小学生のスマホ 盲信、依存、反社情報…危険から我が子を守る方法

東京女子大・橋元良明教授「スマホ育児」の是非 #3~小学生のリスク編~

社会心理学者・東京女子大学教授:橋元 良明

中高生になると繋がりなどが増えて世界が広がり、スマホに起因する危険も増す。
写真:アフロ

便利なサービスを使った利用制限で子どもを守る

親が子どものスマホを制限するために活用すべきサービスや便利な機能を具体的に伺いました。

「利用をオススメしたいのは、各携帯キャリアが提供しているフィルタリングサービスです。『あんしんフィルター for docomo』『あんしんフィルター for au』などがあり、有害・不適切なサイトの閲覧制限や、利用時間帯の設定や利用状況の確認ができます。

小学生からできれば高校生ぐらいまでは親が設定しておきましょう。アプリのダウンロード制限も同様です。無制限に使えるような設定はすべきではありません。

デバイス側での制限に関しては、子どもが勝手に解除する可能性もあります。しかし、親が目を光らせているという態度を示すのは重要です」(橋元教授)

子どもに見せてはいけないというと、アダルトコンテンツをまずイメージしがちですが、それよりも大切なものがあると橋元教授は言います。

「フィルタリングで最優先すべきは、麻薬や爆弾の作り方、残酷な暴力、犯罪の手口などの情報から子どもたちを守ること。こうした事件や犯罪につながる情報が簡単に手に入ってしまうのも、ネットの怖さです。

そして親御さんに意識していただきたいのは、フィルタリングしているからといって安心しないこと。反社会的、社会常識から外れる物事を、親が子どもにちゃんと教える心構えが大切なのです。人が社会で生きるうえで当たり前のことですよね」(橋元教授)

ただし、フィルタリングなどで監視の態度を示すことが大切である一方で、過干渉なのもよくないと橋元教授は言います。

「親が干渉しすぎると、子どもはスマホを隠れて使い、スマホに関係しなくても親に反抗しがちになります。ある程度は信用して、子どもの常識に任せるのも重要。その中で、依存と直結しがちなゲームや動画に関しては、のめり込んでいないか注視しましょう」(橋元教授)

橋元教授は「依存」が「暇」であることから引き起こされると話します。

「『暇つぶし』で動画やゲームに過度に没頭するのが『依存』です。そういう状態になるのは避けなければいけません。やることがない、友だちがいない、家にいても叱られるかほったらかされる、居場所がない。そういう子どもは、スマホを触りがちになり依存してしまう。

そしてゲームやスマホに依存する子どもは、学校でいじめられているなどの問題を抱えている可能性がある。そのSOS信号が、依存として現れているのかもしれません。

親はそうしたSOSを見逃さず、背後にある問題を探っていく姿勢が大切だと思います。人間関係を含め、日々の生活を充実させることは、スマホ依存の抑止に繋がります」(橋元教授)

「親はキャリアのフィルタリングサービスなどを使って子どもを危険から守らなければいけません」(橋元教授)
写真:シーアール

大切なのはやっぱり親子コミュニケーション

「それから小学生からもう少し成長して中学生ぐらいになると、ネット上での人間関係にも親は注視しないといけません。顔も知らない人とネット上で知り合い、親が知らぬ間に会っている場合は要注意ですね。特に女の子は、取り返しのつかない事件に巻き込まれる可能性が高いです。

家を出る際に、誰とどこへ行くかを親に伝えるのは当たり前のこと。何も告げずに出ていったときなどは要注意です。

しかし悲しいことに、子どもがそうした事件に巻き込まれやすい家庭というのは、ふだんからコミュニケーションが取れておらず、親が子どもの変化に気づけない可能性が高い。そこが難しいところですね」(橋元教授)

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スマホは、現代を生きるうえで切り離せないツールとなっています。そんな中で橋元教授が大切だと語るのは、①リスクをしっかり把握することと、②親が子どもにしっかり目を向けて判断していくことでした。

子どもとコミュニケーションをちゃんととることは、スマホ登場のずっと前から子育ての基本とされてきました。スマホは子どもを夢中にさせる楽しいものです。でもだからこそ、スマホの世界で何が行われているか、親は子どもと話す機会を作って、しっかりと把握しておく必要があると言えますね。

取材・文/井上良太(シーアール)

※橋元良明教授のインタビューは全3回です。
#1 スマホ育児はコミュ力に悪影響? 最新研究「共感性の危険」とは?
#2 スマホ育児で本が読めない子に?  乳幼児期に大切なスマホのルール

18 件
はしもと よしあき

橋元 良明

社会心理学者・東京女子大学教授

社会心理学者。東京女子大学教授。専門は「情報社会心理学」と「コミュニケーション論」。携帯電話やインターネットの普及に伴いコミュニケーションの様式がどんどん変化する中で、それが社会生活に及ぼす影響といった移り変わりをデータで裏付けながら分析・研究している。 『日本人の情報行動2020』(東京大学出版会)、『メディアと日本人―変わりゆく日常』(岩波書店)など著書多数。

社会心理学者。東京女子大学教授。専門は「情報社会心理学」と「コミュニケーション論」。携帯電話やインターネットの普及に伴いコミュニケーションの様式がどんどん変化する中で、それが社会生活に及ぼす影響といった移り変わりをデータで裏付けながら分析・研究している。 『日本人の情報行動2020』(東京大学出版会)、『メディアと日本人―変わりゆく日常』(岩波書店)など著書多数。

いのうえ りょうた

井上 良太

ライター

ライター/編集者。編集プロダクション・シーアール所属。硬派なインタビュー記事から飲食店などを紹介する街ブラ記事まで、さまざまな媒体でディレクション、ライティングを担当。趣味はゲーム、音楽鑑賞、読書などエンタメ全般。 株式会社シーアール https://crnet.co.jp/

ライター/編集者。編集プロダクション・シーアール所属。硬派なインタビュー記事から飲食店などを紹介する街ブラ記事まで、さまざまな媒体でディレクション、ライティングを担当。趣味はゲーム、音楽鑑賞、読書などエンタメ全般。 株式会社シーアール https://crnet.co.jp/