子どもの「抜毛症」 生活に支障をきたすまで自分の髪の毛や体毛を抜くことがやめられない! 症状と原因を〔児童精神科医が解説〕

「抜毛症」 #1 ~原因と症状編~

児童精神科医:宇佐美 政英

抜毛症の主な症状

•毛を抜いた後に安心感や快感を覚えることがある

•毛を抜きすぎて地肌が見える、または脱毛が進む

•抜いた毛を食べることがある

•ウィッグや帽子を着用するなど、毛を抜いていることを他人に隠そうとする

•対人関係や社会生活に影響が出る
(友達と会うのを避ける、学校での活動を拒否するなど)

宇佐美先生:「抜いた毛を食べる」については、毛を大量に食べて具合が悪くなる子どもも中にはいるので、診察では「毛を食べているか」を確認する必要があります。

──抜毛行為をするのは、どの部位になりますか?

宇佐美先生:髪の毛がもっとも多く、その次がまゆ毛です。まつげも一定数いますし、腕の毛を抜く子もいます。本人が言わないからなのかもしれませんが、陰部の毛は診察ではあまり聞かないですね。

どの部位の毛を抜くかは個人差があり、髪の毛だけを抜き続ける子もいれば、髪の毛からまゆ毛に移行する子もいるなど、さまざまです。

抜く行為は「注意」や「しつけ」で治るものではない

──抜毛症は、「強迫性障害」と誤診されるケースがあると聞きますが、実際はどうなのでしょうか。

宇佐美先生:強迫性障害の場合、強迫観念(考え)と強迫行為(行動)がセットです。

例えば、子どもが毛を抜いてしまう場合、『抜いちゃいけないとわかっているけど、抜かなければならない』という考えに突き動かされて行動します。

一方、抜毛症は、「考え」と「行動」がセットではなく、「気づいたら毛を抜いていた」ことが多いです。

両者の違いから、抜毛症の子どもは、わざと毛を抜いているのではありません。また、「気づいたら毛を抜いている」ため、しつけや注意をして止められるものではないのです。

注意することで、むしろこれまで以上に隠れて毛を抜くというケースも多くいます。

「毛を抜くきっかけ」は大きく3つある 

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