「江戸時代の長崎」が舞台の青春ミステリー 「講談社児童文学新人賞」受賞 授賞式速報(東京都・文京区)
13歳が主人公の時代小説が新人賞に輝く
2024.10.17
斉藤洋、柏葉幸子、森絵都、はやみねかおるなど、多くの人気作家を輩出した新人賞として知られる「講談社児童文学新人賞」の授賞式が、10月16日(2024年)に東京都・文京区の講談社で開催された。
第65回を迎えた今回は、江戸末期を舞台に長崎出島の史実も織り交ぜた青春ミステリー作品、荒川衣歩(あらかわ・いほ)の『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』が受賞した。
新人賞受賞作品は単行本として刊行される。賞金は50万円。
授賞式では、各選考委員が受賞者に対する祝辞を述べ、受賞者に賞状と賞金を授与した。
新人賞を受賞した荒川衣歩は、「講談社児童文学新人賞は、児童文学を書く人ならみな一度は憧れる賞、大きなプレッシャーを感じている」とコメントしつつも、選考委員一同からの祝辞を受け「あたたかい言葉を励みに、これからも良い作品を書いていきたい」と感謝の意を表した。
『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』
第65回 児童文学新人賞(2024度)には522作品の応募があり、一次・二次選考を経て、候補が5作品に絞られたのち、同年8月28日に最終選考会が行われた。
最終選考会は、安東みきえ、如月かずさ、村上しいこを選考委員に迎え、講談社・児童図書出版部編集長を加えた4名で行われ、新人賞を決定した。佳作は該当作なし。
◆新人賞
正賞 賞状・記念品 / 副賞 50万円・単行本として刊行
『古手屋てまり 長崎出島と紅い石』
荒川衣歩(あらかわ・いほ)
【あらすじ】
時は江戸末期。古手屋(古着屋)の娘・てまりは、裁縫が得意な十三歳。彼女は、日本唯一の対外貿易港だった長崎で、遠い世界に憧れを募らせ暮らしていた。そんなある日、店に古いはんてんが持ち込まれ、翌日には売れてしまうということがあった。
売り手も買い手も一見客。しかも派手で雑な継布があててあるという珍品だ。奇妙に思ったてまりだったが……。
講談社児童文学新人賞とは
講談社児童文学新人賞は、子どもたちのための、オリジナリティあふれる作品を発掘する新人賞。1959年に講談社創立50周年記念の文学賞として創設、現在では児童文学作家の登竜門として知られている。
これまでの受賞作は、松谷みよ子 『龍の子太郎』(第1回)、福永令三 『クレヨン王国の十二カ月』(第5回)をはじめ、柏葉幸子『気ちがい通りのリナ』(『霧のむこうのふしぎな町』に改題して刊行:第15回)、斉藤洋 『ルドルフとイッパイアッテナ』(第27回)、森絵都『リズム』(第31回)や椰月美智子 『十二歳』(第42回)など、児童文学から一般文芸まで幅広く活躍する作家・作品を輩出している。
撮影/村田克己