通常学級or特別支援学級?発達が気になる子の小学校について専門医が伝授
信州大学医学部・本田秀夫教授#5~発達障害と小学校生活~
2022.07.29
児童精神科医・信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授:本田 秀夫
学校生活で気をつけたいことは?
小学校に入学した後は、運動会や修学旅行などの大きな行事から、クラス替えや席替え、時間割りの変更など日々のちょっとしたイベントまで、さまざまな「変化」が待っています。
こうした変化が、発達障害の特性をもつ子どもにとっては障壁になることがあるといいます。親はどう準備し、対応すればよいのでしょうか。
「発達障害の特性をもっている子どもの中には、特定の行動パターンや環境などに強くこだわったり、予定の変更など見通しの立たない出来事に対して強く不安を感じやすい子が多く見られます。つまり、変化が苦手なんです。
入学前であれば、学校にどんどん行って、先生と一緒に校内を見学したり、授業の様子を見せてもらったりするといいですよ。見通しがつけば、不安を軽減させることができます」(清水先生)
「変化に対する考え方の基本は、見通しを持てるかどうかと、楽しめるかどうか、です。
変化があっても、本人にとって楽しいものであればよろこんで食いつくけど、楽しくないなら警戒します。ひと口に変化と言っても、まずは本人にとって楽しそうか否かを考えましょう。
あとは、ハプニングが苦手な子どもも多いので、ある程度、予想を立てながらその場に参加できるよう、事前に情報を与えておくことも大切です。
新年度や夏休み明け早々に時間割りが変わったり、運動会の練習があったりすると、崩れやすい子が多いですね。
運動会の練習だって全部みんなと同じようにやらなくてもいいと思うし、『この係をお願いしたい』などと最初から明確な役割を与えられると張り切れる子もいます。
夏休み明けに宿題が終わってなくて行きたがらない場合は『終わってなくても来ていいよ』と先生に言ってもらうのも手です。
きっちりやらなきゃと思うようなタイプの子は親が言ってもダメなので、学校の先生から言ってもらうようにしましょう。先生と相談して宿題を減らしてもらったり、とにかく学校と協力することが大切です」(本田先生)
発達が気になる子どもの子育てをサポートするアプリ「TOIRO(トイロ)」の話を皮切りに、5回にわたり発達障害についてお話を伺ってきました。
「発達障害は少数派の種族のようなものであって、多数派(定型発達)の人と優劣の差があるわけではない」と本田先生は話します。
この言葉からは、多数派主導の社会で、無理をしたときに、生きづらさや、ひいては「障害」が生まれるという考え方もできるかもしれません。
発達障害の特性をもつ子どもたちができるだけ無理をしなくていいように、苦しむことがないように、違いを寛容し、多様性を尊重し合う社会をどう作っていくのかについても、考えさせられました。
子どもが多数派からなる「平均」からズレていても、親は平均に近づけようと頑張るのではなく、どうしたらその子らしく、のびのびと生きていけるかを考える。
時には「TOIRO」を活用しながら、子育ての方法を工夫したり、新しい視点を組み込んでみたりと、考え方や発想を少しずつ変化させながら、その道筋を探していきたいものです。
本田 秀夫(ほんだ・ひでお)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。精神科医。医学博士。30年以上、発達障害の専門医として発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、各ライフステージにわたる臨床経験をもつ。
清水亜矢子(しみず・あやこ)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室特任助教。小児科医師。専門は小児神経。丸子中央病院、信州上田医療センターの小児科にて発達障害診療に従事している。
永春幸子(ながはる・さちこ)
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室特任助教。小児科医師。専門は小児神経。専業主婦から信州大学医学部に入学し、40代で小児科医に。総合病院で小児科一般診療を経験後、現職。
取材・文/稲葉美映子
稲葉 美映子
フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。
フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。
本田 秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。精神科医。医学博士。 東京大学医学部卒業後、同附属病院、横浜市総合リハビリテーションセンターなどを経て、2018年より現職。30年以上、発達障害の専門医として発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、各ライフステージにわたる臨床経験をもつ。 『子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと』(SB新書)、『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』(講談社)など著書多数。
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授・同附属病院子どものこころ診療部部長。精神科医。医学博士。 東京大学医学部卒業後、同附属病院、横浜市総合リハビリテーションセンターなどを経て、2018年より現職。30年以上、発達障害の専門医として発達障害の早期発見、早期介入から成人期の支援まで、各ライフステージにわたる臨床経験をもつ。 『子どもの発達障害 子育てで大切なこと、やってはいけないこと』(SB新書)、『ひとりひとりの個性を大事にする にじいろ子育て』(講談社)など著書多数。