493gで誕生した「リトルベビー」は入退院の連続〜5歳の今も月8回通院… どんな社会的支援が必要か? 

小さな赤ちゃんに寄り添う手帳「リトルベビーハンドブック」#4 ~リトルベビー親子に必要なサポート~

栃木県リトルベビーサークル「にちにちらんらん」代表:小林 恵

就学猶予を教育委員会などに相談

かなめちゃんは、通常でいくと2024年4月には小学校入学を迎えます。ただ、恵さんはこのまま小学校に入学させるのは不安があるとも語ります。

「実は、今、入学を先延ばしにする就学猶予(しゅうがくゆうよ)の申請を考えていて、いろいろな関係各所に相談しているところなんです」(恵さん)

日本では、保護者は児童を就学させる義務を負っています。しかし、学校教育法で例外として就学猶予・免除が認められる場合があり、その理由を、「病弱、発育不完全、その他やむを得ない事由のため就学困難と認められる場合」としています。

「私の住んでいる地域では前例がないようで、交渉はなかなかスムーズにはいきませんが、少しずつ前向きに教育委員会や保育園も考えてくれるようになってきました。

就学猶予という制度があることも、一般にもっと知られていくようになってほしいと思います。同じクラスに就学猶予が適用された子がいても、みんなが知っていれば違和感なく受け止められることも増えますよね」(恵さん)

そして、こうした社会的なシステムはもちろん、ほかにもリトルベビーに寄り添う取り組みは多数あります。

・HANDS
全国のリトルベビーサークルのサポートをしている国際母子手帳委員会の板東あけみさんがテクニカル・アドバイザーを務めるNPO法人。全国のリトルベビーサークルやリトルベビーハンドブックの情報が集約されている。

・日本母乳バンク協会
リトルベビーに限らず母乳を必要とする子どもに母乳を届ける一般社団法人。ドナー登録することでリトルベビーなどの支援ができる。

・世界早産児デー(11月17日)
世界の早産における課題や負担に対する意識を高めるために、2008年にヨーロッパNICU家族会(EFCNI)などによって制定された記念日。世界早産児デーの前後で、写真展や講演会などが行われることも多い。

最後に、リトルベビーを出産し、その成長を見守る毎日のことを恵さんは「いつも戦っています!」と笑顔で語ってくれました。

「出産してから、本当に大変な思いをたくさんしてきたし、いっぱい泣いたから、同じような辛さを味わうママを一人でも減らしたいです。リトルベビーハンドブックやサークルが一人でも多くのママやパパの気持ちをラクにできるとうれしいです。

私はリトルベビーのママとして活動していますが、違う理由で日々苦労しながら戦われている人たちもたくさんいるはずです。そんな人たちの声が世の中に少しでも多く届くように、これからも頑張っていきます!」(恵さん)

パパとママとかなめちゃんとの3ショット。大変な日々も家族で協力して乗り越えてきました。素敵な笑顔です。  写真提供:小林恵(にちにちらんらん)

今回、リトルベビーハンドブックについて取材した3人の女性はとてもパワフルでインタビューしているこちらが元気をもらうほどでした。

当事者として、現在進行形で我が子の成長を見守っている小林恵さんは常に前向き。

第2回で登場する小林さとみさんは、双子の娘さんたちが成人した現在、自分たちの活動を冷静に分析しながらも、今悩んでいるママたちに先輩としての優しいまなざしを送っていました。

そして、全国のリトルベビーのママたちを大きな笑顔で包み込み、励まし続けている第1回の板東あけみさん。これまでの人生経験をもとに次の世代がどうしたら幸せに生きられるのかに真正面から向き合いサポートされていました。

3人の自分ではない誰かを励ますために活動している姿には感動を覚えずにいられませんでした。記者の私も、誰かのために、今日からできることが何かあるのかもしれません。

きっと小さなことでもいいのでしょう。多くの人がそれを見つけることができたら、子どもたちが歩んでいく未来はもっと輝いていくと思います。

●関係先URL
・HANDS
https://www.hands.or.jp/

・日本母乳バンク協会
https://jhmba.or.jp/

・世界早産児デー(11月17日)※日本NICU家族会機構・JOIN
https://www.join.or.jp/world-prematurity-day

取材・文/関口千鶴

18 件
こばやし めぐみ

小林 恵

Megumi Kobayashi
リトルベビーサークル「にちにちらんらん」代表

栃木県のリトルベビーサークル「にちにちらんらん」代表。2018年に493gで男児を出産。リトルベビーの親として、栃木県で初めてのリトルベビーサークルを立ち上げ、2023年3月には「とちぎリトルベビーハンドブック」が完成した。5歳になるかなめちゃんは元気に成長中! ●インスタグラム nichi.nichi_ran.ran

栃木県のリトルベビーサークル「にちにちらんらん」代表。2018年に493gで男児を出産。リトルベビーの親として、栃木県で初めてのリトルベビーサークルを立ち上げ、2023年3月には「とちぎリトルベビーハンドブック」が完成した。5歳になるかなめちゃんは元気に成長中! ●インスタグラム nichi.nichi_ran.ran

せきぐち ちづる

関口 千鶴

Sekiguchi Chizuru
編集者・ライター

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon

大学卒業後、出版社にて編集者として数多くの雑誌・書籍を手掛ける。その後、親子カフェ経営を経て、独学で保育士免許を取得。現在は、幼児教育・子育て支援・絵本などを中心としたフリーランスの編集者・ライターとして活動中。 ●Instagram chise_kanon