全公開【子育て中のリスキリング】“国家試験合格“への道 発達障害のシングルマザーが見つけた「頭に残る」勉強法

第3回【試験直前】アラフォーADHD&シングルマザーの「リスキリング」~ポンコツ脳の壁~

1つ覚えると1つ忘れる

スケジュール以外で困ったのは、自分の「忘却」っぷりだ。動画を見て理解したつもり、覚えたつもりでも、なぜか翌日にはキレイサッパリ忘れているのだ。もとより、気が散りやすく注意散漫なADHDである。動画を視聴しながら無意識に別のことを考えてしまう癖がある。

ドイツの心理学者、ヘルマン・エビングハウスは「覚えたことの7割は翌日忘れている」といったらしいが、私の場合、9割は忘れていた。

しかし、エビングハウスの理論では、繰り返し復習することで忘却率を下げ、記憶を定着させることができるという。いわゆる、「忘却曲線」の理論だ。動画の先生も、「動画を3周してやっと知識として定着する」と強調していた。

とはいえ、私には座ってじっくり動画を見る時間はほとんどなかった。そこで、食事中、入浴中、家事の最中など、あらゆる時間を動画視聴にあてていった。洗い物やドライヤーで髪を乾かしているときに聞きづらくならないよう、ワイヤレスイヤホンも買った。いわゆる「ながら視聴」「聞き流し」作戦である。

しかし残念ながら、私の場合、聞き流しはあまり頭に残らなかった。食事中や入浴中に集中してしっかり見る。これをひたすら繰り返すことが肝だとわかった。

試験の約3ヵ月前、11月に受けた第1回目の模試でも、私は合格基準点には6点足りなかった。さらにマークミスもしていた。ADHDの私、塗りつぶすときも集中力がいるのか……と気づいた。

第1回目の模試の結果は、合格基準点に達せず。マークミスによる失点も……。
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「手で書いて口で唱える」がいいと判明

試験日まで残り約2ヵ月となった2024年12月、ようやく、160本超の動画を3周見終えることができた。しかし、暗記必須な勉強の半分も覚えられていない。どうしよう。

次に試したのが「壁貼り」作戦。どうしても覚えられないものは紙に書いて部屋に貼り、とにかく視界に入れる作戦だ。CMや流行歌もひんぱんに見聞きすることで自然と頭に残る。その手法を活用することにしたのだ。

とはいえ、我が家は母子2人、約30平米のワンルーム住まい。必然的に壁が足りない! トイレの壁はすぐに満室御礼、シンク周りの壁、引き戸、洗面所等々、家中の壁が見えなくなるほど紙でおおい尽くした。まるでメニューの短冊が壁一面に貼り尽くされた居酒屋のよう。もし誰かが訪れたら、異様な光景に映っただろう。

朝起きてトイレに向かう途中も、「福祉三法」「福祉六法」「福祉八法」などの各法律名や、日本人の死因ランキングなどを大声で唱える日々。いつしか、その隣で食事をしている息子まで、用語が頭に入っていた。なお、息子は今でも「日本人の死因TOP3」や、私でさえ忘れていた専門用語をスラスラ唱えられる。

並行して、12月末から単語帳も作り始めた。過去問などで間違えた箇所や記憶があやふやなところは全て単語帳に書くようにし、試験前日まで、全部で7個は作った。

細かい説明を書き写すのは、膨大な時間がかかる。だが、効果は抜群だった。「×」だらけだった予想問題集の正答率が飛躍的に上がったのだ。

カードに書く。寝る前や起床後に単語帳をめくって、見て、口に出す。こうした作業だけでも、頭に残っていく実感を得られた。単語帳がなかったら、絶対に合格に至らなかったと断言できる。

目に飛び込みやすい太字のマジックで書いては壁に貼った暗記モノ。
壁貼り用の暗記用紙や単語帳で、私は「手を使う」ことで頭に入っていくタイプだと実感した。書くことこそ、遠回りに見えて最大の近道なのだと確信。

単語帳や問題集を解くときは、25分集中して5分休憩を繰り返す「ポモドーロタイマー」のYouTube動画を流す勉強法に切り替えた。すると、メリハリができて集中力がUP。何かと気が散りやすい私には劇的な効果となった。

大きな支えになった“あるメンバー”

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