
9つあるムーミン小説、はじめて読むなら、このタイトルがおすすめ!
ムーミン大好きの書店員、作家、翻訳家、編集者に聞きました。
2026.03.06
2025年にムーミン小説80周年を記念して発売になった、文庫9巻がすべて入ったBOX。
ムーミンの原作小説は全部で9冊あります。それぞれまったく違うお話のため、「どの巻から読むのがおすすめ?」という疑問をいただきます。
そこで! ムーミンをこよなく愛する書店員や作家、訳者、編集者のみなさんに取材しました。
「ムーミンは、どの巻から読むのが、おすすめですか?」
アンケートにご協力いただいたみなさん
(あいうえお順)
石井遥さん
書店員。教文館 子どもの本のみせ ナルニア国 (東京・銀座) 「小学生のころ、誕生日プレゼントに童話全集の『小さなトロールと大きな洪水』をもらって以来のファンです」
内山さつきさん
文筆家・編集者。著書に『トーベ・ヤンソンの夏の記憶を追いかけて』(東海教育研究所)。「トーベとムーミン」展の展示協力を行う。
K.Mさん
書店員。丸善ラゾーナ川崎店(神奈川県川崎市) 文芸書担当。
K.Nさん
講談社青い鳥文庫「ムーミン」シリーズ新装版の担当編集者。
小張 隆さん
ひるねこBOOKS(東京・台東区)店主。「それまでアニメのイメージしかなかったムーミンですが、大人になり原作を読んだことがきっかけで、フィンランドや北欧の文化への興味が広がっていきました」
畑中麻紀さん
翻訳者。新版「ムーミン」1巻~8巻の翻訳編集を行う。ファンレターを書いたら、トーベからお返事をいただいたことがあるんだそう!
ヤマモトさん
店長。ジュンク堂書店姫路店(兵庫県姫路市)。「ムーミン推し35年!」
最初の1冊におすすめは『たのしいムーミン一家』
今回アンケートをお願いした7名中、6名の方の最初の1冊におすすめのタイトルが、『たのしいムーミン一家』でした。
北欧の本もたくさん扱っているひるねこBOOKSの小張さんも、『たのしいムーミン一家』をおすすめ。
──最初に読むならやはりこれでしょう。ムーミン一家をはじめ主要なキャラクターが登場するので、ムーミン谷の世界観を理解し、自分の好きなキャラクターを見つけるのにぴったりです。(小張)
作:トーベ・ヤンソン 訳:山室 静
カバーに描かれているのは、ムーミントロール、スノークのおじょうさん、スニフ、飛行おに、黒ヒョウ。トフスランとビフスランが出てくるのもこの本です。
──ムーミントロールたちの発見した魔法のシルクハットが引き起こす不思議の数々は、奇想天外でドキドキワクワクの連続! 海岸にピクニックに出かけたり、お客を大勢招いて庭でパーティーをしたりするなど、白夜の国の物語らしく春から夏にかけての季節を存分に謳歌するムーミントロールたち。その喜びにあふれた様子が読者の楽しい気持ちをいっそうもり立てます。(石井)
──シリーズの中で一番明るく、胸が躍るような冒険に満ちた物語です。おなじみのキャラクターたちもたくさん出てきて楽しい! 子どものころのきらきら輝いていた夏休みのような、そんな作品だと思います。(内山)
──冬眠をして春が来るところから始まるというのが最初らしいのでは。章ごとにさまざまなキャラの特徴が生き生きと描かれているのも魅力的。(K.M)
── ムーミンの世界観をたっぷり味わえるので、最初に読むのにぴったりの一冊です。ムーミン谷の仲間たちが勢ぞろいしているので、読めば誰でも自分と似ているキャラクターや共感できるキャラクターが見つかるのではないでしょうか。(K.N)
──何の説明もなく始まるちょっと不思議なムーミン一家の日常生活から、喜怒哀楽をきちんと伝えて生きることの幸せが感じられる一冊。(ヤマモト)
いっぽう、翻訳家の畑中さんは、「どの巻からでもOK!」とのこと。
──ムーミン小説は作品ごとに設定や挿絵の雰囲気が異なっています。タイトルや表紙などを見て、ピン! と来たものから読んでみてください。直観って大事だと思います。(畑中)
作:トーベ・ヤンソン 訳:下村隆一
地球に向かって彗星が飛んでくるので、ムーミンとスニフが天文台へ調べに行く…・というスケールの大きなお話。
畑中さんご自身は、「小学生のときに《彗星》という漢字に魅かれたのと挿絵を見て、当時は全集の8巻目だった『ムーミン谷の彗星』を最初に」読んだのだそう。
たしかに、トーベが描くカバーイラストや挿絵はどれも魅力的で、雰囲気もそれぞれ異なります。
翻訳や改訂版が出るたびにこだわりをもってカバーイラストを描き直していたそうなので、直感で選んでみたら、トーベも喜んでくれるかもしれません。
いちばん好きなムーミン小説は…?
