味覚の基礎をつくる時期といわれる幼少期。3歳頃までの味の経験が、その後の人生の「味の嗜好」を左右するといわれているため、離乳期・幼児期の食事には特に気を配りたいもの。
そこで、実際にどのような点に気を付ければいいのかを、とけいじ千絵先生に聞いてみました。第2回では離乳期に関する食事づくりの方法をご紹介します。(全4回の2回目。#1を読む)
離乳期は味覚の幅をグンと広げられる黄金期
まずは、「離乳期」と「幼児期」に味覚がどのように変化していくか、簡単に説明します(※1)。
母乳・ミルクを卒業し、離乳食に変わる離乳期(5ヵ月〜1歳半頃)になると、敏感だった味覚が落ち着き、より多くの味を受け入れられるようになります。その後、幼児食に移る幼児期(1歳半〜6歳頃)には、五味(※2)をしっかりと区別できるようになり、好き嫌いが激しくなります。しかしこの好き嫌いも、「学童期」(6歳〜12歳)に入ると減少し、7〜8歳頃に味の嗜好が定着します。
※1 本記事における期間名の目安。離乳期:5ヵ月~1歳半頃、幼児期:1歳半~6歳頃、学童期:6歳〜12歳。
※2 五味:「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」の5つの基本味。
好き嫌いが強く出てくる前の離乳期は、ズバリ、味覚形成の“黄金期”です。比較的いろいろな味を受け入れてくれる子が多いので、味覚の幅を広げるチャンスなのです。
ただし、離乳期・幼児期を通して言えることですが、「苦味」「酸味」は、まだ嫌がる傾向にあります。これは、本能的に「苦い味には毒がある」「酸っぱい味のものは腐っている。あるいは熟していない」ととらえるからです。
また、動物が本能的に持つ「新奇恐怖」が強い傾向にあります。新奇恐怖とは、新しいものに対する警戒心・恐怖心のこと。食べたことのないものや見慣れないものを嫌がることが多いのは、この本能が働いているからなんですね。
この2つとも、生存本能によるものなので、小さい頃ほど強い傾向にあります。しかし、これらも「経験すること」で、克服していくことができますよ。ですから、離乳期・幼少期にいろいろな味を経験していくことが何より大切です。
次からは、実際にどのような食事をとったら良いのかを解説していきます。
離乳期に気をつけたい食事づくりのコツ3つ
離乳期・幼児期全体を通して言えることですが、繊細な味を感じとるには、薄味が基本です。そのうえで、ポイントを3つ紹介しましょう。
1:いろいろな食材を経験させる
食材本来の味を感じとれるようになるためには、何よりもまず「経験」です。いろいろな食材を食べることで、味の引き出しができて、豊かで繊細な味覚が育ちます。なお、この時期は、調味料はごく少量にして、素材本来の味を感じられるようにしてくださいね。
ただし、先に説明したように、なんでも食べてくれる時期とはいえ、まだ苦いものや酸っぱいものは嫌がる傾向にあります。しかし、味を経験するという意味でチャレンジしてみてください。ひと口食べれば合格。吐き出しても構いません。
また、離乳食だけを別で作る方もいますが、毎回続けるのは大変ですよね。そのため、私は大人の食事の「取り分け」もおすすめしています。大人も食べる料理を、作る過程で、離乳食用に味付けや切り方を変えることです。
ほうれん草のお浸しであれば、ゆで時間を長めにする、具材を細かく切る、水を足して味を薄めにするだけでOKです。
2:旬の食材を使う
素材本来の味を楽しんでもらうという点においては、旬の食材を選ぶこともとても大切です。なぜなら、旬の食材は、その野菜が本来持つ味が強いほか、栄養価も高いからです。
ある研究(※3 自然食ニュース)によると、夏に収穫したほうれん草と、旬の冬の時期に収穫したほうれん草では、栄養価が8倍も違いました。旬のものは値段も安価ですし、良いことづくしです。
※3 出典:『自然食ニュース』
3:出汁を使って「うま味」を学習させる
日本の伝統的なうま味である出汁の味。小さな頃から意識的に学習させることで、滋味深い味の良さがわかるようになります。出汁を作るときには、かつお節と昆布の2つを使うのがおすすめ。この2つを掛け合わせることで、うまみの感じ方が7倍にもなるといわれているためです。
「出汁をとるのって大変……」と思うかもしれませんが、お茶ポットに出汁パックと水を入れて一晩置いておけばOK。それを製氷皿に注ぎ、冷凍しておきましょう。使う時に、必要な分だけ取り出して、うどんの汁にしたり、ポタージュに入れたりするだけなので、とても簡単です。