毎日摂る食事から心と体の健康を目指す「食薬」を提案する、漢方薬剤師の大久保愛さん。前回(#1)では「食薬」の大切さと、産後の体調トラブルごとにおすすめの食材を紹介してもらいました。
赤ちゃん期から幼児、小学生へと日に日に目まぐるしい成長を遂げていく子どもたち。毎日が体力勝負ともいえる子育てで、「もう限界!」なんて思っている人も多いのでは?
そんな子育て真っ盛りのパパママが、子育てを乗り切るための体力や体調を維持するための「食薬」をご紹介します。(全3回の2回目。第1回#1を読む)
疲れが取れないと思ったら「骨付き鶏肉」
子どもが起こす予期せぬ動きや制御不能な事態の連続で、心身ともに疲れ果てることも少なくない子育て。子どもの成長に比例して親も歳を重ねていき、「最近、疲れが取れづらい」などと感じることが少しずつ増えてきくるかもしれません。
そんな時こそ、鶏肉がおすすめと大久保さんは言います。さらに「骨付き」であることがポイントです。
「鶏肉には『イミダゾールペプチド』という成分が多く含まれています。これは、抗酸化作用があり、細胞機能の低下を防いでくれるので疲労回復に効果があります。
鶏肉といっても部位はさまざまですが、手羽先、手羽中、手羽元などの『骨付き』をおすすめします。比較的安価で手に入りやすいのもうれしい点です。
骨付き鶏肉は、お鍋に昆布、生姜、かぶるくらいの水を一緒に入れて中弱火でコトコト煮込んでスープにしましょう。
骨ごと煮込むことで、骨に豊富に含まれるアミノ酸やビタミン、ミネラルなどが抽出され、栄養満点のスープが簡単にできあがります。胃腸が弱っている状態でも効率よく栄養素を吸収することができ、腸内環境の改善にも役立ちます。
また、鶏肉は、肉類の中でもとりわけビタミンAが豊富です。ビタミンAは粘膜を強化してくれるので、乾燥や細菌の感染予防にもつながります。つまり、風邪を引きにくくなる効果が期待されるということです。
干し椎茸やアサリを入れたり、アレンジの幅が広いのも魅力。これからの季節は、お鍋に使うのもいいですね」(大久保さん)
風邪が治りづらいなら「骨付き鶏肉のグリル」
子どもの風邪が必ずうつる──。これもパパママには、あるあるのお悩み。ある程度は仕方ないことなのかもしれませんが、困るのはうつった風邪が長期化するパターン。
風邪をこじらせず、元気な体を取り戻すため、または作るために必要なのは、やはり鶏肉だと大久保さんは言います。
「さきほどのスープももちろん効果的ですが、少し趣向を変えてグリルはいかがでしょう?
骨付き鶏肉をポリ袋に入れて、オリーブオイル、塩(多め)・胡椒、香りづけにローズマリーやニンニクパウダーを入れてよくもんで全体をなじませてください。しばらく冷蔵庫に入れておき、あとはグリルで焼くだけでOKです。
骨付き鶏肉のアミノ酸やビタミンB、ミネラルなどが弱った体を修復してくれるので、風邪を治す手助けになります」(大久保さん)
ここで紹介した鶏肉メニューは、風邪を予防する体作りにも役立ちますよ。
緊張や不安には「ちょい足しスパイス」
入園・入学、新年度、新生活、新しい習いごと等々、子どもの環境の変化は親の心と体にもさまざまな影響を与えます。
不安や緊張でストレスがたまりやすい時期に、できるだけリラックスして過ごすためには「スパイス」が効果的だと教えてくれました。
「スパイスと一口にいっても種類がとても多いのですが、基本的にすべてのスパイスはストレスを緩和させる作用が高いといえます。ストレスにより悪化した、気の巡りを改善してくれるんです。
どれを使ったらよいか分からない人には、カレーパウダーやガラムマサラ、五香粉など数種類がブレンドされたものがおすすめです。複数の効果が期待できますよ」(大久保さん)
「あまったおかずにカレーパウダーをかけて味変(あじへん)させたり、いつも飲んでいるお茶にシナモンやクミンをちょい足しするなど、あまり難しく考えず気軽に活用してみてください。
私はココアや納豆、カレーなどによくスパイスを入れています。いずれも味が強いため、何を入れても味が整いやすいんです。
たとえば納豆なら、タレではなくお酢で混ぜて、胡麻やクミン、ターメリックを追加する。そこにブロッコリースプラウトなどの野菜を和えれば簡単サラダのできあがりです。
クミンは胃腸の調子を整え、ターメリックは認知機能の改善にも効果的です。お好きなスパイスを入れて、ぜひ試してみてくださいね」(大久保さん)