エジプト人のタレント・フィフィさんは日本や海外のさまざまな問題についてSNSなどで発信しています。子どもの権利について言及することも多く、「日本は子どもの権利が守られていない」とバッサリ。
今、日本では、「こども家庭庁」を創設するなどして、子どもの権利を守ろうとする動きも出てはいます。しかし、フィフィさん曰く「制度だけ整えても変わらない」。
さて、その言葉の真意はどこにあるのでしょう!?
フィフィPROFILE
1976年、エジプト・カイロ生まれ。両親に連れられて幼いころに訪日し、小・中・高と日本の公立学校で学ぶ。近年は、フォロワー数YouTube40万人、Twitter62万人の論客として、鋭い切り口で国内外のニュース(社会問題、政治、エンタメ)を中心に発言。私生活では、大学1年生の息子(2005年生まれ)を持つ母。
社会全体で作り上げてしまった窮屈さ
フィフィさんは、折に触れて「日本では子どもの権利が守られていない」と主張してきました。そんな日本社会で実際に子育てを経験し、“やりにくさ”のようなものを感じたことはあったのでしょうか。
「この国は子どもに寛容ではない、とずっと感じています。例えば電車の中で我が子が大声で喋ったりすると、お母さんたちは静かにさせようとして、ずっと『シーシーシーシー』言い続けています。
そっちの声のほうがうるさいと思うのだけれど(笑)、そこまでお母さんたちが神経質にならなくてはいけない日本社会ってどうなの?
みんながそうだとは言いませんが、公(おおやけ)の場で子どもがちょっとでも騒いでいると、『しつけができていないのかしら?』というような目で見たりもするじゃないですか。
だから、小さい子どもがいる親は常にピリピリしているし、子どもは伸び伸びできないし。こんな社会にしちゃって、残念ですよね……」
海外と比較すると「日本は敏感すぎるのではないか」とフィフィさんは指摘。
「例えばエジプトでは、子どもを連れてブティックとかに入ると、その子が泣いていたとしても、お店のおねえさんが抱っこしてあやしてくれたりします。
エジプトに限ったことではないでしょうが、海外では、ニコニコしながら子どもに話しかけてくれたりしますよね。日本ではあまり見ない光景です」
日本では、「知らない子どもにむやみに話しかけてはいけない」と思っている大人も多いような……。
「そうそう。大人が街中で知らない子どもに話しかけたら犯罪、知らない大人に話しかけられても無視しなさい、みたいな風潮、ありますよね。
結局、社会全体で、そういう窮屈(きゅうくつ)な環境を作ってしまった気がします。子どもは公の場で騒いじゃダメ、大人は知らない子どもに話し掛けてはダメ……。こんな世知辛い社会で子育てをするなんて、本当に大変だと思う」
ひとりひとりの意識と行動が社会を変える
日本政府は今、「こども家庭庁」を創設し、子育て家庭への支援を手厚くするなどの政策を推し進めています。これで、少しは子育てがしやすい環境が整うのではないか。そんな期待の声も聞かれますが。
「政府は、そうやって出生率低下に歯止めをかけようとしているんでしょうが、そんなことで子どもの数は増えないですよ。
いくら支援金が出ても、こんな窮屈な環境で子どもを育てる気にはなれないと思うんです。制度の問題ではなくて、社会全体の空気を変えていく必要があるんじゃないですかね」
では、どうすればいいのでしょうか。社会を変えていくために、私たちひとりひとりができることは?
「例えば、公の場で子どもが大声で泣いちゃったりすると、お母さんは、もうどうしていいかわからなくなってしまう。そんなとき、近くにいる人が『いいのよ、気にしないで』とひと声かけてあげるだけで、お母さんは救われる。私も声がけしますよ。
新幹線の後ろの席で子どもが大声で本を読んでいて、お母さんが『静かに、静かに、静かにーー』と一生懸命注意していたことがあります。私は振り返って言いました。
『気にしないでいいですよ。子どもはそんなものですから、どうぞ、子どもらしくやらせてあげてください』と」
このような声がけが、社会全体の空気を変えていくのではないか、とフィフィさんは考えているのです。
「電車の中では、子どもが泣いてしまって、ビクビクしているお母さんを見かけることが、よくあります。そんなとき私は、『お母さん、大丈夫よ。頑張ってね』などと声をかけるんです。
それだけで、お母さんは『みんなが子どもの泣き声に迷惑をしているわけじゃないんだ』と、気がラクになるだろうし、周囲の人にしても、私が声をかけているのを見て悪い気はしないはず。
『今度は自分もそうしてみよう』と思うかもしれないし、子どもの泣き声に『チッ』と舌打ちしていた人なら、そんな自分を反省するかもしれない。
こうやって、だんだんと世の中の空気感は変わってくるんです。ひとりひとりが意識して小さな行動を起こす。これ、とても大事なことではないでしょうか」