「わかんない、できない…」プチ反抗期の小学生 講師が普段は見せない「手本」をあえて見せた理由
「こどもアトリエ みかづき」の親子で楽しむアート 第4回「光をたのしむ透かし切り絵」
2024.03.11
幼稚園から中学生の子どもたちを対象とした少人数制の造形絵画教室「こどもアトリエ みかづき」。この教室(アトリエ)では、のびのびと創作できる空間を子どもたちに提供し、自由で個性あふれる創作活動をサポートしています。このアトリエで自分の感性に気づくことで、子どもたちの潜在能力が花開き、想像力という才能の実が大きく育っていくのです。
そんな「みかづき」の主宰者である、デザイナーのあじとみあつこさんが、子どもの個性を伸ばすアートワークを紹介してくれます。親子でも楽しめる独創的なアートワークを、ぜひ楽しんでみてください。
お手本のない教室
こんにちは。『こどもアトリエ みかづき』のあじとみあつこです。
ある技術を子どもに習得させようとした場合、一般的に、指導者はまず“お手本”を示すことが多いでしょう。子どもにとっても視覚的にわかりやすく、最短で習得できる可能性は大きいです。
アートスクールでも、描き方の見本や作品例を示してくれる教室は多く、すぐに見違えるような大人っぽい絵を描くようになった!……なんて話を耳にします。
でも『こどもアトリエ みかづき』には、お手本がありません。
課題とその材料が用意してあるだけです。課題は、気候や年齢を考慮した、その日の制作テーマのようなもの。
「ペン画 ~空想の乗りもの~」、「クレパス+水彩 ~春を描こう~」など、個性の出る自由度の高い内容です。もしもお手本を用意したら──当然、影響を受けて、アイデアも描き方も似たような作品が並んでしまうでしょう。
お手本を出さない理由は、“想像の芽を摘みたくないから”です。
エピソード「私が手本を見せるとき」
アトリエにはお手本となる制作見本がないので、子どもたちは、私の説明を聞いてその日の制作課題を理解しなくてはなりません。
幼児~低学年のクラスでは、入室するなり「早くやらせて!」が強いので、そもそも長い説明が必要な課題は用意しません。用意した画材で楽しんでもらい、想定外の作品がズラリと並べば大成功です。
しかし小学生のクラスでは、大切にしたい目的があるため、手順や注意点の多い課題もしばしば。見本がないのですから、私の説明をよく聞いて想像し、自分なりのアイデアを出し、さらに工夫して制作しなくてはならない……なかなかの難易度です。
しかも、私の説明はとても下手でわかりづらい。
Aちゃん 「えぇ? なになに? どういうこと?」 私「……ん? わかんなかった?笑」
Bちゃん 「こういうことですか?」 私「そーそー! そういうことー!」
Cちゃん 「こうやってもいい?」 私「んー(目的から外れないかを考え中)……良い!」
実際に、説明のあとの質問時間のほうがはるかに長いです。
開講当初は、伝わりやすい説明を組み立て、ホワイトボードに書いたりと入念な準備をしていた時期もありましたが、早い段階でやめてしまいました。なぜかの答えは……“伝わりすぎてつまらないから”でしょうか。
説明で抜けているところはAちゃんのような低学年のおかげで埋まっていきますし、要約や発展の補足はBちゃんやCちゃんのような高学年がしてくれます。このディスカッションが私は楽しくて。いい加減な説明くらいがちょうどいいと、都合よく考えるようになりました。子どもたちが目的の範囲内で自由に解釈することで、作品のバリエーションも広がっていく実感があります。
ただ、少し気をつけなければならないのは、中学年あたりです。