誰もが胸を張って生きていける社会へ 自閉症の息子のニーズを追い求めた先に見えてきたもの
GAKUが自閉症アーティストになるまで #3 アイムの放課後等デイサービス「エジソン高津」
2023.11.24
「アメリカで息子が療育を受けた経験から、一番大事なのは子どもが気に入る空間と人を準備するということに気がついた」と話すのは、放課後等デイサービスを運営する、株式会社アイムの佐藤典雅さん(以下、典雅さん)。息子というのは、自閉症アーティストのGAKUさん(以下、がっちゃん)です。
知的障害を伴う自閉症の療育を受けるために2004年に一家で渡米した佐藤家。そして、2014年に帰国後、典雅さんは、息子のために株式会社アイムを立ち上げ、神奈川県川崎市を中心に放課後等デイサービスやフリースクール、グループホームを作りました。
目指すのは、みんなが「I am(アイム)!」と、主役になれる場所。3回目では、アイムの運営する福祉施設「エジソン高津」を覗いてきました。
新しい視点で福祉にセンスを!
アイムの運営する福祉施設には、パソコンやタブレット、レーシングシミュレーションにVR機器、ギター、画材……などなど、さまざまなアイテムが揃えられています。それらはどれも子ども騙しのおもちゃではなく、本格的な機械や道具。児童福祉施設というよりは、ゲームセンターやテーマパークさながらの雰囲気です。
アイムでは「ITキッズを育てる」と公言。子どもたちは各々自由にパソコンやタブレットを使いこなしています。
典雅さん:無秩序を苦手とする発達障害の子どもたちは、秩序があるIT機器と親和性が高いんです。家庭や学校での「やり始めたらキリがないからなるべく触らせないようにする」なんて方針は間違いで、むしろとことん使い倒させるべきだと思っています。
エジソン高津では、最新のVR機器も導入。自閉症はひとつのことにフォーカスすることが難しいと言われているので、他の情報を遮断して集中できるVRの仮想空間はまさにうってつけ。VRを通して、さまざまな体験をすることができます。
典雅さん:一般的な施設で行われている、カリキュラムに沿った療育の時間は、アイムにはありません。それは、がっちゃんのアメリカでの療育生活から学んだこと。子どもにとって、苦手を克服させるためのガチガチに固められたカリキュラムは苦痛でしかない。お気に入りのセラピストのスタッフと、好きなことをして遊んで、「ああ、今日も楽しかった」。それだけでいいんですよ。
子どもたちが育つところは、センスの良い空間であるべきだと思っています。明るく楽しい環境で、好きなことをめいっぱいして感性を強くしていくことが大事なんです。