偏食、食べムラ、遊び食べ…小児科医が教える「自分で食べる幼児の育て方」

小児科医・江田明日香先生「ごはん外来へようこそ」#4~幼児の食事編~

小児科医:江田 明日香

食事の悩みは誰に相談する?

「ごはん外来」を受診するべき判断の目安として、「子ども自身が食事に関して困っているのかどうかを見てほしい」と江田先生は言います。

「食べられなくて辛い思いをしていたり、食事の時間が嫌で仕方なさそうだったり、体重がしばらく増えていなかったり、など。子どもが困っていれば、早めに支援をするべきだと考えています。

でも今は、コロナ禍でお母さんたちの閉塞(へいそく)感もすごいだろうなと思います。一時期は離乳食講座や保健師さんの相談窓口もクローズしてしまって、悩みを相談する場所がないのではないでしょうか」(江田先生)

そこで、このコロナ禍をきっかけにして、全国で悩む親御さんたちのためにSNS発信を始めた江田先生。「ごはん外来」で伝えている離乳食講座や、実際に寄せられたQ&Aにお答えするライブを撮影。「誰でも視聴できるので、食に悩む方はぜひ一度見てほしい」と言います。

「私たちごはん外来での支援によって、病的な偏食や摂食障害になる方を一人でも減らしていくのが個人的な目標なんですよ」と江田先生。
写真:日下部真紀

手づかみ食べメソッドが教える 子どもとの関わり方

江田先生が離乳食期に勧めている食べ方の「手づかみ食べ」ですが、食べるスキルを上げる目的だけでなく、親子にとって子育ての転機となるような気づきが多くあると言います。加えて、「もう子どもの離乳食は終わった」という親子にも参考になることがたくさんあるそうです。

「手づかみ食べは、子ども主導の食事なんですね。この『子ども主導である』ということが、子育てにとってもっと重んじられるべきことなのではないでしょうか」(江田先生)

ごはんクラスに通って手づかみ食べを実践した親子たちの話をするとき、先生はとても嬉しそう! 特に、お母さんたちの表情の変化に見応えがあると笑います。

「手づかみ食べによって、お母さんたちは、『〜せねば』『〜であるべき』から『見守る』『やらせてみる』に切り替わります。忍耐力も試されますが、そこを乗り越えると感動があるんですよ。子どもはどんどん上手に食べるようになるし、食べる様子が可愛くて、親子共に毎日の食事がとても楽しそうです」(江田先生)

そんなごはんクラス卒業生のお母さんたちにお願いしているのが、我が子の手づかみ食べレポートを綴った寄せ書き。手軽に楽しく手づかみ食べするヒントが詰め込まれています。

「これ見てください! 『うちの子、ベランダで育てているピーマンをかじっていたんですよ~』と、とってもほのぼのとしてますよね。離乳食期でピーマンを丸かじりするお子さんも素晴らしいし、それを写真に撮って観察できるお母さんの心の余裕も素敵ですよね。ごはんクラスの卒業生たちを見ていると、みんな本当にたくましく育っています」(江田先生)

クリニックには先生のもとで手づかみ食べを実践した親子の寄せ書き帳があり、情報がいっぱい! 「お母さんたちの間で、どんどん正しい離乳食情報がアップロードされていってほしいですね」(江田先生)。
写真:日下部真紀

聞けば聞くほど、手づかみ食べは奥が深い! 先生は、手づかみ食べのメソッドがたくさんの親たちに広まることを願っていると言います。「生まれ変わったら厚労省に勤めて、大人主導で書かれている日本の離乳食マニュアルを私が変えたい!」と笑って話してくれました。

食に悩める親子の通訳者になりたい

たくさんのお母さんたちの食にまつわる悩みを聞いてきて、それらの悩みの根本のほとんどが、親子の食についての意志や意見の相違にあると感じます。

「こうあるべき、こうしないといけないんじゃないかという親側の意見と、いやいや自分でやりたい、ああしたい、こうしたいという子どもの意志が食い違うことによって、食のバトルが生まれる。私はそういった親子の通訳者をしていかないと、と思っています。

