
テストの点数で子どもの価値は決まらない 「能力主義」がもたらす本当の弊害とは
学校の「当たり前」を考える 能力主義と子ども #1能力主義の弊害
2025.10.06

公立小学校の成績評価に、新たな動きが出始めています。岐阜県美濃市の公立小学校は、2025年度に1年生の通知表配付を廃止しました。
その理由の一つが「◎や△の数を比べて劣等感を抱く子がいる」からで、2026年度には2年生の通知表も廃止する予定です。
これまでも一部の公立小学校で同様の動きがありましたが、保護者からは「中学校は通知表がある」「競争心を育てることも必要」など、さまざまな意見が出ています。
常に個人が優劣を競い、その結果は自己責任。そんな社会で生きてきた保護者世代が子どもに対し、「幼少期から能力を磨いて勝ち抜かなくては、社会に出たあと困る」と考えてしまうのも、無理はありません。
「でも、『高い能力があれば未来は安泰』とは限りません。現在もてはやされているコミュニケーション力やリーダーシップ力でさえ、環境次第では『役に立たない』といわれかねません。『能力』って実は、すごく不確かなものなんです」
そう話すのは、長年人材系コンサルティングファームで働き、独立後は「組織開発」の視点で企業を支援する勅使川原真衣(てしがわら まい)さん。学校現場にも詳しい勅使川原さんは、個人の能力(できる/できない)を一つのものさしで測り、序列化する「能力主義」に疑問を呈します。
「そもそも、能力を目で見たことがある人なんていないはず。個人の内側に『揺るがない能力』が存在し、テストや選抜で正確に測ることができる、という考え自体が思い込みなんです」
能力、能力主義について、勅使川原さんに詳しく聞きました。
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