ひだゆうさんは、現役の発達相談員さんです。日々、さまざまな相談を受けているそうですが、なかでもアドバイスがむずかしいと感じるのが「言葉が遅い」というもの。
ひださんは、「言葉が遅いのは、親の責任ではない」といいます。では、親は、どうしたらいいのでしょうか。
こんにちは。ひだ ゆう です。
ぼくは、現在、ある政令指定都市で、2歳から小学校入学前のお子さんを対象に、「発達相談」を15年ほど担当しています。
「発達相談」とは、精神発達の状況を含め、「うちの子、いつもトイレのドアを開けっぱなしで困ります!」「幼稚園でお友だちがなかなかできず心配」「トイレトレーニングが進まないなぁ」等々、日々の子育ての悩みを保護者と一緒に考える場です。
子どもが産まれ、一年もたつと、意味のある言葉(ママ、パパなどの単語)を話しはじめます。今まで、されるがままだった赤ちゃんと簡単なコミュニケーションがとれるようになると、うれしいものですよね。
しかし、言葉の発達は個人差が大きく、発達の速度が見えやすいものであり、そのため、ぼくが日々行う発達相談へも、言葉の心配をきっかけに来られる方は非常に多いです。
育児書に書かれてあるような言葉を発しなかったり、ほかの子にくらべて言葉数が少なかったりすると、「うちの子大丈夫かしら」と不安になることがあるかもしれません。
この記事では、そんな時にどう考え、どう対応したら良いか、のお悩みにお答えします。
言葉が遅いのは親の責任ではない
相談事例①
「2歳を過ぎたけれど言葉が少なく、ほかの子が上手にお話をしているのを聞くと、内心あせります。毎日寝る前に絵本を3冊読み聞かせをして、日中もできるだけ言葉がけを多くしてきました。
でも、先日保健センターで言葉の遅れを相談すると、『お母さん、言葉がけ多くしてくださいね』のアドバイス。
こんなにがんばっているのに、まだがんばりが足りないのでしょうか?
そして、言葉が遅いのは、やっぱり私のせいですか……?」
乳幼児健診など相談機関で言葉の心配を相談すると、「言葉がけを多くしてください」「実況中継のように話しかけてください」などとアドバイスされることがあります。
それで、今までの自分の関わり方が足りなかったのではないか、と悩まれる方もいます。実は、ぼくも相談員になりたての頃には、そのようなアドバイスを「お決まりのように」伝えていたことがあります。
しかし、経験を重ねていくと、言葉の発達を心配されているほとんどの方は、もうすでに、ずっと以前から十分過ぎるほど言葉がけを多くしていることに気が付きました。
同じ親の兄弟姉妹でも、言葉の発達のスピードは違います。
また、親の中には当然、多弁な方もいれば、言葉数の少ない方もいます。
言葉数の少ない親の子どもは、言葉の発達が遅れることが多いかというと、そんなことはなく、そういう研究結果も聞いたことはありません。
極端な虐待事例を除けば、言葉の発達は親側の問題ではなく、子ども側の都合です。
その子は、周囲の大人からの言葉の受け取り方が、ゆっくりだったのかもしれません。
ですから、相談機関での「言葉がけを多く」というアドバイスは、「親の言葉がけが少ないから、もっと多く」ではなく、「子どもの受け取り方がゆっくりかもしれないから、今まで通りあきらめずに言葉がけを続けてくださいね」という意味だと思ってください。
子どもへの言葉のかけ方
相談事例②
「はじめての子です。子どもへの言葉がけが大事って言われているのですが、なんて言葉をかけたらいいのか、さっぱりわかりません。
もともと口下手ですし、いつもいつも子どもへの言葉がけを考えながら話をするのは苦痛です」
特にはじめての子の場合、子どもに伝わる言葉で、子どもが楽しいと感じる会話をすることは簡単ではありません。これまでは、大人の世界で大人同士の会話が主でしたから、無理もありません。
ぼくは元保育者ですが、教育実習ではじめて保育園に行ったとき、子どもとの会話が続かず苦戦しました。
子どもへの言葉がけが苦手な方への対処方法をお伝えします。