家族との食卓は、いつだって楽しい時間であってほしい。すべての子どもたちが、食事と健康的な関わりを持ったまま大人になってくれたら嬉しいですね」(江田先生)

江田先生のクリニックは、童話の世界に迷い込んだような可愛らしい雰囲気です。授乳室の扉のアーチや、芝生のようなフロアマット、小さなおうちのような診察室の入り口、ところどころに散らばる小さなかるがもたちの足跡……、まるで絵本のような世界観。そして院内にもたくさんの絵本が置かれています。

そんな絵本の中から先生が勧める絵本は、季節の味を目で見て楽しく知ることができる『くだもの』(作:平山和子/福音館書店)、鏡の仕掛けが子どもたちに大人気の『きょうのおやつは』(作:わたなべちなつ/福音館書店)、そしてご自身が小さな時から大好きという絵本作家・かこさとし先生の『からすのパンやさん』(作: かこさとし/偕成社)の3冊でした。

多くの悩める親子を診て、寄り添い続けている、江田先生。うかがったお話をヒントに、親子ともども食事が幸せな時間になるように心がけたいですね。

食事の時間以外でも、楽しく食と向き合ってほしい。先生がおすすめしてくれたのは、読むだけでおなかが空いてくる、おいしそうな3冊!
写真:日下部真紀

取材・文/遠藤るりこ

参考文献/「自分で食べる!」が食べる力を育てる  赤ちゃん主導の離乳(BLW)入門(ジル・ラプレイ 著/原書房)

※江田明日香先生インタビューは全4回。
#1 離乳食の悩み編
#2 手づかみ食べ入門編
#3 手づかみ食べ実践編

22 件
えだ あすか

江田 明日香

小児科医

小児科専門医、国際認定ラクテーション・コンサルタント。2004年 杏林大学卒業後、藤沢市民病院にて臨床研修。藤沢市民病院(小児科)や、聖隷横浜病院(小児科)の勤務を経て、子育てをしながら複数の小児科クリニックに勤務。2015年、自身のクリニック「かるがも藤沢クリニック」の院長となる。 開院以来ずっと開いてきた親子クラスに、離乳食相談窓口となる「ごはんクラス」を立ち上げ、さらに2018年に個別支援を行うための「ごはん外来」を設立。2002年頃にイギリスで提唱された「BLW= Baby-Led Weaning」の理念を基礎とした「手づかみ食べ」を推奨している。自身も12歳(2009年生まれ)と10歳(2011年生まれ)の男の子を育てるお母さん。最近の趣味は、和菓子を食べること、珍しい植物を育てること

小児科専門医、国際認定ラクテーション・コンサルタント。2004年 杏林大学卒業後、藤沢市民病院にて臨床研修。藤沢市民病院(小児科)や、聖隷横浜病院(小児科)の勤務を経て、子育てをしながら複数の小児科クリニックに勤務。2015年、自身のクリニック「かるがも藤沢クリニック」の院長となる。 開院以来ずっと開いてきた親子クラスに、離乳食相談窓口となる「ごはんクラス」を立ち上げ、さらに2018年に個別支援を行うための「ごはん外来」を設立。2002年頃にイギリスで提唱された「BLW= Baby-Led Weaning」の理念を基礎とした「手づかみ食べ」を推奨している。自身も12歳(2009年生まれ)と10歳(2011年生まれ)の男の子を育てるお母さん。最近の趣味は、和菓子を食べること、珍しい植物を育てること

えんどう るりこ

遠藤 るりこ

ライター

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe

ライター/編集者。東京都世田谷区在住、三兄弟の母。子育てメディアにて、妊娠・出産・子育て・子どもを取り巻く社会問題についての取材・執筆を行っている。歌人・河野裕子さんの「しつかりと 飯を食はせて 陽にあてし ふとんにくるみて寝かす仕合せ」という一首が、子育てのモットー。 https://lit.link/ruricoe