ムーミン上級者のみなさんに、好きな巻はどれかも伺ってみました。
みなさん迷いつつも選んでくださったコメントに、ムーミン愛があふれています!
いちばん人気は、フィンランドらしく『ムーミン谷の冬』でした。ムーミン推し30年!というジュンク堂書店姫路店のヤマモトさんも「冬」がお好きとのこと。
──雪の降る地域に暮らす人が共感できる。冬の静けさの描写と、その中で生き生きとしたムーミンたちの様子が大好き。(ヤマモト)
作:トーベ・ヤンソン 訳:山室静
新版では、カバーで橋の上にいる「おしゃまさん」が、原語にあわせて「トゥーティッキ」になりました。日本にはじめて紹介されたお話でもあります。
──それまでのムーミン谷とは打って変わり、雪に覆われて音も聞こえなくなった世界は寂しさを感じますが、トゥーティッキなど魅力的なキャラクターと出会うことによってムーミンが成長する姿を見ることができ、その後の物語を期待させます。(小張)
──ムーミントロールは、初めは寂しくて仕方なかったけれど、その後さまざまな出会いや経験を積んで、春を迎えるころにはたくましく成長します。トゥーティッキの言葉「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして自分ひとりで、それを乗りこえるんだわ」は、ムーミントロールの背中を押すと共に、自分自身の心にも勇気を与えてくれました。物語に春が訪れると同時に、自分の心も軽やかになれるストーリー。(K.N)
──物語としての完成度が素晴らしくて読み返すたびにラストで拍手したくなります。この世界には自分とは違う、さまざまな存在が同じように生きているのだというメッセージも深いです。また短編ですが、『ムーミン谷の仲間たち』所収の「春のしらべ」も、『ムーミン谷の冬』と同じくらい好きです。こちらは、名前もなかった小さな生きものがスナフキンとの出会いによって、自分自身を見つける物語。(内山)
作家の内山さんがあげてくださった『ムーミン谷の仲間たち』は、ムーミン小説唯一の短編集です。
作:トーベ・ヤンソン 訳:山室静
内山さんがお好きな「春のしらべ」は、スナフキンとティーティ・ウーのお話。カバー絵になっているのは、人気のニンニと、ちびのミイです。
教文館 子どもの本のみせ ナルニア国の石井さんがあげてくださったのは、ご自身がムーミン好きになるきっかけともなった『小さなトロールと大きな洪水』です。
──表紙のムーミンママからわかるように、初期のムーミンたちはその後の容姿とわずかに異なります。一見不完全な姿はこれからはじまる長いシリーズがこのときはまだ想像の途中であったことを感じさせて、それだけにこの作品には特別な慈しみを覚えます。(石井)
作:トーベ・ヤンソン 訳・冨原眞弓
トーベ・ヤンソンがはじめて書いたムーミンの本です。戦後すぐ少部数で発行されたため、ながらく幻の巻となっていました。最初の本なのに、9巻目になっているのはそういう事情なのです。
丸善ラゾーナ川崎店の文芸担当K.Mさんは、7巻目の『ムーミンパパ海へいく』をあげてくれました。
──怖くて不気味な存在だったモランのイメージがガラッと変わり、とても愛おしく感じられる作品です。(K.M)
『ムーミンパパ海へいく』は、ムーミンパパに連れられて、ムーミンママ、ムーミントロール、ちびのミイが船で離島へうつり住むお話です。
ムーミン一家の意外な面が読めるハードボイルドな一冊。
作:トーベ・ヤンソン 訳:小野寺百合子
ある日、ムーミンパパが思い立ち、ムーミンママ、ムーミントロール、リトルミイのムーミン一家が、離島へ移り住むお話。シリーズの中でもボリュームがある巻で、ムーミン上級者向きとも言われることも。K.Mさんも教えてくださったように、モランやうみうま、灯台守など印象的ないきものも多く登場し、シリーズに欠かせない一冊です。
翻訳者の畑中さんがお好きな『ムーミン谷の十一月』は、ムーミン小説最後の巻で、8巻目にあたります。
