「一人っ子はワガママ」は本当? 「きょうだいがいない強み」とは?

一人っ子のしつけ「ウワサの真相」#1

明治大学文学部教授:諸富 祥彦

「私はできる!」が一人っ子のいいところ

じつは一人っ子には優れた点が多いと話す諸富先生。それはどのような点なのでしょうか?

「一人っ子は自尊心があって、達成意欲が高い子が多いんですよ。しかも、コツコツと成し遂げる子が多い。

それというのも、きょうだいがいると勝ち/負けの競争意識が芽生えますが、一人っ子の場合はこれがないので自分に集中できるんです。

競争相手がいない分、自分が何ができて何ができないか、自らの物差しで物事を見て取り組んでいけるのです」(諸富先生)

競争相手のきょうだいがいない分、自分のことに集中できる。  写真:アフロ

「一人っ子だと競争意識が低いのではと心配する方がいますが、そんなことはありません。

一人っ子は『私はできる(自尊心)』という意識と『達成しようとする』意欲が根底にある子どもが多く、自分自身で切磋琢磨していく傾向にあります。これも私の長年の経験からの見解ですが、一人っ子は学業も職場での地位も上を目指す子が多いと感じます」(諸富先生)

「一人っ子」とは、子ども本人が自らを育んでいける環境だといえます。

一人っ子の子育ての絶対NG

では、親としてはどのように一人っ子の子どもをサポートしていけばいいのしょうか。

「親が罪悪感を持って接しないことが大切です。

カウンセリングをしていると、『一人っ子でごめんね』『きょうだいがいなくてごめんね』との気持ちを持っている親御さんがいますが、罪の意識を持つ必要はまったくありません。

どうか、この子は親の愛情を独り占めできるハッピーな子だと思って接してあげてください」(諸富先生)

子どもは一人っ子の環境しか知らないので、そもそも劣等感を持っていません。親が「一人っ子でも大丈夫!」とポジティブに捉えることが、子どもの成長を後押しすると諸富先生は続けます。

「子育ての大切なことのひとつに、『自己肯定感』を養うことがあります。これは自分は大丈夫と思う気持ちやありのままの自分を受け入れて愛することを指し、人生でつらいことがあっても乗り越えていける力を形成します。

そして、子どもの自己肯定感を育むひとつの要素が、親の前向きな姿勢です。ですから、『一人っ子でごめんね』よりも、『世界であなたがいちばん大好き』など、できるだけポジティブな言葉を子どもに伝えてほしいのです」(諸富先生)

前向きな言葉を親がどんどん口にすることで、子どもは内面を地固めしていきます。成長する過程で、子どもにはうれしいことも苦しいことも起こりますが、ハッピーな愛情表現で子どもを支えていきたいものです。

第2回は「一人っ子のほめ方」について紹介します。


取材・文/梶原知恵

13 件
もろとみ よしひこ

諸富 祥彦

明治大学文学部教授

明治大学文学部教授。教育学博士。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現職。40年近いカウンセラーキャリアを持つ。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーでもある。 【主な著書と監修書】 『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版) 『イラストでわかる自己肯定感をのばす育て方』(池田書店) 『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など

明治大学文学部教授。教育学博士。1986年筑波大学人間学類、1992年同大学院博士課程修了。英国イーストアングリア大学、米国トランスパーソナル心理学研究所客員研究員、千葉大学教育学部講師、助教授を経て、現職。40年近いカウンセラーキャリアを持つ。臨床心理士、公認心理師、上級教育カウンセラーでもある。 【主な著書と監修書】 『ひとりっ子の育て方』(WAVE出版) 『イラストでわかる自己肯定感をのばす育て方』(池田書店) 『思春期の子の育て方』(WAVE出版)など

かじわら ちえ

梶原 知恵

KAJIWARA CHIE
企画・編集・ライター

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。

大学で児童文学を学ぶ。出版・広告・WEB制作の総合編集プロダクション、金融経済メディア、外資系IT企業のパートナー会社勤務を経て現在に。そのなかで書籍、雑誌、企業誌、フリーペーパー、Webコンテンツといった、さまざまな媒体を経験する。 現在は育児・教育からエンタメ、医療、料理、冠婚葬祭、金融、ITシステム情報まで、各媒体の企画・編集・執筆をワンストップで手がけている。趣味は観劇。特技は長唄。着付け師でもある。