育てもふっと軽くしてくれそうです。


撮影/安田光優(講談社写真映像部)
取材・文/稲葉美映子

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ミュージシャンの親を持つ子どもたちへのインタビューを通して、ミュージシャンの親としての素顔に迫る『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』(著:しまおまほ/リットーミュージック)。人気連載(ウェブメディア『音楽ナタリー』掲載)をまとめ、追加アンケートなど書籍限定コンテンツを追加した。著者によるユーモアあふれるコメント付きイラストも必見。

〈参加アーティスト(親)〉※順不同・敬称略
マキシマム ザ ホルモン・ナヲ(書籍限定新録インタビュー)、UA、在日ファンク・浜野謙太、スチャダラパー・Bose、橋本絵莉子、氣志團・白鳥松竹梅、坂本美雨、Chocolat & Akitoなど19家族。

●書籍詳細はこちら
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3125343008/

●取材協力
音楽ナタリー
https://natalie.mu/music

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しまお まほ

Maho Shimao
エッセイスト

エッセイスト。1978年、東京生まれ。多摩美術大学卒業。在学中に、漫画『女子高生ゴリコ』でデビュー。雑誌や文芸誌でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのレギュラー出演でも活躍。2015年に男児を出産。 『スーベニア』(文藝春秋)、『家族って』(河出書房新社)、『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』(著:しまおまほ/リットーミュージック)など著書多数。2025年10月、漆職人であり漫画家の堀道広氏との共作で、自身初の絵本『さいしょのにんげん』(三輪舎)を上梓。 ▼Instagram▼ https://x.com/mahomahowar ▼Instagram▼ https://www.instagram.com/mahomahowar/

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エッセイスト。1978年、東京生まれ。多摩美術大学卒業。在学中に、漫画『女子高生ゴリコ』でデビュー。雑誌や文芸誌でエッセイや小説を発表するほか、ラジオのレギュラー出演でも活躍。2015年に男児を出産。 『スーベニア』(文藝春秋)、『家族って』(河出書房新社)、『しまおまほの おしえて!ミュージシャンのコドモNOW!』(著:しまおまほ/リットーミュージック)など著書多数。2025年10月、漆職人であり漫画家の堀道広氏との共作で、自身初の絵本『さいしょのにんげん』(三輪舎)を上梓。 ▼Instagram▼ https://x.com/mahomahowar ▼Instagram▼ https://www.instagram.com/mahomahowar/

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。