小学生のスマホ 盲信、依存、反社情報…危険から我が子を守る方法

東京女子大・橋元良明教授「スマホ育児」の是非 #3~小学生のリスク編~

社会心理学者・東京女子大学教授:橋元 良明

今や、小学生から自分のスマホを持つのが当たり前になりつつある。
写真:アフロ
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いまや小学生の約3割が自分のスマホを持っている時代。
自由自在にスマホを使いこなす子どものデジタルネイティブぶりには感心しますよね。しかし、それだけでは決してデジタルスキルを身につけていることにはなりません。また、危険から身を守るためにしっかり親が監督すべきことはしなければなりません。


社会心理学者の東京女子大学・橋元良明教授に、小学生以降のスマホ利用で気をつけるべき点をうかがいました。1回目スマホ育児の危険性、2回目乳幼児のリスク編に続く3回目です。(全3回の3回目。#1#2を読む)

デジタルネイティブでも勝手に成長はしない

子どもがスマホを自在に操る様子を目にすると、その習熟度の高さに驚かされます。小さい頃からデジタル機器に触れてきたデジタルネイティブ世代が、やがてグローバル社会で活躍するのではと期待し、積極的にスマホを触らせる親御さんも多いのではないでしょうか? しかし、橋元教授の見解は少し異なります。

「若い子は適応力が高いので、スマホを使いこなす程度なら、小さいころから使い始めようが、中学生ぐらいから使い始めようが習得できるデジタルスキルはたいして変わらないんです。例えば『3歳からスマホを使っているからプログラミング能力が高まる』といったこともありません。

高度なICTリテラシーは、タブレットなりパソコンを使わなければ高まらない。それらを駆使して、プログラミングなどの教育をしっかり受けることで、ようやく習得できます。

モノだけ与えておけば、子どもたちが勝手に取り組み成長していくようなことはまれです。実際、私が教える大学にも、スマホはすごく上手に使えるのにPCは苦手という学生は多いんですよ」(橋元教授)

子どもにスマホを与える際に注意すべきことを教えてくれた東京女子大・橋元良明教授。  
写真:シーアール

偏った情報を盲信する危険性

幼児にスマホを触らせるなら、ルールが必要と前回伺いました(#2)。小学生以降も、親がしっかりコントロールして、子どもを将来的なリスクから守らなければいけないと橋元教授は言います。

スマホの世界で育った子どもが将来的に陥る危険性として考えられるのは、ネットの世界がすべてだと思ってしまうことです。

「人が成長する過程で、自身の直接体験や周囲の人の話を聞いて参考にすることはとても重要です。しかし、幼い頃からスマホに夢中になっている子どもは、ネットで書かれていることを盲信してしまう危険性があります」(橋元教授)

「親にネットの情報を鵜呑みにしてしまう傾向があると、さらに子どもが影響を受けて、将来的に一般的な社会性を獲得できない可能性もあります」(橋元教授)

「ネットの狭い空間で同じ方向性の意見のやりとりに終始し、その考えが強化されてしまう現象は、閉じた小部屋(チェンバー)で音が反響する(エコー)物理現象に例えて『エコーチェンバー』と呼ばれています。

SNSなどで自分と似た興味や関心を持つユーザーをたくさんフォローしていると、自分と似た意見ばかり目にすることがありませんか? 

似通った思考を持つ人ばかりの世界で、そういう人たちの意見によって自分の考えを確信に近づけるのは、危険なことです。他人の意見がさも自分の意見のように感じてしまい、正常な判断をする余地がなくなってしまいます」(橋元教授)

小学生以降になると生意気なことも言い始めますが、まだまだ純粋な面を持ち合わせている子どもだけに、他の意見を耳に入れない「エコーチェンバー」になるのは避けたいものです。そのためにはリアルな体験や人間関係はやはり大切なものです。

東京都が発表した調査結果(※1)によると、都内在住者を対象とした令和元年度の小学生のスマホ所持率は、低学年で19.0%、高学年で34.4%、中学生では75.4%、高校生では92.4%となっています。
※1=都民安全推進本部「家庭における青少年のスマートフォン等の利用等に関する調査」

小学生からのスマホ所持が増加している今(2022年)、スマホを「持たせないためにどうするか?」ではなく、適切に使うためのルールなど、親は環境整備に意識を向けることが大切になってきます。

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