漢字も自ら楽しく勉強!? 子どもの「成長したい」に火をつけた自由進度学習

【小学校教育2.0】自由学園の実践#4「学びの楽しさを子どもに戻す漢字学習」

2022年度4年生のクラスにて、漢字の自由進度学習を取り入れました。  写真提供 自由学園初等部
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体験を重視した学びや「探求的な学び」に力を入れる自由学園の小学校(初等部)。子どもから湧き出る興味や関心を深めることを大切にしています。

しかし、国語での漢字学習や算数での計算方法の習得など、いわゆる「知識・技能面」の学習は、学ぶ内容そのものに興味を持てない(持ちにくい)子がいるのも現実です。

とはいえ、漢字がまったく書けない、読めない、九九ができないままでは、自分の興味を深めていく学習も進めにくくなってしまいます。

こうした「基礎的な学習」について、自由学園初等部の2022年度4年生のクラスでは、子どもが自主的に学びを進める学習方法に取り組みました。

第4回は、国語・漢字での自由進度学習の実践と子どもたちの学習姿勢の変化について、田嶋健人(たじまけんと)先生にうかがいます。

※全4回の第4回
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子どもに「学びの楽しさ」を戻したい

2022年度の4年生、国語・漢字の授業で自由進度学習を取り入れた田嶋先生は、その理由についてこう話します。

「本来の学びの姿を考えると、『友だちに手紙を書きたいから字を覚える』といったように、まず自分のなかにやりたい気持ちや必要性があって、そこを出発点にして取り組むからこそ、身についていくものだと思うんです。

これは、漢字がたくさん出てくるアニメ『鬼滅の刃』が流行ったときに、痛感したことでもあります。

そのときに担任していた2年生の子どもたちが、一斉に漢字に興味を持ったんですね。アニメに出てくるという理由で、2年生では習わない漢字を覚えて書けるようになった子どもが大勢いました。

ああ、これが本当の学びだよな、と感じましたね。そして、授業でもこんなふうにできたら……というイメージがありました。

漢字の自由進度学習に取り組む様子。  写真提供 自由学園初等部

でも、現実問題として、国語で覚える漢字は学年ごとに決まっていて、好きな漢字を選んで覚えられるわけではありません。だとしたら、内容はともかく、子どもが『学ぶこと自体が楽しい』と感じられるようにしたいと思ったんです。

子どもには元々、『何かができるようになりたい』とか『成長したい』という気持ちがあります。それが学びの楽しさのひとつでもある。だから、漢字も『書けるようになったらうれしい』『覚えられた自分ってカッコいい』と感じられるようにしてあげたいと思っていました。

子どもに学びの楽しさを戻したい。そのためには、『自由進度学習』を取り入れ、学習の方法やペースを子どもたちに任せることが必要だと考えました」(田島先生)

「自分で気づく」ことの大切さ

小学校の漢字学習は、一日2~3文字程度を授業で習い、宿題などでノートに書き写してくる、といった方法が一般的です。田嶋先生も以前までは同様の授業をしていましたが、2022年度からは自由進度学習に取り組むことにしました。

「4年生の1学期に習う漢字は87文字です。そのゴールを伝えた上で、『最初にドリルを使って学習する』ことだけを決めました。

まずは、授業で『音読したあとになぞり書きをする、そのあと空欄を埋める』などの、具体的な学習方法を伝えます。ドリルを済ませたあとは、一人ひとりが自分にあったやり方を考えて実践していきました。

必ず○文字書かなくてはいけない、ノート1ページ分を練習する、などというルールは設けず、書いたほうが覚えられる子は書く、読んでもいいし、見て覚えられるならそれでもいい、など選択肢を与えました。覚えたかどうかは、小テストで確認します」

プリントでも新しい漢字学習の方法を配布しました。  写真提供 自由学園初等部

子どもたちはプリントを使って1週間単位の学習計画を立て、それに沿って進めていました。週に1回は必ず小テストをし、それに合格できるまで挑戦します。そして、振り返りを記入し、学習の進捗や方法などについて、自分自身で確認していきます。

「漢字が得意でどんどん覚えていく子もいれば、なかなか進められない子もいます。小テストの日になって、『俺、全然勉強してない』と言い出すこともあります。でも、テストをきっかけに『計画どおりに進められていなかった』『遅れてしまっている』と自分自身で気づく子が増えていきました。

教員が主導権を握って授業や学習を進めてしまうと、こうした『自分の状況』にも気がつけない。気づくチャンスを奪っているともいえます。自分で今の学習状況を認識することさえできれば、あとはどうしたら進められるようになるのか、取り組む方法や時間などを工夫して、変えていくことができる。

子どもたちの様子をみながら、それを助けるのも僕たち教員の役割です」(田嶋先生)

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