漢方薬剤師が推奨 「食薬」で子育て中の体調トラブル&イライラを乗りきる!

漢方薬剤師・大久保愛さんが教える「食薬」のススメ#2~子育て世代の体力維持〜

漢方薬剤師:大久保 愛

子育て中のイライラには「柑橘類」と「ししゃも」

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「子どもについイライラしてしまう……」。そう悩んでいるパパママは少なくありません。イライラする時は、タンパク質や鉄分、マグネシウムなどが不足している可能性があります。

それらを簡単に補える「食薬」食材として「ししゃも」、さらに気分を鎮めるために「柑橘類」を大久保さんはすすめます。

「いつものサラダに、オレンジやグレープフルーツをちょい足しするなど、柑橘類を積極的に摂りましょう。爽やかな香りが、ストレスやイライラを緩和させてくれます。

内臓から頭まで丸ごと食べられる、ししゃもは食薬の強い味方です。タンパク質や鉄分、亜鉛、マグネシウム、ビタミンB群などが豊富なうえ調理も簡単! 

たとえば、ニンニクで炒めた豆苗の上に、焼いたししゃもをのせてレモンをギュッとひと絞りすればOK。

ししゃもは塩味が強いので、調味料は不要。見た目も華やかですし、柑橘類のレモンも摂れておすすめの一品です。ししゃもの内臓には、免疫機能を高めるビタミンDも豊富に含まれているんですよ」(大久保さん)

魚の調理が苦手な人もししゃもなら焼くだけなので簡単。丸ごと食べられる魚は極めて栄養価が高い。 写真提供:大久保愛

外出時の冷え対策に「シナモン&生姜入りのルイボスティー」

冬場の公園は、何かの修行!?と錯覚してもおかしくないほど親にとっては時に過酷。元気いっぱいに走り回る子どもをよそに、それを見守る大人の体には寒さが堪えますよね。

足元が冷えると筋肉が硬くなってしまうため、下半身のむくみにもつながります。冷えやむくみに対しては、血流の流れを改善させることがポイントになるようです。

「冬の公園、寒いですよね! 寒い日には、シナモンと生姜を入れた温かいルイボスティーを水筒に入れて持ち歩くことをおすすめします。

体中に張り巡らされた毛細血管は、加齢とともに老化していきます。老化した毛細血管には血液が流れなくなるため、冷え性の原因に。

そして、その状態が続くと、最終的には幽霊のように消えてしまう『ゴースト血管』化してしまうんですね。

そこで、ルイボスティーとシナモンです。両者には、毛細血管の内皮細胞に存在する細胞「Tie2(タイツー)」を元気にする作用があります。毛細血管の働きが促進されると血流がアップし、冷えやむくみが改善されますよ」(大久保さん)

生姜は摂取方法にひと工夫を

さらにルイボスティーに生姜を加えるとより効果的になります。
でも生姜は「摂ればいい」というわけではないと大久保さんは続けます。

「生姜は摂り方によって効能が違います。生の生姜に含まれている辛味成分ジンゲロールは、強い殺菌作用があるため風邪対策におすすめですが、実は冷え対策には不向きなのです」(大久保さん)

生姜は体を温めるというイメージが強いですが、生の生姜に含まれるジンゲロールには体内温度を下げる働きがある。では、体を温めるためにはどうすればよいのでしょうか。

「ジンゲロールは、加熱や乾燥によってショウガオールという成分に変化します。ショウガオールは胃腸を内側から刺激して血流を高め、体内温度を上げてくれるので冷え対策にバッチリ。

できれば乾燥した生姜がおすすめで、ルイボスティーを煮出す際に一緒に入れるといいですよ」(大久保さん)

また、生姜を購入したら、簡単にできる「生姜麹(しょうがこうじ)」を作るのもおすすめだと聞き、レシピを教えてもらいました。

「洗った生姜を皮付きのままミキサーにかけ、ポリ袋に入れて重さを測ります。その半分量の乾燥麹を入れ、さらに総重量の10%のお塩を追加してよく混ぜてください。その後、常温で1日置いておけば完成です。

保存は冷蔵庫で。生姜と麹両方の健康効果が期待できますし、サラダや和え物、お味噌汁、お肉や魚の下味に使うなどいろいろなお料理に利用でき、とても便利です」(大久保さん)

混ぜるだけで簡単にできてしまう生姜麹。保存も効くので、使いきれないまま冷蔵庫内で生姜がカピカピに……という事態になる前に作ってみてはいかがですか?

『1週間に1つずつ 心がバテない食薬習慣』(大久保愛著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)。「人間も自然のなかの一部である」という漢方の考え方をベースに、日本特有の雨、風、気圧の変化、日照時間がどのように心に影響するかを分析し、その季節特有の心バテ症状に合わせたシンプルで簡単な「食薬プログラム」を紹介。
『1週間に1つずつ 体がバテない食薬習慣』(大久保愛著、ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)。各シーズン・毎週ごとに陥りやすい不調のメカニズムを解明して、その対策のための食薬プログラムを提案。毎週の食べるといい食材をスープや料理の具材として使うだけで大丈夫。食べるもののチョイスを少し変えるだけで、ためこまない、めぐりがよい、「バテない体」へ導いてくれる。

取材・文/稲葉美映子

※大久保愛さんのインタビューは全3回です。
次回(第3回)は2021年12月30日公開(公開日までURL無効)
#3 体調を整える「食薬」+子どもに「食育」 漢方医が教える簡単レシピ

#1 「食薬」で女性特有の不調・子どもの食習慣を改善 漢方薬剤師の知恵

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おおくぼ あい

大久保 愛

漢方薬剤師

秋田県出身。薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。 アイカ製薬株式会社代表取締役、漢方生薬研究所開発責任者、一般社団法人腸内細菌検査協会理事、株式会社東進メディカルアドバイザー。 昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人ではじめて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳を始め医療と美容の専門家として商品開発・ライティング・企業コンサルティングなどに携わっている。

秋田県出身。薬剤師、国際中医師、国際中医美容師、漢方カウンセラー。 アイカ製薬株式会社代表取締役、漢方生薬研究所開発責任者、一般社団法人腸内細菌検査協会理事、株式会社東進メディカルアドバイザー。 昭和大学薬学部生薬学・植物薬品化学研究室卒業。北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人ではじめて国際中医美容師資格を取得。漢方薬局、調剤薬局、エステなどの経営を経て、漢方・薬膳を始め医療と美容の専門家として商品開発・ライティング・企業コンサルティングなどに携わっている。

いなば みおこ

稲葉 美映子

ライター

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。

フリーランスの編集者・ライターとして旅、働き方、ライフスタイル、育児ものを中心に、書籍、雑誌、WEBで活動中。保育園児の5歳・1歳の息子あり。趣味は、どこでも一人旅。ポルトガルとインドが好き。息子たちとバックパックを背負って旅することが今の夢。