子どもに大切な「クリティカル・シンキング」 中学受験〜就職活動でも活きる「考える力と伝える力の総合的能力」を育む方法を専門家が伝授

子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」 #1

子どものクリティカル・シンキング力を育むには何をすればいい?

どんなスキルも、一朝一夕で身につけられるものではありません。では、クリティカル・シンキングの場合、どんな方法で何を積み重ねていけばいいのでしょうか。

「子どものクリティカル・シンキング力をつけるのに一番大切なことは、親御さんが子どもの話を否定しないことです。これが出発点であり、最大のポイントです。

相手がたとえ我が子でも一人の人間として尊重し、対等な関係で向き合って、まずはすべてを受け入れてください」(狩野先生)

クリティカル・シンキング力をつける最初の一歩にして、最大のポイントは「子どもの話を否定しないこと」。  写真:milatas/イメージマート
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子どものとんでもない話も受けとめられる鉄板ワード

クリティカル・シンキングの力を育む最大のポイントは「子どもの話を否定しないこと」ですが、子どもは親が好ましいと思わないことも平気でいってくることがあります。しかし、狩野先生には、困ったときに使える鉄板ワードがあるそう。

子どもの話は、『へ~』で受けとめるといいでしょう。とんでもないことをいってきたときも、間違ったことをいってきたときも、まずは『へ~』と反応してみてください。

たとえば、『将来、何になりたいの?』の質問に、子どもから『ユーチューバー!』と返答があったとします。親御さんの心の中では(え? まさか!?)と思うかもしれませんが、まずは『へ~』といって、子どもの返答に関心があることを伝えるんです。

また、ここで重要なのは、噓をつかないことです。

親御さんがユーチューバーに賛同できないのに、『ユーチューバーいいね!』と返すのはNGです。いくら子どもの話を否定しないことがクリティカル・シンキング力を育む基本といっても、偽りの返答をしてはいけません」(狩野先生)

狩野先生の場合、先生自身はユーチューバーの良さがあまりわからないので、まずは「へ~、ユーチューバーね~、なるほどね~」と受けとめたあとで、「ところで私、ユーチューバーのことがわからないから、何がそんなにYouTubeってすごいのか教えてくれる?」と、子どもに質問をして会話を発展させるといいます。

大人だから、親だからって等身大以上のことをしてはダメ!

「前述のユーチューバーの話では、私は『何がそんなにYouTubeってすごいのか教えてくれる?』と、子どもに質問すると話しましたが、もし親御さんが私と同じようにユーチューバーの良さがわからないのなら、素直に我が子に教えてもらいましょう。

子どもにクリティカル・シンキングを育むうえでは、親たるものは偉くなければいけないとか、正しくなければいけないなんて考えは捨ててください

わからなければ、『あ、それ、お母さん(お父さん)わからないな~』と素直な態度を子どもに返してほしいのです。きっと我が子は一生懸命に考えて、親御さんに自分の意見や知っていることを伝えようとするはずです」(狩野先生)

クリティカル・シンキングは、どんなに親子間が良好な家庭でも、子どもの学年が上でも、親御さんが子どもの話を受けとめるところからスタートします。そして、対話を発展させることで、子どもの「考える力」と「伝える力」を育んでいきます。

子どもの話に「へ~」で反応することは、どの家庭でもできることです。まずは親子の普段の会話の中で、子どもの話を受けとめることから始めてみるといいでしょう。

連載第2回は、クリティカル・シンキングを育む際に、親御さんが口にしてはいけないNGワードなどを紹介します。

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◆狩野 みき(かの みき)
「自分で考える力」イニシアティブ、THINK-AID主宰。
聖心女子学院初・中等科に学び、中学高校時代をドイツのブリティッシュ・スクールにて過ごす。慶應義塾大学法学部卒、慶應義塾大学大学院博士課程修了(英文学)。30年大学等で「考える力・伝える力」と英語を教える。慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師、子どもの考える力教育推進委員会の代表も務める。著書に『世界のエリートが学んできた「自分で考える力」の授業』『世界のエリートが学んできた 自分の考えを「伝える力」の授業』(ともに日本実業出版社)、『「自分で考える力」が育つ 親子の対話術』(朝日新聞出版)などがある。2012年、TEDxTokyo Teachersにて、日本の子どもたちにもっと考える力を、という趣旨のTEDトーク“It’s Thinking Time”(英文)を披露し好評を博した。2児の母。2025年2月、小学生対象のクリティカル・シンキングのプログラムが15周年を迎える。

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取材・文/梶原知恵

【子どもの考える力と伝える力を育む「クリティカル・シンキング」】の連載は、全3回。
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かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。