中学受験を「親のエゴ」にしないための「秘訣」とは 都内私立中学の副校長と中受を描く作家が「試験多様化」を語る

『中受 12歳の交差点』工藤純子×國學院大學久我山中学高等学校副校長 スペシャル対談 前編

ライター:山口 真央

中学受験は「親のエゴ」?

児童文学作家の工藤純子さん。
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髙橋『中受 12歳の交差点』は、親世代が読んでも刺さるものがあります。

都立の難関中学を受験する新(あらた)さんが、受験当日にお父さんから「よくわからないうちから中学受験を決めてしまった」ことを謝られるシーンは、胸にくるものがありました。

「子どものため」と思ってしたことは、子どもが納得していたことだったのだろうか、などと改めて考えさせられたといいますか。振り返るいい機会になりました。

工藤:受験生を持つ親の思いって、複雑ですよね。

たしかに、中学受験のことを「親の受験」や「親のエゴ」だといって、マイナスなイメージを持っている人もたくさんいます。

けれど私も中学受験生の親を経験して、中学受験は思っていたほど特別なことではないと実感したんです。

悪い面ばかりが取り沙汰されて、大切なものが見失われているのではないかと感じました。

髙橋:おっしゃるとおりです。やはり中学受験で大切なのは、子どもが自分の意志で動いているかどうかかなと思います。

子どもたちを見ていると、自分自身で決めたことには熱意を持って取り組むし、迷いや気持ちの揺らぎが少ないんです。

結局子どもは、自分で決めたいんです。親は後ろから見守っていて、子どもが不安になったときにタイミングよく背中を押す存在であるべきだと感じています。

自分を顧みても、とても難しいことではあると思いますが。

工藤:そうですね。でもやはり主役は子どもであるべきです。受験するのも学校に通うのも子どもなのに、中学受験は親が主導するものだと考えるのは違和感があります。

12歳の子どもは、きちんと話をすればわかる年齢です。中学受験をするかどうか、そしてどの学校を受験するのか。

お子さんと対話を重ねて、それぞれの家族の「正解」を導いてほしいです。

髙橋秀明
國學院大學久我山中学高等学校副校長。昭和60年、地歴公民科教諭として母校に奉職。学科主任他、特別講座推進センター主任、学年主任、入試対策部長、女子部長、教頭を歴任。平成31年より副校長。

工藤純子
児童文学作家。東京都生まれ。2017年、『セカイの空がみえるまち』(講談社)で第3回児童ペン賞少年小説賞を受賞。おもな作品に、『となりの火星人』『あした、また学校で』『サイコーの通知表』『だれもみえない教室で』『ルール!』(ともに講談社)、『てのひらに未来』『はじめましてのダンネバード』(ともにくもん出版)、『ひみつのとっくん』『しんぱいなことがありすぎます!』(ともに金の星社)、「恋する和パティシエール」「プティ・パティシエール」シリーズ(ともにポプラ社)、「リトル☆バレリーナ」シリーズ(Gakken)などがある。日本児童文学者協会会員。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」同人。

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やまぐち まお

山口 真央

編集者・ライター

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。

幼児雑誌「げんき」「NHKのおかあさんといっしょ」「おともだち」「たのしい幼稚園」「テレビマガジン」の編集者兼ライター。2018年生まれの男子を育てる母。趣味はドラマとお笑いを観ること。