
子どもの「抜毛症」 生活に支障をきたすまで自分の髪の毛や体毛を抜くことがやめられない! 症状と原因を〔児童精神科医が解説〕
「抜毛症」 #1 ~原因と症状編~
2025.06.05
児童精神科医:宇佐美 政英
「毛を抜くきっかけ」は大きく3つ
──それでは毛を抜くきっかけは何なのでしょうか。
宇佐美先生:子どもが毛を抜くきっかけは大きく3つあります。
1つ目は、を抜いたときの感覚や、抜いた毛の見た目など視覚的なものなどを指す「①感覚的なもの」。
2つ目は、②怒ったときや退屈なときを指す「②感情的なもの」。
3つ目は、髪の毛や外見的な考えなどを指す「③認知的なもの」です。
①の感覚的なものは、毛を抜いたときの感覚です。人それぞれですが、『毛根がポコンと抜ける感じがたまらない』と話していた子もいました。
②の感情的なものは、怒ったときや退屈なとき、不安なときなどです。
③の認知的なものは、きっかけとは少し違いますが、毛が抜けても気にならないといった認知の誤りなどが挙げられます。
ただし、子どもが自分の内面を言語化するのは難しく、明らかになっていないケースも多くあります。
抜毛症の発症時期は10歳~13歳
──抜毛症の発症時期は、通常思春期初期の10歳~13歳とされていますが、年代と発症との関係はあるのでしょうか?
宇佐美先生:年代と発症の関係の詳しい理由は明らかになっていません。
ただこの年代は、思春期のホルモンの変化に加え、進学、受験のプレッシャー、対人関係のストレスなどのライフイベントがたくさんあることが挙げられます。
子どもが無意識に毛を抜いてしまうのは、「不安や緊張、ストレスから逃れるための自己調整行動」です。例えば、学校の試験前や親と衝突してしまったときやなにか失敗したときなどに、毛を抜くことで一時的にリラックスし、それが習慣化してしまいます。
この子どものストレス要因がわかっている場合、それを取り除けば毛を抜かなくなるのではないかと考える保護者の方もいるかもしれませんが、それは一時的な対処法でしかありません。
なぜならば、その子にとって、ストレスを受けたときの対処法が抜毛行為になっているからです。ほかに対処法がなければ、新たなストレスを受けたときに、また毛を抜くことを繰り返してしまうでしょう。