知られていないのは、存在していないのと同じ
──子ども時代を振り返って本(『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記』)を書くことには、つらさもあったのではないでしょうか。出版の理由は何ですか。
平岡さん
きょうだい児に関する認知を広げることが目的でした。きょうだい児当事者のケアと同じくらい重要だと考えています。
障害のある子ども、不登校や引きこもりの子どもへの公的な支援は手厚くなっていますが、きょうだい児にはなかなか届いていない現状があります。
実は、きょうだい児を支援するNPOや当事者会は全国にあるのです。きょうだい児が親と過ごせるように障害のある子を預かるサービスや当事者へのカウンセリングなども提供されている。それなのに、利用するきょうだい児は一部にとどまり、成人後に苦しみ続ける方もたくさんいます。
その理由の一つは、「きょうだい児」という存在自体の認知が広まっていないからではないでしょうか。当事者自身にも自覚がなく、社会的にも知られていないのです。
例えば、多くの人は「きょうだい児」という言葉自体を知りません。似た存在である「ヤングケアラー」という言葉を使ってようやく伝わるのが現状です。知られていないのは、存在していないのと同じ。この本をきっかけに、きょうだい児の存在や悩みを多くの人に知ってほしいと考えています。
ありがたいことに、この本を出版して、当事者や周辺の方だけでなく、多くの方から反響がありました。差別や貧困など普遍的なテーマにもつながっているからかもしれません。温かい感想が寄せられ、報われたと感じています。