──ムーミン一家が直接には登場しないのに、一家の存在をくっきりと感じる物語です。読むたびに、そのときの自分と登場キャラクターの誰かとが共鳴して、まるでムーミン谷でひとときの共同生活を送っているかのような感覚になります。集った者たちの不協和音がそれはそれは美しいハーモニーに……というのとは一味違う結末になるのもさすがはトーベ!(畑中)
作:トーベ・ヤンソン 訳:鈴木徹郎
シリーズ8巻め。最後のお話なのに、ムーミン一家はなんと不在。それなのにムーミン一家を色濃く感じる、不思議なお話です。
このお話が好きだという 畑中さんいわく、この作品と対になると思われる『ムーミンパパ海へいく』のあとにお読みになることをおすすめします、とのこと。
ムーミン上級者のみなさんに、はじめての方におすすめの巻、そして、お気に入りの巻を教えてもらいました。
お気づきでしょうか。ムーミン小説9巻のうち、今回の記事で一度も登場しなかった巻が2つあるのを。
3巻目『ムーミンパパの思い出』、そして、4巻目『ムーミン谷の夏まつり』です。
作:トーベ・ヤンソン 訳:小野寺百合子
ひどい風邪をひいたムーミンパパが書いた自伝的小説です。
作:トーベ・ヤンソン 訳:下村隆一
ムーミン一家が流れてきた劇場で暮らすようになるお話。
今回はタイトルがあがりませんでしたが、『ムーミンパパの思い出』『ムーミン谷の夏まつり』も、実はとても人気の巻。畑中さんが書いてくださったように、直感でこの2冊から読み始めても、きっとムーミンたちの世界が大好きになってしまうことでしょう。
ムーミン小説のどの巻もトーベ・ヤンソンの描く美しい挿絵がたくさん入り、物語を盛り上げています。キャラクターグッズが大人気のムーミンですが、お話を読むと、グッズの絵を見たときなどにも「あ、これはあのシーンだな」などとわかり、より楽しくなることまちがいなしです。
今年はぜひ、ムーミン小説を読んでみてくださいね!




























































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トーベ・ヤンソン
(1914年8月9日‐2001年6月27日) フィンランドの首都ヘルシンキに彫刻家の父、挿絵画家の母のもとに生まれ、幼いころから画家を目指す。ヘルシンキ、ストックホルム、パリで絵を学び、政治風刺雑誌『ガルム』をはじめ、児童書や新聞の挿絵などの仕事を精力的にこなした。 ムーミン小説の9作品は、戦争中、自分自身の安らぎのために執筆した『小さなトロールと大きな洪水』を1945年に出版したところから始まり、最愛の母シグネが亡くなった1970年に出版した『ムーミン谷の十一月』が最後となった。 1954年ロンドンの「イヴニング・ニューズ」掲載のムーミン・コミックスの連載が人気を博すなど多才ぶりを発揮。 1966年国際アンデルセン賞受賞、1976年フィンランドの芸術家に贈られる最高位の勲章、プロ・フィンランディア勲章受章。
(1914年8月9日‐2001年6月27日) フィンランドの首都ヘルシンキに彫刻家の父、挿絵画家の母のもとに生まれ、幼いころから画家を目指す。ヘルシンキ、ストックホルム、パリで絵を学び、政治風刺雑誌『ガルム』をはじめ、児童書や新聞の挿絵などの仕事を精力的にこなした。 ムーミン小説の9作品は、戦争中、自分自身の安らぎのために執筆した『小さなトロールと大きな洪水』を1945年に出版したところから始まり、最愛の母シグネが亡くなった1970年に出版した『ムーミン谷の十一月』が最後となった。 1954年ロンドンの「イヴニング・ニューズ」掲載のムーミン・コミックスの連載が人気を博すなど多才ぶりを発揮。 1966年国際アンデルセン賞受賞、1976年フィンランドの芸術家に贈られる最高位の勲章、プロ・フィンランディア勲章受章。