小学生の息子が「いじめの加害者」に……親子で向き合った記録を漫画に〔大原由軌子さんインタビュー〕

いじめをしていた息子「あんなに仲良くしてたのに」 親としていじめどうする?#1

相手がいじめと感じたらいじめ。いじめた方が100%悪い! けど……

大原さんは、事実確認した翌日にSくんの自宅へ行き謝罪。タケもSくんに直接、謝りましたが、事態はエスカレートしていきます。

怒りの収まらないSくんの母親は報告書を学校に提出。後日、話し合いの場が設けられました。

大原さん夫妻とSくんの母親が学校に集まり、家族の間には校長先生と教頭先生、タケの担任の先生と、前年の担任で、鉄拳制裁付きの指導をしていたK先生が入りました。

「タケのやったことはSくんから見れば100%いじめです。心から謝罪し、一緒の習い事も辞めることになりました。

学校側は、Sくんのお母さんからクラス替えを要求されていて、さらに『今後はうちの子と一切、関わりを持たないようしてほしい』といわれました」

提供:大原由軌子

ただただ、謝ることしかできない大原さん。ですがこのとき、学校側の意見がだいぶ偏っているようにも感じたと話します。

「学校側はタケの普段の様子をSくんから聞いて、精神に問題があるという意識を持っていました。

今、冷静に考えれば一つひとつは小さな出来事であり、成長の過程で見受けられそうな子どもの行動でしたが、当時はタケのことをみんながとてもおかしいと思っている雰囲気でした」(大原さん)

大原さんは、タケの行動にそこまで問題があるのか疑問を持ち、「納得がいかない」と声を上げたくなりました。

しかし、横にいたご主人が冷静に判断します。カウンセリングを受けて、専門家から「タケは正常だというお墨付き」をもらう必要があると大原さんを諭しました。

大人の悪いところを子どもたちは真似をする

大原さんは当時を振り返り、「人間は立場上、より声が大きい方の意見に耳を傾ける傾向があると思います。あのときは、Sくんのお母さんや4年生の担任K先生の意見も強かったと感じました」と語ります。

「タケがSくんに正座をさせたことは、K先生が日頃クラスで生徒たちを𠮟る際にやっていたことだとあとで判明しました。子どもとしては、ただ先生の真似をしただけ、という認識だったかもしれません。

今は学校の先生に対して、親の要求も年々強くなっていると思います。先生は本来、子どもたちに勉強を教えるのが役目です。先生方が授業に専念できるように、今後はスクールロイヤーが各学校に一人常駐するくらいでなければ、学校教育は難しいのではないかと思います」(大原さん)

授業の準備をするだけでも手一杯だといわれている学校現場。日頃から膨大な業務に追われ、自宅に持ち帰って教材研究をする教諭も少なくないといいます。

それに加え、子どもたちの友だち関係についてまで指導を行うのは容易ではありません。中立な立場で教育現場に立つのが教諭だけでは、もう限界がきていると大原さんは感じています。


次回は、親子でカウンセリングを受け、第三者にいじめ問題を客観的に見てもらい、相談することを選んだ大原家のその後に迫ります。

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大原 由軌子(おおはら ゆきこ)
1970年生まれ。長崎県佐世保市出身。短大卒業後、グラフィックデザイナーとして14年間、都内に勤務。2006年、パニック障害+神経症持ちの夫との日々を描いた『大原さんちのダンナさん このごろ少し神経症』(小社刊)でデビュー。著書に『息子がいじめの加害者に? 大原さんちの大ピンチ』のほかに、『お父さんは神経症』『京都ゲイタン物語』(小社刊)、『大原さんちの2才児をあまくみてました』(主婦の友社)、『大原さんちの食う・寝る・ココロ』(集英社)2023年9月新刊『大原さんちの不登校』(文藝春秋)などがある。2012年より「まぐまぐ!」からメールマガジン『大原さんちの九州ダイナミック』を週刊で配信中。2013年からはテレビ長崎の情報番組『ヨジマル!』に火曜日コメンテーターとして出演。また、大原さんちのホームページ「大原さんちの九州自由道(フリーウェイ)」もスタートした。


取材・文/飯塚まりな

漫画家・大原 由軌子さんの「いじめをしていた息子『あんなに仲良くしてたのに』親としていじめどうする?」掲載は全3回。
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