通常学級or特別支援学級?発達が気になる子の小学校について専門医が伝授

信州大学医学部・本田秀夫教授#5~発達障害と小学校生活~

児童精神科医・信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授:本田 秀夫

発達障害の特性を持つ子どもの小学校選びについて、その道の専門医たちに話を聞きました。  写真:アフロ
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発達障害の特性をもつ子どもと親にとって、一つの壁ともなり得る小学校入学。

小学校に上がると授業が始まり、時間割りに沿って行動するなど集団におけるルールが重んじられたりと、幼稚園や保育園とは大きく違った生活が待っています。

就学先を選ぶ際の考え方や、学校生活におけるアドバイスを子どもの発達障害の専門とする本田秀夫先生(児童精神科医・信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授)ら3名の医師に伺いました。
※全5回の5回目(#1#2#3#4を読む)

「できないから特別支援学級」ではない

小学校入学という新たなステージは、親も子どももドキドキするもの。とりわけ発達障害の特性を持つ子どもを育てる親にとっては、期待よりも不安や心配事のほうが増える時期かもしれません。

まずは就学先。通常学級と特別支援学級、どちらがいいのか。子どもにとっての最善を考え、慎重に検討したいというのが多くのパパママの心情でしょう。

「授業によって通常学級と特別支援学級を行き来している子どもも多いですね。特別支援学級は、その子の特性に合わせて個別に支援を行う場所です。『できないから行く場所』ではありません。

まずは特別支援学級で過ごしてみて、安心して過ごせる居場所を確保する。そして段々とできることが増えていったならば、特別支援学級で過ごす時間を減らしていくなどのケースもあります。

親御さんの希望で通常学級に在籍させ、低学年のうちは子ども自身違和感を感じなくても、高学年になるにつれて『自分はみんながやれていることができない』などと孤独感や劣等感を感じ、自信を失ってしまう子もいます。

こうして無理を重ねて、不登校などの二次障害を引き起こしてしまった子どもの予後は大変です。もちろん、途中で通常学級から特別支援学級に転籍することもできますが、高学年になると『人から見た自分』を意識する子も増えるので、本人が拒否する場合も。

ですので就学先は、子どもに合った環境を選択するという考え方で選ぶべきです」(清水亜矢子先生/小児科医・信州大学医学部子どものこころの発達医学教室特任助教)

続けて本田先生は、「幼児期から特性が分かっている場合、小学校入学時から特別支援学級を利用している子どものほうが、将来の社会参加率は高い」とも話します。

「1年生のうちからなるべく通常学級の子どもと関わっていたほうが、社会性が身につくんじゃないかなどと親が期待して、無条件に通常学級だけで頑張らせてしまうと、むしろ途中で脱落して不登校になったり、引きこもりになる確率が上がります。

とりわけ診断名のつかないグレーゾーンの子どもほど、親は『もうちょっとで定型になれるかもしれない』と思いやすい。そういった状況にいる子どもたちこそ、引きこもりや不登校などのリスクを抱えているといっても過言ではありません。

さまざまな行動特性による困りごとは、周りの対応次第で軽減することは可能です。

しかし、特性自体が消えることはないんです。どんなに薄いグレーに見えていたとしても、『ずっと残るもの』として理解し、その子らしく、ハッピーに暮らしていける道筋を探していくという意識が大切ですね」(本田先生)

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