温暖化のことは知っていても、雪うさぎさんに会えない未来がやってくるかもしれないなんて、想像したこともありませんでした。キビタンはもう一度、雪うさぎさんをさがしはじめます。
「雪うさぎさーん!」
このままじゃ、雪うさぎさんに会えなくなってしまう。うつくしい福島の四季も、変わってしまうかもしれない。キビタンの胸の中に、いろんな思いが駆けめぐります。
「あっ……!」
大きな岩の、日の当たらないひんやりとした陰。そこに、少しだけ雪のかたまりが残っていました。それは、すっかり小さくなった雪うさぎさんでした。
「雪うさぎさん!!!」
キビタンが呼ぶと、雪うさぎさんはゆっくりと顔をあげました。雪の体はとけかけ、ところどころ茶色い土がついています。長かった耳も、片方が力なくかたむいていました。
「キビタン……久しぶりだね」
「うん。よかった、会えて。いつもの場所にいないからさがしたんだよ」
キビタンの言葉に、雪うさぎさんは消えそうな声で答えます。
「今年は……あったかくて……あっという間に雪がとけて……だから少しでも涼しいところに移動してたんだ」
山を吹きぬける風が、ふっと弱まりました。まるで、雪うさぎさんの言葉に耳をすませているみたいです。
「キビタン、会いにきてくれてありがとう……でも、もうさよならの時間なんだ……」
「ごめんよ、雪うさぎさん。気づくのが遅くなって」
キビタンは雪うさぎさんにあやまりました。そして、しっかりとした口調で言いました。
「でも、まだ間に合うよ!ちょっと待ってて!」
キビタンはすぐに動き出しました。山の中を飛びまわりながら、残った雪を見つけては、大事に集めていきます。冷たい雪の感触が羽に伝わっても、キビタンはやめません。そして、雪うさぎさんの体に、集めた雪をそっとくっつけていきました。
すると──。雪うさぎさんの体が少しだけしっかりして、真っ白くかがやきました。目にも、かすかな光が宿ります。
「……ありがとう」
その声は、さっきよりも強く聞こえました。キビタンはホッとして、雪うさぎさんのそばに寄りそいます。
でも──来年も、間に合うのだろうか。第3回は5月30日公開!
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五十嵐 美怜
福島県出身、在住。『15歳の昆虫図鑑』で第64回講談社児童文学新人賞佳作、第1回未来屋アオハル文学賞を受賞。 東北児童文芸サークル「みちのわ」メンバー。主な作品に「恋する図書室」シリーズ、「ハイキュー‼︎ まんがノベライズ」(集英社みらい文庫)、「きみがキセキをくれたから」シリーズ(講談社青い鳥文庫)などがある。
福島県出身、在住。『15歳の昆虫図鑑』で第64回講談社児童文学新人賞佳作、第1回未来屋アオハル文学賞を受賞。 東北児童文芸サークル「みちのわ」メンバー。主な作品に「恋する図書室」シリーズ、「ハイキュー‼︎ まんがノベライズ」(集英社みらい文庫)、「きみがキセキをくれたから」シリーズ(講談社青い鳥文庫)などがある。