子どもの「片付けない・勉強しない・朝起きない」に響く親の声がけとは? 人気ポッドキャスト『Teacher Teacher』の2人が教える子育て術

子育てのラジオTeacher Teacher#2~実践的なアプローチ術~

秋山 仁志・福田 遼(Teacher Teacher)

福岡を拠点に世界の教育現場を回る元小学校教諭はるかさん(左)と、東京で音声番組プロデューサーとして働くひとしさん(右)。  撮影:日下部真紀
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ポッドキャスト番組『子育てのラジオ「Teacher Teacher」』(以下『Teacher Teacher』)を企画・運営するのは、元小学校の先生・はるかさんと、音声番組プロデューサーのひとしさんの2人。

ひとしさんは東京、はるかさんは福岡を拠点に世界中を回りながら、インスタグラムのDM(ダイレクトメール)に寄せられる親からの子育ての悩みに答えてきました。

届いた悩みに向き合って、大枠の台本を書くのははるかさんの役割。正解を導き出すのが難しい子育ての悩みに対して、いろいろな文献を読みあさり、自身の教員時代の経験を振り返って、はるかさんなりのアドバイスを見つけます。

ひとしさんは聞き手に徹しながらも、はるかさんの伝えたいことをよりわかりやすく嚙みくだいて、リスナーたちに真っ直ぐ届ける役目。はるかさんのアドバイスに対して、ときには鋭い視点から質問を重ねることも。

「始めたばかりのころは、ひとしがあまりに根掘り葉掘り聞いてくるので、『いやぁ、わからんねぇ』と言って終わる回もあったよね(笑)。

僕は知識と経験からひとつのアドバイスを提示するけれど、『それって実際にうまくいくん?』『でも、こういう場合はどうするん?』という、ひとしからの鋭い切り返しを想定しながら台本を書いています」(はるかさん)

「理論はわかっても、実践は難しい。はるかの知識や経験は信頼しているので、深掘りして質問していって、最終的に現実的なメッセージに行き着くんです」と、ひとしさん。

はるかさんの考え方や思いを咀嚼(そしゃく)し、一緒に“納得いくまで考える”。子育ての「理想」と「現実」をゆるやかに擦り合わせていく工程が、2人のトークの魅力です。

世界の教育現場を回り、ときには現地で教鞭をとりながらもポッドキャストの収録を行ってきたはるかさん。「30分かけてやっと回線繫がったね(笑)」「海外での収録はホテル次第やね。Wi‐Fi環境大事やね~」なんてやりとりも。写真は旅先のデンマークにて。  写真提供:Teacher Teacher
「海外を回っている間に、世界中どこからでも発信を続けられたのが本当に良かった。教師という仕事を続けながらだったら、目の前の子どもに向き合いながら番組を続けるのは難しかったと思います」(はるかさん)。写真中央がはるかさん。旅先のブルガリアにて。  写真提供:Teacher Teacher

いろいろなメガネをかけ変え子どもを見る

はるかさんのアドバイスには、「いつもとちょっと違う角度から見てみると、子どもとの関係が変わるかもしれない」というポイントが隠れています。

『Teacher Teacher』のお悩み相談の中でも代表的なエピソード「中学2年生の息子の反抗期がひどい」に対しては、「I(アイ)メッセージを使ってみて」とアドバイス。それってどういうこと?

「反抗期は、親に言われてやるのが嫌な時期。だから、『片付けしなさい』『勉強しなさい』という主語が『あなた』のYouメッセージは、指示命令感が強く通りづらいものなんです。

それなら、お母さんやお父さんは『わたし』を主語にしたIメッセージに切り替えて使ってみてほしい。例えば『机を片付けてくれると、(お母さんは)助かるなぁ』『勉強してくれると(お父さんは)うれしいよ』とか。自分を主語に変換して語りかけると、子どもの反応が変わるんですよ」(はるかさん)

Iメッセージは、子どもの自立したいという気持ちを邪魔せず、思いやりの気持ちを育てることができる“魔法の言葉”だと言います。

「実際に、はるかの受け持ったクラスの子どもたちも変わったんだよね。『静かにしなさい』じゃなくて『静かにしてくれたら(僕が)助かる』ってこちらの気持ちを伝えてみると、子どもたちは反応してくれたって」(ひとしさん)

「そう。でも、子どもを動かそうと思って言うとうまくいかない。あくまでお願いや提案がベースで、行動してくれないかもという前提は持っていてほしい。もしもこちらの気持ちが伝わって動いてくれたときには、『ありがとう』と感謝をすることも大事やね」(はるかさん)

はるかさんの憧れの人は、教師で作家の渡辺道治さん。「具体的なノウハウも勉強になりますし、うまくいかないときには常に自分の指導や考えを見直す、という志を尊敬しています」  撮影:日下部真紀

「はるかのアドバイスは、誰にでもすぐに実践できるという点がいいですよね。番組で話していることは、対子どもへのアプローチなのですが、会社でも使えるアクションで、『社会人でもタメになる』とよく言われます」(ひとしさん)

ほかにも、ダメ出しの逆でプリントに花丸と丸しか書かない『ヨイ出し』や、ポイントなどの報酬で遅刻癖を直す行動療法『トークンシステム』なども、反響が大きかったエピソード。悩みごとにひとつのエピソードになっているので、気になるお悩みをピックアップして聞いてみて。

「それぞれの悩みに対する解決策をそのまま活かすというよりは、子どもへの接し方を変えるメガネをいくつか持っておいてもらう、というイメージ。いろんなメガネを手に入れられたら、『こんなときにはこんな見方ができるんじゃないかな』、『こっちの見え方はどうだろう』ということができる。物事がクリアに見えることで、子育てがラクになってもらえたらいいなと思うんです」(ひとしさん)

見え方が変わることで、子どもへの関わり方を変えられるきっかけが見つかるはずです。

社会課題に関心が高いひとしさん。株式会社ボーダレス・ジャパン代表の田口一成さんの『9割の社会問題はビジネスで解決できる』(PHP研究所)が愛読書。  撮影:日下部真紀
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