名医が脳科学でズバリ解決!左利きの子どもの潜在能力の伸ばし方と苦手克服法
脳内科医・加藤俊徳先生に聞く「左利き」の子どもの育て方#2 左利きの子どもの脳の伸ばし方
2022.06.14
脳内科医:加藤 俊徳
『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)の著者である、脳内科医・加藤俊徳先生に聞く左利きの子どもの育て方。
脳科学に裏付けされ、さらにご自身も左利きである加藤先生の話は説得力に満ちています。
第1回では、左利きは右脳と左脳、両方の脳を使うチャンスが多く、知らず知らずのうちに脳を活性化させるので、「直感」や「独創性」を発揮しやすいということを解説していただきました。
第2回では、左利きの子どもの潜在能力を伸ばすためには、どうやって脳を鍛えていけばいいのか。脳科学の視点から、左利きの子どもの才能の伸ばし方と、親のサポートの方法を教えてもらいました。
(全3回の2回目。第1回目はこちら)
自然観察で子どもの脳が発達
――左利きの人は右脳と左脳、両方の脳をバランス良く使うため、脳が活性化し、ひらめきや豊かなアイデアを生むことが多いと教えていただきました。では、こうした左利きの子どもの才能を伸ばすために、親はどのようなことをしてあげればいいのでしょうか。
加藤俊徳先生(以下、加藤先生):脳科学的に見て、左利きの子どもは「直感」や「発想力」は豊かですが、大雑把なところがあります。ですので、まずは「言語力」と「観察力」を伸ばしてあげるとバランスの良い脳が育っていきます。
言語力を身につけるためには、まず、子どもが発する言葉をよく聞いてあげてください。
とはいえ、左利きの子は、イメージで話をすることがよくあるので、親御さんが聞いていて意味がわからない言葉が出てくるときもあると思います。
ただ、利き手に関係なく、子どもが発する言葉には必ず理由が存在します。
子どもが発した言葉の意味を探り、受け取ってあげることが子どもの脳の成長には大切です。特に大切な時期は就学前の6歳くらいまで。この時期の子どもたちの言語学習が脳育にはとても大事になってきます。
次に観察力です。幼少期には外に出て、花や鳥を見て、見たものを真似てみることや、観察ポイントを作って観察してみることをおすすめします。
例えば、1本の桜の木を定点観測するとします。芽がふくらんで花が咲き、散りゆくまでを見ることができますし、同じところを継続的に観察することによって、発想力が刺激されていきます。あらゆる分野で才能を発揮する偉人たちは、情報を取り入れる力が優れていると言われています。
自然のなかで、いろいろなものを見る。そんなことかと思うでしょうが、そんなことが幼少期の脳の発達には必要なのです。
両手を使うことで右脳も左脳も両方活性化する
――左利きは右脳と左脳をバランスよく発達させやすい、ということについて、もう少し詳しく教えてください。
加藤先生:まず人間の脳の働きの話をしましょう。人間の脳の働きは「脳番地」で考えると、とてもわかりやすいのですが、脳番地とは、脳の働きの分類法です。
左脳、右脳合わせておよそ120に分かれている脳を、思考系、感情系、伝達系、運動系、聴覚系、視覚系、理解系、記憶系の8系統のエリアに大別したもの。一つの動きに対して一つの脳番地が対応するわけではなく、行動、行為それぞれに複数の脳番地が連携して働きます。
・思考系脳番地:何かを考えたり判断したりすることに関わる。
・感情系脳番地:感性や社会性、喜怒哀楽、感情を生み出すことに関わる。脳の複数の部位に位置し、運動系の背後に接する感情系脳番地は皮膚感覚を通じて感情が活性化する。
・運動系脳番地:手足や口など、身体を動かすことに関わる。手、足、口、目の動きを司る脳番地は運動系の中で別々に分かれている。
・聴覚系脳番地:耳で聴いた言葉や音の聴覚情報を脳に取り入れることに関わる。
・視覚系脳番地:目で見た映像、読んだ文章など視覚情報を脳に取り入れることに関わる。
・理解系脳番地:目や耳から入ってきたさまざまな情報や言葉、物事を理解、解釈することに関わる。
・記憶系脳番地:覚えたり、思い出したりすることに関わる。
加藤先生:人間の脳も、目や耳、手足のように見た目は左右対象ですが、右脳と左脳には役割分担があり、それぞれの脳は異なる働きをすることがわかっています。
しかし、“運動系脳番地”は、左右対称に同じ働きをしていて、右利きの人は左脳の運動系脳番地が、左利きの人は右脳の運動系脳番地が発達します。
右脳から出た命令は左半身の筋肉を動かし、左脳は右半身の動きをコントロールするため、左手を使うと右脳が、右手を使うと左脳が刺激されるのです。
例えば文字を書く、という行為を考えてみましょう。まず言語処理に関しては、左利き、右利きに関係なく、7割以上の人が左脳で行います。一方で、左手を動かすのは右脳なのです。
子どもの頃から右脳を使う機会の多い左利きは、左脳の成長は右利きよりもゆっくりかもしれませんが、使える脳の範囲が右利きよりも広くなり、これは左利きが自慢できる脳の特徴だと言えます。