スタッフとキャストと協力しながら「自分しか見えていない絵」を作り上げた
ーー今回の映画では、AIをつかったVFXを使用されたそうですが、AIが担った役割を教えてください。
今回の映画でいうと、AIは「優秀な助手」という感じでした。映像を合成するために、撮影したものの輪郭線を切り抜く作業を、AIがやってくれます。ミスがあっても「ここ塗り忘れているよ」と教えてやると、どんどん間違えないようになっていく。地味で面倒な仕事をコツコツやってくれるから、そのぶん人間はクリエイティブに移行できる。クオリティや効率が上がったと思います。
AIは忍び寄るように、僕らの仕事に入り込んでいると感じています。もしかしたらAIって、映画にも登場する「身代わりおばけ」のことかもしれない! 面倒なことはやってくれるけど、いつの間にか存在を乗っ取られてしまう。シナリオづくりもAIに取られてしまわないように、気をつけなくてはいけませんね(笑)。
ーー今回の撮影で、苦労されたこと、やりがいのあったことを教えてください。
VFXで表現する敵と、子どもたちが戦うシーンが多かったので、そこは苦労しましたね。撮影時は、見えない相手と戦わなければいけない。特に「ジズリ」と戦うシーンは、全ての方向にグリーンバックをしいていたから、子どもたちは訳がわからなかったと思います(笑)。
助かったのは、スタッフが大きなスピーカーを用意してくれたこと。天井が崩れる音や、エコーをつけた「ジズリ」の声を流してくれたから、子どもたちも少しはイメージしやすかったんじゃないかな。
あとは僕は「こんなでかい奴が、ドドドドって音がして、ダダーンってあらわれるから、驚いて!」って説明するしかない。「監督、擬音が多いですね」キャストに突っ込まれますけど、僕にしか最終的な絵が見えていないから、どうにかキャストについてきてもらえるように、一生懸命説明するようにしています。
山崎貴 profile
映画監督。阿佐ヶ谷美術学校卒業後、1986年に株式会社白組に入社。2000年「ジュブナイル」で監督デビュー。CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。「ALWAYS 三丁目の夕日」(05)では、心温まる人情や活気、空気感を持つ昭和の街並みをVFXで表現し話題となり、第29回アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞など12部門を受賞。「永遠の0」(13)、「STAND BY ME ドラえもん」(14)は、それぞれ第38回アカデミー賞最優秀作品賞ほか8部門、最優秀アニメーション作品賞を受賞。日本を代表する映画監督の一人として数えられる。
撮影/嶋田礼奈
取材・文/山口真央
映画「ゴーストブック おばけずかん」は7月22日から公開!
図書館で借りられないと大人気の童話「おばけずかん」シリーズが実写映画化! 手がけるのは「ALWAYS 三丁目の夕日」や「DESTINY 鎌倉ものがたり」の山崎貴監督。どんな願いも叶う禁断の書「おばけずかん」を手にした子どもたちの冒険物語を、美しいVFXの映像で描きます。
(「ゴーストブック おばけずかん」7月22日(金)全国東宝系公開。【出演】城桧吏、柴崎楓雅、サニーマックレンドン、吉村文香、神木隆之介、新垣結衣。【監督・脚本・VFX・ストーリー原案・キャラクターデザイン】山崎 貴「ALWAYS 三丁目の夕日」「DESTINY 鎌倉ものがたり」)
山口 真央
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。
幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。