【発達障害】の特性を強みに 話題の「葉っぱ切り絵アーティスト」が明かす「子どもの得意」を見つけるヒント
世界が注目するアーティスト「リト@葉っぱ切り絵」が語る 子どもの得意を見つける方法 #前編
2024.09.09
僕が「発達障害」という言葉を知ったのは、30代に入ってから。学生時代までは「ものすごく優秀」とまではいかなくても、取り立てて目立った問題なく過ごしていたはずでした。ところが、就職して、他の人とチームを組んで仕事をするようになった途端に、怒られてばかりの“ダメ人間”になってしまったのです。
2回転職して10年近く会社勤めしても状況が変わらず、弱り果てているときにインターネットでたまたま知ったのがADHD(注意欠陥・多動性障害)という言葉でした。
よく言われることですが、学校という場所では、たとえ能力に凸凹があっても、成績上は平均にならされて総合的に見てもらえるので、問題が表面化されにくい。けれど、人と同調して満遍なくできることが重視される大人の社会では、ADHDの特質である凸凹の激しさは目立ってしまうようでした。
病院を訪ねてみると、案の定「発達障害」という診断。正直なところ「これでようやく会社を辞める口実ができた」と、ホッとした気持ちでした。そして、怒られてばかりだった会社から、そのまま逃げるように退職したのです。
「過集中」という弱みが思わぬ強みに
いったん作業に集中するといつまでも没頭してしまい、マルチタスクができない、というのが、会社員時代に怒られていた理由のひとつ。思い返すと子どものころから僕は、細かい作業を始めると周りが見えなくなってしまうタイプでした。
夕食に出てきた魚の身から小骨を取ったり、カニの身を殻から取り出す作業に没頭しすぎて「ほら、お味噌汁が冷めるわよ!」と母にたしなめられることしばしば。一方で、ピースの多いパズルを完成させるまで食事もとらずに熱中したり、小学校のときに迷路を作るのが流行ったときは、誰よりも細かい迷路を描いて「すごい!」と言われたりしていました。
会社を辞めてしまった僕は、この「何かに没頭すると周りが見えなくなる」という弱みをなんとか「細かい作業に何時間でも集中していられる」という強みとして生かせないか、と試行錯誤。2年ほど、日々さまざまな表現方法に挑戦してみた結果、ようやくたどり着いたのが「葉っぱ切り絵」だったのです。
僕は、とくに絵の勉強をしたことはないので、画材の扱いや色彩の組み合わせ方、遠近法など、アートの専門知識は何ひとつ持っていません。それでも、葉っぱという手のひらサイズの小さなキャンバスに向き合って、ひたすら何時間も緻密な作業をし続けることには向いていたのだと思います。
自分が発達障害であると診断されてから僕がしたのは、徹底的に自分が「何が苦手なのか」ということをリストアップすることでした。そして、この苦手なことこそ自分の強みとして転換させられる可能性があるのではないか、と考え続けたのです。その結果、自分の強みと、多くの人たちに喜んでもらえることが合致した仕事を見つけられたのは、幸運だったと思います。
〜〜〜〜〜〜
後編では、リトさんが自分の「得意」と「苦手」を知るヒントとした意外な手がかりについてお話しいただきます。リトさんに聞く「子どもの得意を見つける方法」連載は全2回。
➡︎後編を読む。※記事公開後にアクセスできます。