山崎貴監督のペットがおばけに変身!? 「ゴーストブック おばけずかん」制作秘話

映画「ゴーストブック おばけずかん」で監督をつとめたのは、「ALWAYS 三丁目の夕日」や「永遠の０」を手がけたことで知られている山崎貴監督。

今回の映画では、監督・脚本だけでなく、VFX映像の総指揮や、おばけのキャラクターデザインなども担当されています。

累計発行部数が150万部を突破（2022年７月現在）している「おばけずかん」シリーズは、どのような経緯で映画化することになったのでしょうか。

また、ご自身でデザインされたおばけの誕生秘密や、 最新のVFX撮影の裏話を伺いました。

――童話「おばけずかん」シリーズを原作にして、映画をつくることになったきっかけを教えてください。

今回の映画を担当している山田兼司プロデューサーが、娘さんから「人気すぎて図書館で借りられない本がある」と聞いて「おばけずかん」シリーズを知り、僕に映画化の話を持ちかけてくれました。さっそく読んでみたら、これは子ども心をつかむ内容だなと。おばけに出会ったときの対処法が描かれていることが、ユニークでおもしろいと感じました。

僕は20年ほど前に、子どもを主人公にした「ジュブナイル」という作品をつくっていて、また子どもが主役の映画を撮りたいなと考えていたところでした。しかも原作の「おばけずかん」シリーズは１つ１つが短い物語なので、より取り見取りにおばけを選んで、自由にお話をつくれる。こんないい提案はない、と感じました。

――監督が自由におばけを選んだのですね！　どのようにして選んだのでしょうか。

「おばけずかん」シリーズから映画に登場させたおばけは、自分にはない発想から生まれているものや、自分の子ども時代の恐怖とリンクしたものを選んでいます。

例えば「百目」は、出会った時の対処法が「100人やられたあとに行けば、もう目がないから大丈夫」とお話に描かれていて、その言葉が魂に響きました。100人やられても「大丈夫」と言い切ってしまうのは、素晴らしい「小学生脳」ですよね。自分にはできない発想だったので、選ばせていただきました。

「旅する雲梯」は、雲梯が僕にとって恐ろしい存在だったので採用しました。「旅する雲梯」を握ったら最後、手から雲梯が離れなくなって、あの世まで連れて行かれてしまう。子どもの頃は雲梯が苦手だったので、ずっと雲梯にぶら下がっていなきゃいけないと考えただけで、ドキドキしてしまいましたね（笑）。

ーー映画に登場する「図鑑坊」と「ジズリ」は、映画オリジナルのキャラクターですが、できあがった経緯や、こだわったところを教えてください。

どちらのキャラクターも、僕が何パターンかスケッチするところから、みんなに相談して少しずつ形にしていきました。「図鑑坊」は、僕がハリネズミと猫を飼っているので、それぞれの魅力的なところを取り入れました。

どちらも可愛いだけじゃなく、全然、媚びを売ってこないんです。ハリネズミなんか、餌をあげるときにシャーッと威嚇されちゃうことがある（笑）。「図鑑坊」がとても気まぐれな性格なのは、猫やハリネズミとの距離感が生かされているかもしれないです。

「ジズリ」のデザインは、最初は綺麗な龍をスケッチしていたんですけど、プロデューサーたちに「ただの龍じゃおもしろくない」と言われてしまって（笑）。地面をあやつる設定から「ジズリ」という名前は先にあったので、そこからビジュアルを想像していきました。

こだわったのは、気持ち悪いけど、かっこいいビジュアル。ラスボスなので、主人公が見た瞬間に「無理！」となるくらいゴージャスな見た目にしたかった。地面を「ズズズズ……」と這う動きで怖さをあらわしつつ、たくさんトゲをつけて派手にしました。

最初のイメージをつくったあとは、専門的なCGが得意な人に渡して、自由に育ててもらいます。自分より上手い人にお願いしないと、自分でつくりたくなっちゃうから（笑）。「図鑑坊」の着物は、CGで表現するのにとても苦労していました。「図鑑坊」に合わせてなめらかに動く布の様子を、ぜひ大画面でたしかめて欲しいです。