「きょうだい児」と接する親や教師に知っていてほしいこと

重度知的障害・自閉症・強度行動障害の弟をケアし続けた当事者が語る「きょうだい児の現実」(2)

平岡 葵

著者近影(撮影:講談社児童図書出版部)
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病気や障害など、配慮や支援を必要とするきょうだいをもつ、「きょうだい児」。幼いときからその環境で生きてきたため、「親に十分に甘えられない」「ヤングケアラーになりやすい」などの課題も指摘されています。

また、配慮や支援を必要とする子どもを育てる親の中には、「きょうだいにさびしい思いをさせてしまっているのでは」と自分を責め、悩む人もいるのではないでしょうか。

「もし、目の前に子ども時代の自分がいたら、連れて帰って私が育て直したい。子ども時代に親にしてほしかったこと、全部やってあげたいです」

そう語る平岡葵さんは、障害のある弟をもつきょうだい児当事者。後編では、きょうだい児が安心して育つための秘訣を平岡さんに伺います。

「愛してるよ」「がんばったね」は言葉にしなければ伝わらない

──きょうだい児の親は、どんなことに気をつければよいのでしょうか。

平岡さん
まず大事なのは、愛情を言葉にすることです。忙しくて十分に関わる時間は取れないかもしれませんが、その分「あなたのことが好き」という気持ちはちゃんと口に出して伝えてほしいと思います。

また、きょうだい児が一生懸命やったことを「できて当たり前」と考えないことも大切。気づき、感謝すること、めちゃくちゃ褒めて、時にはちゃんと𠮟ることを心がけてほしいです。一人の時間やパーソナルスペースも作ってあげてください。

小学生時代の著者を支えた2人の教師(『きょうだい児 ドタバタ サバイバル戦記』より)

病気や障害のあるお子さんを育てるのは、大変だと思います。でも、きょうだい児を親の愚痴の聞き役にはしないでほしい。親の感情のバランスをとるための「バランサー」にされると、心の逃げ場がなくなってしまいます。

また、お子さんは自分からきょうだいの世話をしようとするかもしれません。しかし、小さいころは親に褒められたい一心でそうならざるを得ないのです。無理を続け、思春期あたりから心身のバランスを崩したり、親子関係に影響が出たりするケースもあります。

我が子といえど、「血のつながった他人」。そんな認識で子どもの人格を尊重しようと心がけると良いのではないでしょうか。

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