ワンオペ育児のお父さんネコが大奮闘の『おんぶねこ』 絵本と縁遠いパパにも刺さってプチブレイク

自分とネコを重ねあわせてしまい……泣ける「令和の育児絵本」のココを読む!

幼児図書編集部

背中の子ネコはやりたい放題!

この『おんぶねこ』は、2022年(第43回)の講談社絵本新人賞で佳作に入選した応募作を絵本にしたものです。

講談社絵本新人賞の場合、通常、新人賞の本賞を獲らず、佳作に入選しただけで応募作が絵本化されることはありません。しかし、新人賞にかかわった一人の編集者が、殿本さんの描く世界の魅力に気づいて連絡を取り、描き直しにつぐ描き直しの末、2年半以上の月日を超えて出版にたどり着いたという経緯があります。

まず、『おんぶねこ』が、いったいどんなおはなしかを説明します……と言いましても、冒頭に説明したとおりで、四六時中おんぶしてもらわないと泣いてしまう赤ちゃんネコを一生懸命育てるお父さんネコの奮闘──これ以上の説明が思いつきません!

では、どんな奮闘ぶりかといいますと、

背中にいるだけでは退屈だろうからと、子どもにクレヨンと紙をわたしたら、お父さんの顔に落書きしちゃったり……、

お父さんの顔にお絵かきして、子ネコ、めちゃくちゃうれしそう!
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銭湯に行っても子どもが背中からおりないものだから、お父さんは自分の背中をゴシゴシできなかったり……、

赤い豆しぼりの手ぬぐいがシブい!

お食事のときには、お父さんの頭がお皿の代わりになってたくさんの食べ物がのっかっていたり……、

えーっと、おにんぎょうはマグロのおさしみをたべません……。

……とまあ、とにかく赤ちゃんネコのやりたい放題がつづくのです。

“育児あるある”がクスッと笑える

このような絵本ですが、ふだん絵本に密に接している絵本・児童書担当の書店員さんたちに感想をうかがってみました。

◯先日、20歳になった娘もひっついてばかりいた時期があったなあと懐かしくお父さんネコに自分を重ねて読んでしまいました。洗いたいところを洗えないとか、“育児あるある”がクスっと笑えました。
──書泉グランデ(東京都千代田区) 布川路子さん

紀伊國屋書店梅田店(大阪市)の河本絵美さんは、「トイレもおんぶ、お風呂もおんぶ………はちゃめちゃになりながら(マグロを頭に乗せて食事とは 笑)、それでも頑張っておんぶを続けるお父さんネコ」と、その育児っぷりを讃えつつ、さらに、このような感想を寄せてくれました。

「子ネコが成長した後、背中が寂しいと名残惜しそうにする姿に、じんわり愛情を感じます。ちょっぴりクセのある絵と味わい深い関西弁で、気づけば心がつかまれている、そんな絵本です」

育児奮闘記であり、親子の成長物語であり

そうなんです。

紀伊國屋書店の河本さんがおっしゃるとおり、この絵本のなかで、子ネコは成長します。その成長は、「おんぶからの卒業」というかたちで表現されています。

“その日”は、前触れもなくやってくる……。

「おとうにゃん、もう おんぶ おろして」

子どもからのはちゃめちゃなリクエストに、ひたむきにこたえつづける育児……からのこのセリフ。

ここでグッときてしまう方が続出するのではないかと思います。「父親のワンオペ育児奮闘記」でありつつ「子どもの成長物語」になっていることは、この絵本の大きな“売り”になっています。

◯大変だったおんぶ! 子ネコの「おとうにゃん もう おんぶ おろして」の言葉は、お父さんネコにとって、衝撃だろうなぁ。お父さんネコの目に映ったこねこの絵がとてもいいです。
──旭屋書店池袋店(東京都豊島区) 棟方寿一さん

子育てのストレスを感じずに読める

さて、ここまで普段から絵本と接点の多い、いわば「絵本のプロ」の方々の意見をご紹介してきました。

ここからは、ふだんまったくといっていいほど、絵本とかかわりのない仕事をしているお父さんが、この絵本をどのように読んだのかを紹介してまいります。絵本の編集部が、「こんな絵本が刊行されたので、読んでください」とお願いし、読後の感想を話していただきました。

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